バースト・ブリージングについて
システマのトレーニングではとても大切なバースト・ブリージング。
これについてよく質問をいただくので、昨年の11月に行なわれたブリージングセミナーで学んだことをベースにして、ポイントをまとめておきたいと思います。
やり方は次の通り。
「鼻から吸い、口から吐く。これを小刻みに行なう。」
バースト・ブリージングは通常のブリージングでは回復が追いつかないような負荷を解消する時に使います。強烈なストライクを受けた後、ハードなエクササイズの最中、または武器を持った敵に向かっていく時のような、心理的な緊張も含まれます。
鼻から吸う理由を知るには、まず口で息を吸ってみると良いでしょう。なんとなく激しい運動のあとに息をあえがせているような感じがあるかと思います。口から吸うことでメンタルとフィジカルの両面に緊張が起こってしまうのですね。唇の構造をみてみると分かるのですが、口は本来、息を吐くことはあっても吸うための場所ではありません。軽く口を閉じて息を吐くと気圧によって唇が軽く開き空気が漏れていきますが、逆はできないはずです。口で吸おうとすればするほど、唇が弁となってきつく閉ざされ、吸えなくなることがわかるかと思います。ですから口を自然に閉じた状態でできるだけたくさんの空気を出し入れしようとすると、どうしても鼻から吸って口から吐く(もちろん同時に鼻からも漏れています)ようになるのです。
すると「鼻が詰まっている時はどうするのですか?」という疑問が当然、出て来ると思います。
そういう時はもちろん、口から吸っても構いません。口をできるだけ自然に開き、鼻からだけでは足りない分を口から入って来る分で補う、といった感じです。私自身もアレルギー性鼻炎がありますので、鼻が詰まっている時にはそのようにやっています。
バーストブリージングのやり方はだいたいこんなところですが、実際にやってみると色々な疑問点が出てきます。
まず多くの人が直面するのが「バーストブリージングをやると余計に苦しくなる」というもの。
これは呼吸に過度の緊張が伴っているためです。その緊張のために体力の回復どころか逆に疲れてしまうのですね。
それを解決するには、自分にとって適切な呼吸の深さやペースをまず知ることが必要です。例えば思い切り吸いきり、思い切り吐ききると、呼吸に伴う緊張がいやでも感じられるかと思います。逆に浅すぎても空気が足りずに苦しくなってしまうでしょう。そのどちらの負荷も起きないような深さで呼吸をすることで、余計な緊張が起こらなくなります。
バーストブリージングのペースは早ければ良いというものでもありません。インストラクターやマスターはとてもペースの早いバーストブリージングをしますが、必ずしも同じようにする必要はありません。例え周りの人より遅くても、それで体力の回復が早まるなら、それはその人にとってのバーストブリージングとして正解なのです。
また身体は負荷がかかっているほどたくさんの酸素を必要とします。ですから椅子に座って平静にしている時より、プッシュアップをしている時の方がバーストブリージングのペースが早くなったりします。自分にとって本当に快適な呼吸を知るようにしていけば、負荷に応じてバーストブリージングは自然に変化することも、分かって来るかと思います。
そうしたことを実感するには、練習において呼吸に動きを連動させることを意識する必要があります。
ブリージングセミナーでヴラディミアは「分析しなさい」とたびたび口にしていましたが、呼吸が身体にどのような影響をもたらしているかを、よく感じ取ることが大切です。呼吸が大切だから、と闇雲に呼吸をするのも息を詰めるよりはずっとマシですが、呼吸を全身で感じるようにすることで効果がまるで違ってきます。
呼吸にともなって身体中に振動が伝わったり、血液が流れる感じがあったり、体温が変化したりします。それまで負荷に感じられていたことが、呼吸によってふっと楽になったりします。そういった呼吸による変化をつぶさに感じ取るようにするのです。こうするとそれまで単なる「体力作り」と思っていたシステマのエクササイズが、がぜん深みをもったものになりますし、マスター達がなぜ「筋トレ」ではなく「呼吸のトレーニング」と言うのかも分かって来ることと思います。
とはいえ、「呼吸の力が実感できない」と思う人もいることでしょう。そういう人には、とっても簡単な解決法があります。バースト・ブリージングを5割増くらいの強さでやるのです。それでも分からなければ10割増でも構いません。要するに「呼吸の力が感じられない」と言う人は呼吸が弱すぎるのです。
