「高齢者へのシステマ その2」by コンスタンチン・コマロフ

「高齢者へのシステマ その2」
byコンスタンチン・コマロフ

クラスの時間の長さ、強度、内容は、参加する高齢者の当初の状態に応じて決める必要がある。一般的な規則は単純だ。参加者の健康状態、特に脈拍に基づいてワークを調整する。クラスを始めるときに必ず参加者に対して、自分の現在の気分を常に観察し、心臓の鼓動に耳を傾けるように指示する。自分の鼓動を「内部の耳」で聞くことができたら、呼吸を使って鼓動を鎮めることが重要になる。クラス中に参加者が多少なりとも気分の悪さを感じたら、ただちにインストラクターに告げて休憩を取るようにする。

寝た状態
クラスの最初のワークは、床に仰向けに寝た状態で行うのがよい。これにより、不安や予測を手放すとともに、身体の筋骨格系をリラックスさせることができる。ここでは、ゆっくり呼吸しながらの動的なストレッチ(胴体から離れる方向あるいは対角線上)が高い効果を発揮する。胴体から離れる方向のストレッチとは、手、腕、頭のてっぺんを「上」の方(寝ている場合は床と平行な頭の方向を指す)に、かかとを「下」の方(やはり床と平行な方向)に伸ばすことを言う。これによって、背骨がよく伸ばされる。次に、腕を横方向に、肋骨から離れる方向に伸ばし、指先が開くようにストレッチする。吸いながら伸ばし、吐きながらリラックスする。胴体の対角線上のストレッチを加えてもよい。すなわち、右腕と左足を同時に伸ばし、次に逆をやる。

次に、いろいろな方法で、仰向けからうつ伏せへ、うつ伏せから仰向けへと姿勢を変えてみる。この際、指先や足・膝の動きに胴体が付いていくようにする。その後、仰向けとうつ伏せの姿勢で、できる範囲内で床を這うように参加者に求める。高齢者にとって這う動きは難しい場合があるので、距離や速さにはこだわらなくてよい。むしろ重要なのはプロセス自体だ。体幹部の深層筋を使って動くことと、もちろん、途切れない呼吸によって動きをつないでいくことだ。

這うのが終わったら、背中とお腹の筋肉を使うワークをする。ここで使える練習としては、仰向けになって膝をあごに引きつけることや、片方の膝を反対側の肩に向かって引き上げていくことなどがある。うつ伏せの状態からゆっくりと反り返る動きを加えてもよい。

大事なこととして、身体に負荷をかける練習をしたあとは、必ず筋肉をリラックスさせ、残っている緊張を完全に解消するようにする。

そのための方法としては、ゆっくりと呼吸しながら、背中とお腹の筋肉のストレッチを交互に行う。たとえば、横向きに寝て、吐きながら体をゆっくりと前に曲げ、背中の筋肉を伸ばす。次に、ゆっくりと吐きながら体を後ろにそらし、お腹の筋肉を伸ばす。その後、仰向けになって5分から7分ほどリラックスしながら、脈拍を感じ、意識によって脈拍の感覚を体のさまざまな部分に移動させていく。

座った状態
クラスの次の段階では、座った状態で練習を行う。これは、心臓血管系と神経系に適度な負荷を与え、常に呼吸し続けることの重要性に気づくために重要である。このワークの最も簡単な方法としては、さまざまな方法で上体を起こすことと横たわることを繰り返す。吐きながら倒れてリラックスし、吸いながら上体を起こす。この場合、「倒れる」とは、基本的に座った状態からゆっくりと横になることを意味する。高さの差はそれほど大きくないとはいえ、体が緊張していると、このようなワークには恐怖と心配が伴う。したがって、呼吸と心の興奮度を常に観察していることが重要だ。ときどき練習を止めて、呼吸によって心を鎮めるようにする。

立った状態
次の段階では、立った状態でワークをする。寝た状態と同様に、最初にやるのは姿勢を正しくすることとストレッチである。正しい姿勢を練習するときに注意する必要があるのは、身体のどこかに大きな緊張があると、正しい姿勢を取って維持するのが難しくなるということだ。この場合、正しい姿勢を保つこと自体が、身体に負荷をかける作業になる。これを解決するには、ストレッチによって筋肉をリラックスさせ、身体が正しい姿勢に戻れるようにする。ストレッチに加えて、胴体を(ストレッチしながら)左または右にひねる動きをすることもできる。この場合、吐きながらひねったほうがよい。この動きは、すでに十分緊張している筋肉にさらにストレスをかけることになるからだ。

