システマメンバーの接骨医、野口先生のサイトです
システマの生徒には、何らかのかたちで身体に関わるお仕事をしている人がおおいようです。海外セミナーで知り合った人達にも、カイロやロルフィングといったセラピーの先生やお医者さんが何人もいましたので、これは日本に限らず世界的に共通した現象のようです。そのためトレーニング中にけが人が出ると、彼らが迅速に的確な対処をしているシーンなんかも時折みかけます。日本のメンバーのなかには歯医者さんもいますので、万が一歯が折れても大丈夫?
なんて冗談はさておき、長らくシステマを学ばれている、「のぐち接骨院。」の接骨医、野口智章さんが自身のサイトとブログを開設していたのでご紹介します。
野口さんはシステマのエクササイズも適切に施術に取り入れているのだとか。はじめはみんな苦労するシットアップをご高齢の方がなんなくこなしてしまうなど、驚きのエピソードをときどき教えてくれます。身体の使い方についてなど、興味をひかれるコラムもあるので、これからの更新が楽しみです。

野口さんとのトレーニング。私が以前学んでいた代替医療についても詳しいので、そちらの方面のことをいろいろと教えていただいたりしてます。
なんて冗談はさておき、長らくシステマを学ばれている、「のぐち接骨院。」の接骨医、野口智章さんが自身のサイトとブログを開設していたのでご紹介します。
野口さんはシステマのエクササイズも適切に施術に取り入れているのだとか。はじめはみんな苦労するシットアップをご高齢の方がなんなくこなしてしまうなど、驚きのエピソードをときどき教えてくれます。身体の使い方についてなど、興味をひかれるコラムもあるので、これからの更新が楽しみです。

野口さんとのトレーニング。私が以前学んでいた代替医療についても詳しいので、そちらの方面のことをいろいろと教えていただいたりしてます。
上下関係?
NO BELTS OR UNIFORMS
NO KATAS OR STANCES
NO FORMALITIES OR RITUALS
REAL, PRACTICAL, AND EXCITING Training!
以前にも紹介しましたが、トロントのシステマ本部に掲げられている、キャッチ・コピーです。
このコピーを世界中のシステマ愛好家はけっこう気に入っていて、ちょっとアレンジして自分のクラスのチラシに使っていたりします。例えば最後の「リアルで、実戦的で、エキサイティングなトレーニングがあります」のところに「笑顔に満ちた」というフレーズを挿入してみたり。ちなみにこれは僕がとてもお世話になっている、とあるアメリカのインストラクターの案でした。
ぱっと読んだだけだと、気づかないのですが、一番最初に「NO BELTS」が来ているのです。武術面の特徴を強調するなら、「NO KATAS OR STANCES」が最初に来ても良いと思うのです。でもこのキャッチの発案者(おそらくヴラディミア)はあえて「NO BELTS」を最初に持って来ました。そしてヴラディミアはこれを使っています。
「NO BELTS」を直訳すると「ベルトがない」。「ズボンがずり落ちちゃうじゃないか!」と思った方もいるかも知れませんが、ここでいうベルトは武道愛好家ならすぐにピンとくるように「帯」のことです。白帯、茶帯、黒帯といった、練習生を習熟度別にランク分けするアレですね。
あの帯は一般に「生徒の向上心を高める」という理由で多くの武道で採用されています。僕の記憶が正しければ、確か発案者は講道館柔道の創始者嘉納治五郎。彼の取り入れた昇段制度が柔道の普及に大きく寄与したため、いつしか空手や剣道といった他の武道も採用した、というものでした。今では審査費用を払って審査会に出て、昇段したら登録料や帯代を払ったりといった、そういうものになっています。これに関連して、つい先日、森田健作さんがかねてより誇りにしていた剣道の段位が、剣道協会から正式に授与されたものではない、ということがすっぱ抜かれたことがありました。森田健作さんが言うには、森田さんの師匠が独断でくれたもので、自分はその先生を信頼していたから、ずっと正式なものだと思っていた、とのことでした。
もともと段位の認定、というのはそういうものだったのではないかと思います。敬愛してやまない師匠と生徒との信頼関係において授与される、というのは、それはそれでとても美しい関係ではないかと思います。
でもシステマではそんな「帯」がありません。みんな等しく、敬意を評すべきだという思想が反映されているのではないかと僕は理解しています。