ですから「適度な深さが良い」と前述しましたが、それはあくまでも「正解」としての意見です。上達するための「方便」としては、自分が適切と思っているものよりも、もう少し強めに呼吸をした方が良いようです。なぜなら私も含めてついつい呼吸が弱くなってしまい、呼吸をしているけど効果が出ていない、「呼吸をしているつもり」と言える状態になってしまうからです。
強くするのは主に吐くほう。身体の力が抜けていれば、吐いた息の反動で必要な分だけ空気が入ってきます。ですがそれをマネしようとしても呼吸が弱くなってしまいがちなので、吸気と呼気の両方を強くやるようにしても良いでしょう。
確かにマスターは呼吸をしているようには見えません。それは小さな呼吸でも効果が出るように相当の習練を積んだからです。ヴラディミアが見せてくれたバースト・ブリージングはものすごく細かくて、マネをしようとしてもすぐに苦しくなってしまいます。ヴァレンティンが鼻でバースト・ブリージングをやると、ひくひくひくひくと超高速で小鼻が動くのです。ですがその小ささばかりをマネしては、呼吸と動きが切り離された効果のないものになってしまいかねません。まず私たちのレベルでは今よりずっとたくさん、呼吸の影響力を感じられるくらいに強く呼吸をする事が近道となります。その結果として次第にマスター達のような小さくても高い効果のあるバースト・ブリージングになっていくのではないかな、と思います。
バーストブリージングについてはヴラディミアの著書「Let Every bleath...」に詳しく書いてありますので英語版はそちらを、英語が苦手な方は近々発売されるであろう日本語版を参照するか、自分で訳してみることをお勧めします。
これについてよく質問をいただくので、昨年の11月に行なわれたブリージングセミナーで学んだことをベースにして、ポイントをまとめておきたいと思います。
やり方は次の通り。
「鼻から吸い、口から吐く。これを小刻みに行なう。」
バースト・ブリージングは通常のブリージングでは回復が追いつかないような負荷を解消する時に使います。強烈なストライクを受けた後、ハードなエクササイズの最中、または武器を持った敵に向かっていく時のような、心理的な緊張も含まれます。
鼻から吸う理由を知るには、まず口で息を吸ってみると良いでしょう。なんとなく激しい運動のあとに息をあえがせているような感じがあるかと思います。口から吸うことでメンタルとフィジカルの両面に緊張が起こってしまうのですね。唇の構造をみてみると分かるのですが、口は本来、息を吐くことはあっても吸うための場所ではありません。軽く口を閉じて息を吐くと気圧によって唇が軽く開き空気が漏れていきますが、逆はできないはずです。口で吸おうとすればするほど、唇が弁となってきつく閉ざされ、吸えなくなることがわかるかと思います。ですから口を自然に閉じた状態でできるだけたくさんの空気を出し入れしようとすると、どうしても鼻から吸って口から吐く(もちろん同時に鼻からも漏れています)ようになるのです。
すると「鼻が詰まっている時はどうするのですか?」という疑問が当然、出て来ると思います。
そういう時はもちろん、口から吸っても構いません。口をできるだけ自然に開き、鼻からだけでは足りない分を口から入って来る分で補う、といった感じです。私自身もアレルギー性鼻炎がありますので、鼻が詰まっている時にはそのようにやっています。
バーストブリージングのやり方はだいたいこんなところですが、実際にやってみると色々な疑問点が出てきます。
まず多くの人が直面するのが「バーストブリージングをやると余計に苦しくなる」というもの。
これは呼吸に過度の緊張が伴っているためです。その緊張のために体力の回復どころか逆に疲れてしまうのですね。
それを解決するには、自分にとって適切な呼吸の深さやペースをまず知ることが必要です。例えば思い切り吸いきり、思い切り吐ききると、呼吸に伴う緊張がいやでも感じられるかと思います。逆に浅すぎても空気が足りずに苦しくなってしまうでしょう。そのどちらの負荷も起きないような深さで呼吸をすることで、余計な緊張が起こらなくなります。
バーストブリージングのペースは早ければ良いというものでもありません。インストラクターやマスターはとてもペースの早いバーストブリージングをしますが、必ずしも同じようにする必要はありません。例え周りの人より遅くても、それで体力の回復が早まるなら、それはその人にとってのバーストブリージングとして正解なのです。
