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IiT土井さんによるトロントレポート

システマジャパンにて指導に当たっているIiT(インストラクター見習い)の土井英一さんが先月、約3週間に渡ってトロントのシステマ本部に練習しにいっていました。

その時に感じたことをレポートにしてもらいましたので、こちらに掲載します。トロントの雰囲気が少しでも伝わればと思います。

(以下本文)


はじめに
 ロシアンマーシャルアーツスクール校長、ブラデミア・ヴァシリエフ師。
シニアインストラクター、ならびにインストラクター諸兄に敬意と感謝の意を表する。今回の「旅」がとても楽しく、時に激しい苦痛を伴う大変有意義なものになった。しかしそれ以上に各国のIit、ジム練習生とのワークが自身の限界と可能性を教えてくれ、次へのステップへと導いてくれたことに感謝する。そして、この文章を書く機会を与えてくれた北川氏に感謝する。

 この文章はシステマを正しく訓練されている人にとって退屈極まりない内容である。これから記述されていることはあくまで個人の感想であり「誤り」「誤解」が含まれている可能性がある。 
 
海外でトレーニングするメリット
 日本人の平均的体格は欧米のそれに比べ、筋量が少なく骨格も細めである。普段日本で行っているワークも10~20キロ体重の差や身長に勝るパートナーと行う際、「4原則」に基づきより的確に落ち着いて動く必要が生じる。環境の違いもサイキに影響を与える。普段にない緊張や不安など呼吸の大切さを実感した。
 トレーニングにただ「慣れる」ことは真の意味での上達とは違う。自らの肉体的な苦痛やエゴ、不安、恐怖などの中から自分を知り解決策を考え、乗り越える新たなチャレンジは違う事を学んだ。

 またハイレベルなインストラクターや熟練の練習生はシンプルなワークを行っても驚くべき発見がある。それは特別な「何か」ではなく「4原則」や、彼らの行う、立つ、歩く、座るなど何気ない動作にヒントが潜んでいることが発見できる。
 海外でのトレーニングを行っても言語を理解できなければ不便な思いを強いられる。しかし、デメリットばかりでない。 まず観察に集中できる。細かな指摘は理解できないがおおよその内容は日本で行っていることと変わらない。話せない代わりに見る、考える、感じる、動くなどのことに集中できる。
 無駄話ができない。長くトレーニングをしているとワークに慣れて気の知れたパートナーが増えてつい気が緩んできてしまう。自分自身の気を引き締めるよい機会となった。
海外でのトレーニングをすることで視点が変わると様々に学べることが多い。

 動く
 トロントに到着して間もないある日のトレーニング、環境の変化のため自分の動きが硬く、思うように動けない日々が続いた。4原則に立ち返り自己分析すると足が止まっていることが判明した。「何かしよう」「うまく決めてやろう」などの想いも自らの足枷となっていたのではないか? 次の日からインストラクター達の腰から下のうごきを注意深く観察するようにした。 膝の動き、靴の動き、裸足であれば足の指やかかとの動きまでじっと見つめると各人の身長、体重や手足のコンパス、人種、民族、の違い、スポーツ、武術、軍隊での経験の有無など影響しているように見えた。特定の立ち方や移動法まで規定しない大らかなコンセプトの自由さを感じた。股関節を軸に膝を伸ばしたまま大きくかかとから踏み込み体を移動するタイプ。細かなステップで足裏をフラットにしたまま滑る様に移動するタイプなど違いが大変興味深かった。しかし、細かい部分だけをまねても意味がないことは言うまでもない。自身のトレーニングの中で自分に最適のステップを探すヒントとなった。

 またある時のマッサージで、ブラデミア師にマッサージをしてもらう機会があり背中や腹部に両足で乗られた際、奇妙な感覚を感じた。彼の体格からはにわかに信じがたい軽さに感じたのだ。(50~60キロほど)おそらく深い呼吸と頭を天井から紐で吊られるような真っ直ぐな背骨の配置、頭部から足の指先にいたるまでの全身のリラックス、フラットでかつ背中に張り付くような柔らかい立ち方などが、彼の完璧なほどのバランスを可能にしていると思われる。このバランスであればどのような動き、ポジションからでもパワフルな攻撃が可能であると容易に推測できる。 ジョギングやマッサージ、ハンドトゥハンドなど日ごろのすべてのワークが全身の快適で適切なリラックスで繋がっていることに気がついた。