では「インストラクター」という立場はどうなるのでしょうか。この認可も「帯」の一種じゃないかと思えてならなかったのです。これがずっと僕の心に引っかかっていたのですが、つい先日、自分なりの解答をえました。
クラスには色んな人がいます。ムードメーカー的な人がいれば、寡黙にトレーニングをこなす人、いじられキャラ的な人、仕事が忙しくてたまにしかこられない人、才気にあふれた人、ゆっくりと自分のペースで上達する人、何がなんだかわからないけどとにかく参加する人、他の格闘技に応用しようとしている人、紅一点でオトコ達にもまれながらも続けている人、なんとなく友達を作れずに孤立気味な人、などなど。
インストラクターというのは、そのうちの一つでしかないのだと。「生徒と先生」という関係性を上下関係に結びつけてしまうこと自体、固定観念にとらわれた発想だったのですね。
ただ練習生達が怪我をしないでシステマを楽しめるようにと導く裏方的な存在。インストラクターという立場をそのように考えたら、僕はなんだか納得しました。
最近、僕のことを「先生」と読んで下さる方が増えています。これはこれでとてもありがたいことです。自分が知らないことを知っている人物に対して、「先生」という言葉で敬意を表したくなる、という気持ちはとっても理解できるからです。むしろ日本であれば当たり前のことだと思います。でももし、「目上の人に対する敬意」という意味で「先生」と読んでいる方がいらしたら、別の呼び方に変えていただければと思うのです。外国の方は僕を「タカ」と呼びますし、親しい人は「キタガワさん」とか「キタちゃん」とか呼んでますし。なんか新しいあだ名があっても面白いかも知れませんね。「タカ」をアレンジして「タッキー」とか(笑)
みんな同じシステマの仲間。「月刊秘伝」にレポートを載せる関係でこの写真を編集部に送ったら、「こんなゴツいオトコの中でよく生き残って来ましたね」と驚かれました。彼はどんだけの修羅場を想像したのでしょうか(笑
NO KATAS OR STANCES
NO FORMALITIES OR RITUALS
REAL, PRACTICAL, AND EXCITING Training!
以前にも紹介しましたが、トロントのシステマ本部に掲げられている、キャッチ・コピーです。
このコピーを世界中のシステマ愛好家はけっこう気に入っていて、ちょっとアレンジして自分のクラスのチラシに使っていたりします。例えば最後の「リアルで、実戦的で、エキサイティングなトレーニングがあります」のところに「笑顔に満ちた」というフレーズを挿入してみたり。ちなみにこれは僕がとてもお世話になっている、とあるアメリカのインストラクターの案でした。
ぱっと読んだだけだと、気づかないのですが、一番最初に「NO BELTS」が来ているのです。武術面の特徴を強調するなら、「NO KATAS OR STANCES」が最初に来ても良いと思うのです。でもこのキャッチの発案者(おそらくヴラディミア)はあえて「NO BELTS」を最初に持って来ました。そしてヴラディミアはこれを使っています。
「NO BELTS」を直訳すると「ベルトがない」。「ズボンがずり落ちちゃうじゃないか!」と思った方もいるかも知れませんが、ここでいうベルトは武道愛好家ならすぐにピンとくるように「帯」のことです。白帯、茶帯、黒帯といった、練習生を習熟度別にランク分けするアレですね。
あの帯は一般に「生徒の向上心を高める」という理由で多くの武道で採用されています。僕の記憶が正しければ、確か発案者は講道館柔道の創始者嘉納治五郎。彼の取り入れた昇段制度が柔道の普及に大きく寄与したため、いつしか空手や剣道といった他の武道も採用した、というものでした。今では審査費用を払って審査会に出て、昇段したら登録料や帯代を払ったりといった、そういうものになっています。これに関連して、つい先日、森田健作さんがかねてより誇りにしていた剣道の段位が、剣道協会から正式に授与されたものではない、ということがすっぱ抜かれたことがありました。森田健作さんが言うには、森田さんの師匠が独断でくれたもので、自分はその先生を信頼していたから、ずっと正式なものだと思っていた、とのことでした。
もともと段位の認定、というのはそういうものだったのではないかと思います。敬愛してやまない師匠と生徒との信頼関係において授与される、というのは、それはそれでとても美しい関係ではないかと思います。