また身体は負荷がかかっているほどたくさんの酸素を必要とします。ですから椅子に座って平静にしている時より、プッシュアップをしている時の方がバーストブリージングのペースが早くなったりします。自分にとって本当に快適な呼吸を知るようにしていけば、負荷に応じてバーストブリージングは自然に変化することも、分かって来るかと思います。
そうしたことを実感するには、練習において呼吸に動きを連動させることを意識する必要があります。
ブリージングセミナーでヴラディミアは「分析しなさい」とたびたび口にしていましたが、呼吸が身体にどのような影響をもたらしているかを、よく感じ取ることが大切です。呼吸が大切だから、と闇雲に呼吸をするのも息を詰めるよりはずっとマシですが、呼吸を全身で感じるようにすることで効果がまるで違ってきます。
呼吸にともなって身体中に振動が伝わったり、血液が流れる感じがあったり、体温が変化したりします。それまで負荷に感じられていたことが、呼吸によってふっと楽になったりします。そういった呼吸による変化をつぶさに感じ取るようにするのです。こうするとそれまで単なる「体力作り」と思っていたシステマのエクササイズが、がぜん深みをもったものになりますし、マスター達がなぜ「筋トレ」ではなく「呼吸のトレーニング」と言うのかも分かって来ることと思います。
とはいえ、「呼吸の力が実感できない」と思う人もいることでしょう。そういう人には、とっても簡単な解決法があります。バースト・ブリージングを5割増くらいの強さでやるのです。それでも分からなければ10割増でも構いません。要するに「呼吸の力が感じられない」と言う人は呼吸が弱すぎるのです。
ですから「適度な深さが良い」と前述しましたが、それはあくまでも「正解」としての意見です。上達するための「方便」としては、自分が適切と思っているものよりも、もう少し強めに呼吸をした方が良いようです。なぜなら私も含めてついつい呼吸が弱くなってしまい、呼吸をしているけど効果が出ていない、「呼吸をしているつもり」と言える状態になってしまうからです。
強くするのは主に吐くほう。身体の力が抜けていれば、吐いた息の反動で必要な分だけ空気が入ってきます。ですがそれをマネしようとしても呼吸が弱くなってしまいがちなので、吸気と呼気の両方を強くやるようにしても良いでしょう。
確かにマスターは呼吸をしているようには見えません。それは小さな呼吸でも効果が出るように相当の習練を積んだからです。ヴラディミアが見せてくれたバースト・ブリージングはものすごく細かくて、マネをしようとしてもすぐに苦しくなってしまいます。ヴァレンティンが鼻でバースト・ブリージングをやると、ひくひくひくひくと超高速で小鼻が動くのです。ですがその小ささばかりをマネしては、呼吸と動きが切り離された効果のないものになってしまいかねません。まず私たちのレベルでは今よりずっとたくさん、呼吸の影響力を感じられるくらいに強く呼吸をする事が近道となります。その結果として次第にマスター達のような小さくても高い効果のあるバースト・ブリージングになっていくのではないかな、と思います。
バーストブリージングについてはヴラディミアの著書「Let Every bleath...」に詳しく書いてありますので英語版はそちらを、英語が苦手な方は近々発売されるであろう日本語版を参照するか、自分で訳してみることをお勧めします。
Comment
バーストブリージングのやり方について詳しく説明していただき、非常に参考になります。先日のセミナーでザイコフスキーさんも言っていましたが、鼻が詰まった時は口で吸ってもよいと聞いて安心しました。私も鼻炎持ちなんですが、鼻詰まり状態でバーストブリージングをやって失神しそうになったことがあるのでw
ここまで、書いて頂けるとは
とても、とても感謝ですm(_ _)m
バーストブリージングと言う呼吸法を通して、形、形式、方法だけではなく、その本質的な意味と目的を知り、その目的を達するための自己成長させる具体的方法、取り組み方、自分自身を知り、学ぶ良い方法であると理解出来ました。どうしても他の人の技術、能力をうらやましく思い、ともすると外見上のことのみの物まねとなり、出来た出来ないで終わってしまいやすいですが、自分自身を見る、感じる、そして成長させる練習する良い方法がバーストブリージングであり、システマ呼吸であり、システマの四原則と捉え直しました。