姿勢を正しくし、ひねりとストレッチを行ったら、次に呼吸しながらゆっくりとスクワットをする。この時点では、できるだけ「優しい」スクワットにしたほうがよい。すなわち、何かにつかまってバランスを取り、足首、膝、股関節に無理のない範囲で行う。ただし、まっすぐで自然な姿勢を維持し、呼吸し続けることは守る。スクワットが終わったら、すぐに心拍を確認し、必要なら呼吸によって通常の心拍数まで戻す。

歩く
次の段階では、20分から25分程度、動きのあるワークを行う。体に緊張が蓄積すると、まず姿勢が歪んでくる。人間の特徴である直立歩行は、複雑な技術であり、高度な協調とバランスを必要とする。ある筋群が過度に緊張していると、バランスを維持するために他の筋群が補償しようとする。これにより動きの自由が制限され、協調が損なわれる。その結果、脚の関節、股関節、背骨に過大な負荷がかかる。

一定の歩数で呼吸に合わせて歩くことは、自然な歩みを回復し、維持するための有効な練習である。歩きながら、できる範囲で身体構造を維持することに全力を注ぐ。また、肩と腕がリラックスして動きに同調するようにする。速く歩きすぎると姿勢の制御が難しくなるので注意する。だんだんと呼吸を伸ばしていき(1回の吸気あるいは呼気で歩く歩数を徐々に増やしていくということ)、吸うときに肩と首に緊張が生じるのを感じたらやめる。記録を伸ばそうとがんばる必要はない。呼吸が完全で、自然で、体全体に満ちていればそれで十分だ。限界まで呼吸を伸ばしたら、今度はゆっくりと徐々に通常の状態まで縮めていく。長い息から短い息に突然変えると、血圧が急変するおそれがある。身体にこれ以上余分なストレスをかける必要はない。

上体
呼吸を伴うワークのあとで、今度は上体、すなわち腕と肩に働きかけることで血圧を正しく配分するワークをする。このためには、床または壁に手をついてゆっくりとプッシュアップを行う。この練習には注意が必要だ。呼吸が不十分だと、練習中に血圧が上がるおそれがある。このため、高齢者のプッシュアップは壁に手をついて行うほうがよい。

プッシュアップの他に、体を押したり、関節をひねったり、相手の抵抗を受けながら動いたりする練習を加えることもできる。簡単に言えば、上体に働きかけるとともに、さまざまな新しい感覚や動きを体験できる練習であれば何でもよい。

動きによる回復
クラスの最後には、床に寝た状態のワークを行うのがいちばんよい。これにより、練習の結果として現れてきたストレスの残りを筋骨格系から取り除くことができる。また、体幹の深層筋を使うことで体を統一し、血圧を均等化する効果もある。2人組になって、寝ている相手の腕と脚の関節をゆっくりとひねっていく。1人が相手のどこかの関節をゆっくりとひねって固定する。もう1人は床の上で動いて不快な状態から脱する。その後で、呼吸しながら床の上で自由に動き回る。ローリング、ストレッチ、その他好きな動きを、呼吸のサイクルに合わせて行う。クラスの最後には、呼吸しながらストレッチを行ったあと、仰向けになってしばらく自分の体を感じる。

評価
ここで紹介したクラスにかかる時間は、60分から90分程度である。高齢者にとってはこれくらいで十分だろう。

クラス全体を通じて、参加者の状態をチェックし、練習後に定期的に脈拍を測らせるようにすることが重要だ。クラス全体を通じて、1つの段階が終わるたびに、心拍数を毎分60回から80回程度まで回復させる必要がある。

クラスが終わったときの身体の感覚はきわめて重要だ。体が軽く、エネルギーに満ち、落ち着いた状態になっている必要がある。参加者がよい気分になっていることが重要だ。あまりにも疲れていたり、弱っていたり、興奮していたり、ネガティブな思考に囚われていたりする場合は、クラスの内容や形式に問題があったか、いくつかの練習のやり方が正しくなかった可能性がある。何人もの参加者がそのようなネガティブな状態に陥った場合は、クラスの内容、構成、ペースを慎重に振り返り、考え直すことが必要だ。そのような状態になるのが1人か2人の場合は、その人たちを注意深く見守り、ワークを正しくやっているかどうかを確認する。間違いがあれば正し、他の参加者よりも頻繁にその人達にどう感じているかを聞くようにする。

システマのクラスは、高齢者にとってとても有益である。高齢者が健康を維持し、活動的な生活を送り、仕事を続け、常に明るい気分を保ち、老化と停滞を押し戻すために役立つからだ。

一般的なスポーツやフィットネスのクラスと比べても、システマの利点は明らかだ。その理由を次に示す。

・ システマでは何かを達成する必要がない。また、厳格なルールや基準もない。

・ システマは、自分自身に対する感覚に基づく途切れない正常なプロセスを促進する。

・ 同時に、このプロセスは同じような練習の機械的な繰り返しではなく、探求、発見、理解の継続的なプロセスである。決して飽きることがなく、しかも自然な動きの喜びを実感させてくれる素晴らしいゲームである。