でもシステマではそんな「帯」がありません。みんな等しく、敬意を評すべきだという思想が反映されているのではないかと僕は理解しています。
では「インストラクター」という立場はどうなるのでしょうか。この認可も「帯」の一種じゃないかと思えてならなかったのです。これがずっと僕の心に引っかかっていたのですが、つい先日、自分なりの解答をえました。
クラスには色んな人がいます。ムードメーカー的な人がいれば、寡黙にトレーニングをこなす人、いじられキャラ的な人、仕事が忙しくてたまにしかこられない人、才気にあふれた人、ゆっくりと自分のペースで上達する人、何がなんだかわからないけどとにかく参加する人、他の格闘技に応用しようとしている人、紅一点でオトコ達にもまれながらも続けている人、なんとなく友達を作れずに孤立気味な人、などなど。
インストラクターというのは、そのうちの一つでしかないのだと。「生徒と先生」という関係性を上下関係に結びつけてしまうこと自体、固定観念にとらわれた発想だったのですね。
ただ練習生達が怪我をしないでシステマを楽しめるようにと導く裏方的な存在。インストラクターという立場をそのように考えたら、僕はなんだか納得しました。
最近、僕のことを「先生」と読んで下さる方が増えています。これはこれでとてもありがたいことです。自分が知らないことを知っている人物に対して、「先生」という言葉で敬意を表したくなる、という気持ちはとっても理解できるからです。むしろ日本であれば当たり前のことだと思います。でももし、「目上の人に対する敬意」という意味で「先生」と読んでいる方がいらしたら、別の呼び方に変えていただければと思うのです。外国の方は僕を「タカ」と呼びますし、親しい人は「キタガワさん」とか「キタちゃん」とか呼んでますし。なんか新しいあだ名があっても面白いかも知れませんね。「タカ」をアレンジして「タッキー」とか(笑)

09年07月24日の朝カル新宿クラス
7月24日の朝日カルチャー新宿クラスには、ピーター、フレッディ、アレックスというシステマフロリダからのゲストが参加しました。
先週末に行われたヴラディミアのセミナーにあわせて、日本観光を兼ねて来日していたのです。朝日カルチャークラスからもそのセミナーにおおくの方が参加されていましたので、参加者のほぼ全員に、“セミナーで学んだこと”と“みんなに伝えたいドリル”を一つずつ披露してもらいました。
「賢者は愚者からも学ぶ」と言いますが、僕はどんな人からでも確実に学べるものを、一つだけ知っています。それは「視点」。「盲人象を撫でる」という言葉がありますが、多くの人は、自分の視点からしかものごとを見ることができない、という意味では等しく盲人です。だからできるだけ色んな人の視点から語ってもらうことで、システマという巨象の全体像をより明確に知ることができるのです。
中には今年からシステマを始めた方もいたのですが、彼らにもデモンストレーションをやってもらって、解説をしてもらいました。するとやはり僕とはまったく視点からドリルを選び、紹介してくれるので、とっても勉強になりました。
後半はなんとなく流れでピーターによるナイフワークに。ヴラディミアのセミナーで学んだことから入って、ナイフワークや「足首を固定する」技術を使った、テイクダウンの初歩などを実習しました。このへんのテクニックはおそらく、僕の性格的に取り上げる機会の少なそうなものなので、受講生の皆さんもとても楽しめたのではないかと思います。
ただ、この日が初めてのシステマ体験、という参加者が何名かいて途方にくれてらしたので、次回からはまた通常通り、基礎に重点をおいたワークに戻っていきたいと思います。
結局昨日、講師という立場でありながら、僕はなんにも教えませんでした。それでもみんなで上達できるシステマって、すごいよなあと思います。
(追記:ほんとうに僕がサボっているように思われたら大変なので、とりあえず弁解しておきます。北川はシステマを知る上で、一つの視点に偏らないことがとっても大切だと思っています。なのであえて裏方に徹しました。この日にできるドリルとしては最善の内容と判断して行ったものなので、そのむねご理解いただければと思います。今回、意図がよくわからなかった方も、少し時間が経てば、きっとご共感いただけることと思っています)
ドリルを紹介してくれた皆さん、通訳を買って出てくださったTさん、そしてピーター達も本当にありがとうございました!!