また、自分では出来ないことの正解は自分では実感出来ない。ならば目的意識をもって、もっと極端に下手に、不自由にやってみること、失敗することも自分の状態を知る方法の一つであることも改めてなるほどと思いました。
本日の京橋クラスも楽しみにしております。
呼吸が大事というのはよく聞きますが、その肝心の呼吸の鍛錬法となるとお粗末なものが多い中で、システマは本当によくできていますね。
合気上げとクンバハカ以外で呼吸の効果を実感できず悩んでいたので、今回の記事もとても参考になりました。多謝。
感謝してもしたりないくらい、とてもためになる記事なので多謝と書かせていただいていますが、今回の記事も本当に多謝です。
それからひとつ読んでて気になったのですが、鼻づまりは、断食をするか、せめて砂糖や添加物・加工食品は食べないようにして、かわりに新鮮な野菜を大量に食べる生活を1週間ほど続けると、ものすごく鼻の通りがよくなりますよ。
これにランニングと温冷浴を加えるとさらによくなります。
私は小さいころから慢性鼻炎やアレルギーで苦しめられてきましたが、ヨガや西式や甲野先生の著書に啓蒙されて上記のことを毎日するようになったら鼻炎もアレルギーもかなり改善しました。ついでに頭痛や肩こりも軽くなりました。
余計なお世話かもしれませんが、もしまだ鼻炎に悩まされているようでしたらお試しください。
> バーストブリージングのやり方について詳しく説明していただき、非常に参考になります。先日のセミナーでザイコフスキーさんも言っていましたが、鼻が詰まった時は口で吸ってもよいと聞いて安心しました。私も鼻炎持ちなんですが、鼻詰まり状態でバーストブリージングをやって失神しそうになったことがあるのでw
コメントありがとうございます。失神しそうになりましたか(笑 気をつけて下さい!
> ここまで、書いて頂けるとは
> とても、とても感謝ですm(_ _)m
こちらこそお読み頂けて感謝です!
あきらさん
記事が役に立ったようでなによりです。私はシステマにおいて呼吸がものすごく大事だと思っていますので、クラスでもひたすら「呼吸!呼吸!!呼吸!!!」といった感じです。でもまあこれも無数にあるシステマのアプローチにすぎないですからね。インストラクターによってみな見解が違う、というのがシステマの面白いところだったりします。
鼻炎についてもありがとうございます。ちょっとハウスダストの気があるのですが、現在、家の目の前で木造建築の取り壊しをやっているのですよ。それで埃が舞ってここしばらくしんどかったのですが、ようやく作業が終盤にさしかかって楽になってきました。ひどい時に野菜食など試してみます! あとシステマ断食も!!
> 自分自身を見る、感じる、そして成長させる
>失敗することも自分の状態を知る方法
まったくもって同意です。文字どおり「自分を知る」ことで色々なことが見えてくるのですよね。先日、あるボディーワークの先生とお話をした時に伺ったのですが、患者さんの身体の状態を細かく察知できるようになるための一番の練習は、自分自身の身体をよく感じることだそうです。やはり優れた人はシステマ的に見ても矛盾のないことをやっているのだなあ、と実感しました。
「自分を知れ」といったミカエルがいかにスゴいか、ってのが良くわかりますです。
ヨントスさん、チョイメタさんが記入しているので私も。
下記は、養神館龍の安藤先生のメルマガからです。
まんま、システマの概念に酷似しているように思い、
びっくりしました。
■合気道にまつわる名言・格言
「武産合気」
「武産合気」とは「合気道の技は、すでに決まったものではなく、相手との攻防の中で産まれ出る、創出されるのである。武を産み出す武道が合気道である」ということです。つまり合気道の技の無限の変化を言っている訳です。
昭和58年5月に発行された「植芝盛平生誕百年・合気道開祖」によれば
「呼吸力は呼吸の変化を導き、宇宙偏在の根元の気と気結びし、さらに 生産(イクムスビ)し、そして緒結(オムスビ)びすることによって 宇宙化する。
と同時に呼吸の微妙なる変化は五体のはたらきを活性化し、おのずから神変万化の動作をうながす。
そのような呼吸が宇宙化しつつ行われうるならば、不可視の精神の実在が己の身辺に集結し、あたかも己を守もるかの感をもってつつみこむのである。これが合気妙応の初歩の導きである。
さっきさん
コメントありがとうございます。安藤先生のメルマガがあるのですか。それはスゴい。
それにしても書いてある内容もスゴいですね。マスターになればこの言葉が「ああ、なるほどねえ」と、理解できるのでしょうか。先が長くてわくわくしますね。