戦略的に動く
 よくトレーニングの際に聞かれた言葉だがその意味は何なのか? エマニュエル マノラカキス氏の主宰する「ファイトクラブ」でのトレーニングの際、ナイフやスティックをパートナーと同じタイミングで攻撃するワークを行った。エマニュエル氏のデモンストレーションは相手を打つ、攻撃を回避すると別々に考えるのではなく一体として捕らえることに気づいた。エマニュエル氏が強調していた言葉が「快適な距離」である。

 「戦略的」とはいつでも自分が快適に攻撃できかつ、相手からは捕らえにくい、打ちにくい空間を探す。それが「快適な距離」であり、それを保持することではないか?と考えた。すると今まで自分が漫然と相手に背中を向けたまま自分から不利な場所に入り込んだり、反撃できない距離まで移動してしまったり、不安定な体勢で動きつづけたりなど不合理な行動をしていたことに気がついた。 


ストライク

 ブラデミアスクールで感じたことのひとつにストライクをかなり激しく強く打たせる事を強調していた事があげられる。無論、錬度や体格差がある初心者や女性などこの限りではない。 「もっと強く打ってください。」とパートナーに頻繁に指摘されたことだが強いストライクを受けることが自分自身の上達のためであるとの認識がきちんと浸透している印象を受けた。適切で深く強いストライクは受け手のサイキの活動を学ぶ機会を作り耐久力を向上させ、打つ側は最適なフォームとリラックス、感情の制御が求められる。両者が本当の意味での「上達する為の練習時間」を積むことができる。ただ、正しいフォームで段階的に強度を上げてゆく必要がある。 

 人間は感情、特に「怒り」の感情が高まると握り拳を固める。感情と手の繋がりが他の身体部位よりも強いためかもしれない。ある日、身長が高く腕のリーチが長いパートナーのプッシュをこちらがパンチで返すワークを行った際、芯を捕らえる正確なプッシュでバランスを崩され続け、こちらのパンチがほとんど届かなかった。気持ちの焦りが強くなりますます姿勢が崩れ拳、肘、肩にも必要以上の緊張が増していった。「拳に怒りを込めるな」そうアドバイスされ、やきもきした感覚のままトレーニングは終了した。次の日のトレーニングでは自身の拳の緊張に注意した。想像以上にあらゆる局面で必要以上に拳を握り締めている事がわかった。パートナーをヒットする瞬間、プッシュアップでのミドルポジション、ナイフやスティックのグリップ等、必要以上のグリップは腕の動きを大幅に制限してしまう。しかし、緩すぎるグリップでは衝撃から手首や拳を守れない。適切なグリップ
とは何か?を考えるきっかけとなった。

ブリージング
 シニアインストラクター、ブレンダン、アダム両氏の受けをとった際、パートナーをテイクダウン後、距離をとって立ち、姿勢を整え、1~2度「フッ」と鋭く呼吸を吐いていることに気が付いた。すぐに彼らの様に自分でもワークに望む際、常に姿勢と呼吸を整える様にしたところ自分自身の内面の微妙な変化に気が付いた。接近するパートナーに対する不安が少なくなり、最適なステップや対応する動きが自然と選択されるような感覚が得られるようになった。しかしただ、闇雲に「フーフー」とやる事ではなく注意すべきは感情や思考に浮かび上がるよどみや濁りを、常に呼吸で吐き出し続け感情を清涼に保ち続ける事がそのヒントではないか? 「英雄の罠」このレポートに述べられている事と共通する点を感じた。

最後に
 今回の「旅」での最大の収穫は様々なパートナーと組んだ事である。
いろいろな人種、国籍、体格の違うパートナー達とワークをこなし、時には「熱く」なってしまう事もあったが全てが今の自分の血肉として体に刻まれたことを強く感じる。経験を積み、更なる向上を目指し今後も楽しくトレーニングに取り組んでゆきたい。
 