こちらはピーターのシステマ公式サイトと紹介ページです。
最後にピーターからのメッセージを。
「みなさんトレーニングを続けていく中で、“自分の身体が思うように動かないな”と思うこともあると思います。でも私は67歳。こんな歳でも続けられるのですから、みなさんも希望を持ってください」
先週末に行われたヴラディミアのセミナーにあわせて、日本観光を兼ねて来日していたのです。朝日カルチャークラスからもそのセミナーにおおくの方が参加されていましたので、参加者のほぼ全員に、“セミナーで学んだこと”と“みんなに伝えたいドリル”を一つずつ披露してもらいました。
「賢者は愚者からも学ぶ」と言いますが、僕はどんな人からでも確実に学べるものを、一つだけ知っています。それは「視点」。「盲人象を撫でる」という言葉がありますが、多くの人は、自分の視点からしかものごとを見ることができない、という意味では等しく盲人です。だからできるだけ色んな人の視点から語ってもらうことで、システマという巨象の全体像をより明確に知ることができるのです。
中には今年からシステマを始めた方もいたのですが、彼らにもデモンストレーションをやってもらって、解説をしてもらいました。するとやはり僕とはまったく視点からドリルを選び、紹介してくれるので、とっても勉強になりました。
後半はなんとなく流れでピーターによるナイフワークに。ヴラディミアのセミナーで学んだことから入って、ナイフワークや「足首を固定する」技術を使った、テイクダウンの初歩などを実習しました。このへんのテクニックはおそらく、僕の性格的に取り上げる機会の少なそうなものなので、受講生の皆さんもとても楽しめたのではないかと思います。
ただ、この日が初めてのシステマ体験、という参加者が何名かいて途方にくれてらしたので、次回からはまた通常通り、基礎に重点をおいたワークに戻っていきたいと思います。
結局昨日、講師という立場でありながら、僕はなんにも教えませんでした。それでもみんなで上達できるシステマって、すごいよなあと思います。
(追記:ほんとうに僕がサボっているように思われたら大変なので、とりあえず弁解しておきます。北川はシステマを知る上で、一つの視点に偏らないことがとっても大切だと思っています。なのであえて裏方に徹しました。この日にできるドリルとしては最善の内容と判断して行ったものなので、そのむねご理解いただければと思います。今回、意図がよくわからなかった方も、少し時間が経てば、きっとご共感いただけることと思っています)
ドリルを紹介してくれた皆さん、通訳を買って出てくださったTさん、そしてピーター達も本当にありがとうございました!!