高齢者とともにシステマのクラスを行うときには、システマの最も重要な原則の1つを常に心に留めておく必要がある。それは、「傷つけてはならない」ということだ。

2014年のシステマキャンプでは、このテーマの理論的・実践的側面についてさらに詳しく扱う予定である。

高齢者向けのワークは、キャンプのインストラクターワークショップで扱われるテーマの1つである。このセッションは、関心のあるキャンプ参加者であれば誰でも参加できる。

Tag:トレーニングTips日本語版 

システマ ライジス イン ジャパン始動
5/27-28 ダニール・リャブコin東京
10/7-9 本邦初マスターと過ごす富士合宿
tokyo_peatixmini.jpg banner_peatixmini.jpg
システマ本部認定クラス
WarriorLogoFullmini.pngrusslogo.jpg
問い合わせ先
システマに関する問い合わせやシステマ東京への依頼などはContactからどうぞ。
メールマガジン登録
システマ関連情報やコラムを配信する週間メールマガジン「システマ東京ガジェータ」を希望される方は、こちらからご登録を。
システマ東京案内&問い合わせ先
正規システマクラス「システマ東京」では以下のクラスを実施中です。
・レギュラークラス ・呼吸法クラス ・親子クラス ・プライベートクラス ・女性限定クラス ・外部スクールクラス
各クラスとも初心者歓迎。詳細はこちらをご参照下さい。お問い合わせはContactよりお気軽にどうぞ
ドキュメンタリーDVD「強き祈りの手」
「体力をつけ精神力を高めることで、攻撃しない人間になれるのです」 システマの哲学と軌跡に迫るドキュメンタリーの日本語版。正教との関わりからアンコンタクトワークまで、システマのエッセンスが凝縮された充実の52分。主演:ミカエル・リャブコ 数量限定生産なのでお早めに。
プロフィール

TKHDKTGW

Author:TKHDKTGW
北川貴英:08年、モスクワにて創始者ミカエル・リャブコより日本人2人目の公式システマインストラクターとして認可。16年コンディショニングに特化した「INSTRUCTOR OF APPLIED SYSTEMA」の認可も取得。システマ東京クラスや各地のカルチャーセンターなど年間400コマ以上を担当。システマ関連書籍を多数執筆。幅広い層にシステマを役立ててもらうべく、教育機関、養護施設、医療系研修、学術学会、雑誌、テレビ、ラジオなどでセミナーや講演会を実施している。毎年欠かさず複数回、海外研修に赴きスキルのブラッシュアップを継続している。システマ東京のスケジュールはコチラをご参照下さい。
著書、監修一覧
「システマ入門(BABジャパン)」
「最強の呼吸法(マガジンハウス)」
「最強のリラックス(マガジンハウス)」
「逆境に強い心のつくり方ーシステマ超入門ー(PHP文庫)」
「人はなぜ突然怒りだすのか?(イースト新書)」
「システマ・ストライク(日貿出版社)」
「Dr.クロワッサン 呼吸を変えるとカラダの不調が治る(マガジンハウス)」
「システマ・ボディワーク(BABジャパン)」
「ストレスに負けない最高の呼吸術(MOE)」
「システマ・フットワーク(日貿出版社)」
「人生は楽しいかい?(夜間飛行)」
DVD
「システマ入門Vol.1,2(BABジャパン)」
「システマブリージング超入門(BABジャパン)」

クラス日程(北川担当分と主なイベントのみ)
ライジングコンボ発売中!
ダニール・リャブコ東京セミナーとミカエル&ダニール・リャブコによる富士山合宿がオトクなセットに!
ダニール・リャブコ東京セミナー2017
システマセミナー情報
〈大阪〉セルゲイ&ザイコフスキーセミナー
2017年3月4日、5日
〈東京〉ザイコフスキーセミナー
2017年3月11日、12日
〈仙台〉システマワークショップ
2017年5月7日(土)
〈東京〉ダニール・リャブコセミナー
2017年5月27日、28日
〈盛岡〉システマワークショップ
2017年7月2日(日)
〈旭川〉システマワークショップ
2017年7月16日(日)
〈札幌〉システマワークショップ
2017年7月17日(月・祝)
〈富士〉システマキャンプwithミカエル・リャブコ
2017年10月7日〜9日
システマ書籍
ブログ内検索
最新記事
おすすめショップ
〈システマDVD&システマグッズ〉
システマジャパンショップ
システマ大阪ショップ
QRコード
QRコード
BBS
会員制BBSはコチラ
システマクラスに継続的に参加されている方が対象です。
参加希望の方は「お名前」「所属クラス」「参加期間」を記入の上、フォームよりお申し込みください。