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「知ること」への近道 byコンスタンチン・コマロフ

「知ること」への近道
コンスタンチン・コマロフ

 私にとってシステマとは、一言で言えば、自分に不利な状況に対処する方法を習得すること、つまり生き残る可能性を高めることを意味する。人は、その人生でどんな悪い事が起きるかを完全に予測することはできない。だから、そうした可能性に対して個別に準備することは不可能だ。そのかわり、すべてに対して一度に準備する必要があり、だからこそシステマでは個別のテクニックや対処法よりも、生徒の肉体と精神に起きる変化の方を重要視している。

 陸軍での勤務経験も、私に悪い出来事を克服する方法を教えてくれた。しかし、システマとは違い、それは自分自身に打ち勝つことによって学ばなければならなかった。士官学校で過ごした4年間に、私はランニングで恐らく地球を1周したのではないかと思う。士官学校の学生は毎日、いやというほど走らされた。朝も昼も夜も。凍てつく寒さの中もうだるように暑い時も。いつも軍靴に軍服で走った。しばしば銃を持ち、完全装備で。時にはスキーも履いた。障害物のあるコースや森、野原、舗装路も未舗装路も走った。私はランニングが心底嫌いだった。「自動車だけでなくマークIVF型装甲車や装甲兵員輸送車などあらゆる軍用装甲車が使える時代なのに、なぜ俺たちは、こんなに走ったり、行軍しなくてはならないんだ?」としばしば自問した。だが、当時の私には、その答えが分からなかった。

 これ以外にも、身体を鍛えることは、戦術や銃器の扱い、地形学、大量破壊兵器に対する防御、軍用車の運転など他の訓練の一部に組み込まれていた。例えば、銃を持ち、装備を背負い、時には防弾ベストを着て何キロも歩いたり走ったりすることや、車両に乗り込んだり、降りたりする時間を計ったり、弾薬を積み込んだり降ろしたり、銃器を据え付けたり外したりすることなど、たくさんの体育的な“お楽しみ”があった。私は最初の2年間、移動する時は必ず行進するか走っていた。夢の中でも「なぜこんなことやらなくちゃいけないんだ」と問い続けていたほどだ。

 しかし、士官学校を卒業し、最初の任務に就いた時、なぜあれほど苦しまなければならなかったのかが突然理解できた。司令官や教官は、私が堅忍不抜の精神と耐久力を身に付けるのを助けてくれたのだ。この2つの資質のあるなしで、悪い出来事に耐えることができるか、つまり生き残ることができるか否かが決まる。軍隊には「お前を殺さないものは、お前を強くしてくれる」という古くからのことわざがある。実際、自分自身に打ち勝つことで、信じられないほどの力を得ることができる。私は、私がこの内なる力を持っていることがわかった。そして私の部下も。さもなければ部下は、私の命令に従わなかっただろう

 軍隊は私に自分自身に打ち勝つことを教えてくれたが、システマは自分自身を理解することを教えてくれる。軍で私はさまざまな訓練を通じて自分を鍛え上げた。しかし、システマでは自分自身をもっと直接的に成長させることができる。もし良いシステマ・インストラクターの下で学ぶことができるのであれば、こちらの方がずっと効率的だ。もちろん訓練はある。だが、私はそれぞれの訓練がどのように、そしてなぜ私を変えるのかはっきりとわかっている。土台から自分を作り上げ、足りない部分を発見、修正し、必要な資質を強化することができるのだ。システマは、自己成長のための驚異的かつ精妙な手段であり、あらゆる動きや活動のためのしっかりとした土台を作るのに役に立つ。そして自分に打ち勝つことよりも、自分自身を知ることに重点が置かれている。私の言うことを信じて欲しい。システマの方が、ずっと速く、そしてもっと楽しく成長することができる。

 ちょっとした実験をしよう。あまり複雑ではないモダン・ダンスか民族舞踊のビデオを観て、その動きを1分間まねしてみよう。もしうまくできたら、システマをきちんと学べていることになる。つまり、システマの練習をすれば、どんな珍しい複雑な動きも簡単にまねることができる身体になれる。

 もし自分自身を克服し、その効用を手に入れてみたいと思うなら、腕や足を使わずに這う練習をしてみよう。この練習は、体力に応じて20分から90分間休みなしに行う。その後、システマのクラスで、パートナーとレスリングや単純なストライク、動きながらつかんだり、それから逃げたりする練習をする。自分自身を克服することができた人は、驚くほどすばらしい、しかも長期的に続く成果を得ているはずだ。なぜなら、私たちはほとんどの活動を手と足で行っており、胴体をうまく動かすことができないからだ。しかし、この練習方法は万人向けではない。今年(2012年)の夏のシステマ・キャンプでは、もっと簡単でおもしろく、楽しい訓練を紹介しよう。
 
著者紹介
コンスタンチン・コマロフ氏は、2012年8月に行われたシステマ・フルレンジ・キャンプで教えるためロシアからカナダを訪れたマスター・インストラクターの1人。ロシア特殊警察軍少佐であり、戦闘心理学で博士号を持つ。また、モスクワではプロのボディーガードとして要人警護も行う。

Tag:トレーニングTips日本語版 

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TKHDKTGW

Author:TKHDKTGW
北川貴英:システマ東京主宰。株式会社アトス代表取締役。08年モスクワにて創始者ミカエル・リャブコより公式システマインストラクターとして認可。16年コンディショニングに特化した「INSTRUCTOR OF APPLIED SYSTEMA」に認可。システマ関連書籍を多数執筆。教育機関、医療系シンポジウムなどでの講演するほか、テレビやラジオなど各種媒体を通じてシステマを幅広く紹介。今なお毎年欠かさず海外研修に赴きスキル向上に努める。ヤングマガジン連載「アンダーニンジャ(花沢健吾著)」、NHKドラマ「ディア・ペイシェント」監修。
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