(以上)



先日、土井さんのお土産クラスを受ける機会があったのですが、この本文の通り「基本」に忠実で、自分の身体と心の状態へのつぶさな観察が要される内容でした。

手前味噌ながら私のクラスでは常に「呼吸、呼吸、呼吸」と本当にバカの一つ覚えのようにくり返しているのですが、そこにやはりシステマの全てが入っていると思うからなのです。

ですが数少ない原理を独力で深めていくことは、なかなか困難です。「自分が掘っている穴が見当違いなのではないか?」という不安がこみ上げて来て、次々と他の穴を掘りたくなってしまうのです。こういう気分に捉われると、新しい技術、新しい原理を求めるようになってしまいます。もちろん気分転換として他の技術に触れるのは間違ったことではないのですが、やはり「呼吸」を核とした「四原則」という穴を掘り下げることをメインから外してはいけないのではないかと思います。

「この穴で間違いない」ということを確信するには、すでにその穴をかなりの深さまで掘り下げた人に会うのが一番です。つまりシステマのマスターですね。

私は土井さんが持ち帰って来てくれたワークを体験して、「自分の掘っていた穴は間違ってなさそうだ」と再確認できました。土井さんも自分の掘り下げるべき穴がより明確になった様に感じられました。それはやはり土井さんが持ち帰って来てくれた情報が新しい技術や原理ではなく、すでにあるものをヴラディミアがさらに深めたものだったからです。

今年はけっこうたくさんの日本人メンバーがトロントやモスクワに行きます。

「大切な思い出だから」と海外での体験を自分の胸にしまっておくという選択もありですが、私自身は出来るだけみんなにシェアした方が良いと思います。そして周りの人も根掘り葉掘り聞き出すようにして下さい。

するときっとお互いにとって、大きな収穫が得られるのではないかと思うのです。

Tag:海外セミナーレポート  Trackback:0 comment:4 

Comment

カズ URL|
#- 2010.07.23 Fri08:48
いいですね!
こうやって本部を経験したひとがレポートを書いてシェアするのは。
また行ったことがある人でも忘れていることを思い出させてくれて。

来週は大阪のりょうさんが行くみたいだし、今年はトロントへ日本から行く人何人になるんだろう?
ヒデ URL|どうもです。
#- 2010.07.23 Fri12:58
北川さん。アップしていただいてどうもです!
いやー。 はずいっすね!

カズさん。 コメントありがとうございます!
きたろう URL|Re: タイトルなし
#- 2010.07.25 Sun23:18
コメントさんきうです!

> こうやって本部を経験したひとがレポートを書いてシェアするのは。
> また行ったことがある人でも忘れていることを思い出させてくれて。

いやー本当にそうですよ。現場の空気が共有できるってことは、日本でシステマやってる人にとっても、ずいぶんと大きな助けになると思うのです。

> 来週は大阪のりょうさんが行くみたいだし、今年はトロントへ日本から行く人何人になるんだろう?

モスクワキャンプにも何人かいくみたいですし、けっこうたくさんいますよね。素晴らしいことです!
きたろう URL|Re: どうもです。
#- 2010.07.25 Sun23:21
おー、執筆者ご本人! この度はほんとうにありがとうございます。
良い経験してきましたよねえ。ほんとに。お土産もたんまりシェアしているみたいで何よりです。

みんなにシェアすることで一番トクをするのは結局、自分ですしね。

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Author:TKHDKTGW
北川貴英:システマ東京主宰。株式会社アトス代表取締役。08年モスクワにて創始者ミカエル・リャブコより公式システマインストラクターとして認可。16年コンディショニングに特化した「INSTRUCTOR OF APPLIED SYSTEMA」に認可。システマ関連書籍を多数執筆。教育機関、医療系シンポジウムなどでの講演するほか、テレビやラジオなど各種媒体を通じてシステマを幅広く紹介。今なお毎年欠かさず海外研修に赴きスキル向上に努める。ヤングマガジン連載「アンダーニンジャ(花沢健吾著)」、NHKドラマ「ディア・ペイシェント」監修。
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