こちらはピーターのシステマ公式サイトと紹介ページです。
最後にピーターからのメッセージを。
「みなさんトレーニングを続けていく中で、“自分の身体が思うように動かないな”と思うこともあると思います。でも私は67歳。こんな歳でも続けられるのですから、みなさんも希望を持ってください」
始めたばかりの頃
僕は高校~大学と空手をやって、古武術を経由し、システマに行き着きました。
古武術で求められていたのはとっても繊細な感覚と身体操作。おかげさまで身体の感度はあがりましたが、筋力や体力はずいぶんと落ちていました。
それはそれで良いかな、と思ったりしていたので、システマのトレーニングに参加した当初は基礎トレーニングがものすごくしんどかったのを覚えています。(今もしんどいですが(笑)
プッシュアップなど数回しかできません。空手時代は身体をずいぶんと鍛えていましたので、3分で120回という無茶な腕立て伏せもやっていたのですが、その体力はすっかり失われてしまっていました。
公園での練習ですので拳に砂利が食い込んで痛いですし。
でも周りの人は平然とやってのけているので、「怪物かよ」と思ってしまったほどです。
またシットアップも1回もできません。システマの腹筋運動は足も胴体も伸ばしたままなので、なれないうちは足が上半身の重さに負けて、ころんと倒れてしまうのです。
でも毎回毎回工夫しながら、続けていくことで短い間にできるようになってしまうのですから、おもしろいものです。これは「呼吸」を重視するシステマの妙と言えるのかもしれません。
基礎トレーニングについてのあれこれも、トレーニングTipsのコーナーに随時書いていこうと思います。よかったらご参考ください。
古武術で求められていたのはとっても繊細な感覚と身体操作。おかげさまで身体の感度はあがりましたが、筋力や体力はずいぶんと落ちていました。
それはそれで良いかな、と思ったりしていたので、システマのトレーニングに参加した当初は基礎トレーニングがものすごくしんどかったのを覚えています。(今もしんどいですが(笑)
プッシュアップなど数回しかできません。空手時代は身体をずいぶんと鍛えていましたので、3分で120回という無茶な腕立て伏せもやっていたのですが、その体力はすっかり失われてしまっていました。
公園での練習ですので拳に砂利が食い込んで痛いですし。
でも周りの人は平然とやってのけているので、「怪物かよ」と思ってしまったほどです。
またシットアップも1回もできません。システマの腹筋運動は足も胴体も伸ばしたままなので、なれないうちは足が上半身の重さに負けて、ころんと倒れてしまうのです。
でも毎回毎回工夫しながら、続けていくことで短い間にできるようになってしまうのですから、おもしろいものです。これは「呼吸」を重視するシステマの妙と言えるのかもしれません。
基礎トレーニングについてのあれこれも、トレーニングTipsのコーナーに随時書いていこうと思います。よかったらご参考ください。
インストラクターのなり方
とりあえずシステマを愛好する多くの人々の目標である、インストラクターになるまでの道のりについて書き上げてしまうことにします。
今のところ、インストラクターの認可を出すのは、モスクワのミカエル・リャブコとトロントのヴラディミア・ヴァシリエフの二人です。いずれかから認可をもらえば、世界中でシステマインストラクターとして活動をすることができるようになります。
インストラクターにはちょっとした特権があります。
それはトロント本部の代理店として商品を卸価格で仕入れることができる、ということ。それと“シニア・インストラクター”と呼ばれるトップクラスのインストラクターを招いて、セミナーを主催できる、ということです。
でも登録料とか試験料とかありません。代理店としてのノルマもありませんし、代理店としての活動をしなくても構いません。
ただ1年に1回はミカエルかウラディミアに技術レベルをチェックしてもらうことが必要です。日本にいる人にとってはこれがちょっとしたネックと言えるでしょう。とは言え、1年間チェックされないと登録を抹消されるとかそういうこともないので、けっこうユルめの決まりごとであるようです。
モスクワでインストラクターになる時には、全てミカエルの判断に委ねられます。ミカエルが必要と判断すればインストラクターの試験が行われたりしますし、行わないで突然インストラクターの認可をくれたりすることがあります。実際、07年に参加したモスクワキャンプでは僕が受けたようなプレゼンは行われず、最終日、ミカエルが見込んだメンバーに証書を渡している、という流れでした。
一方、トロントのヴラディミアのスクールではこの辺、少ししっかりしています。
志願者はまず、「インストラクターズ・イン・トレーニング」というのに参加します。もちろん志願は自主的なもの。誰かの推薦が必要だったりすることはありません。だいたい始めて2~3年経った人達がおおく参加するようです。これは言うなればインストラクターの見習い期間ですね。1年間で技術を高め、インストラクターの補佐として時にトレーニングをリードしたりしながら経験を積んでいきます。そしてその期間が終わった時に、改めてヴラディミアの審査を受けて、合格すれば晴れてインストラクターになれる、といった流れです。もしヴラディミアの審査を受けるのが困難な時は、動画を送ることも可能です。その場合、「特に凝った動きや派手な動きは必要ない。パンチやパンチの受けなど、ごく基本的な動きさえ見せてもらえれば、実力はだいたいわかる」とのことでした。
ヴラディミアの場合、「インストラクターズ・イン・トレーニング」に登録する時にプレゼンをしたり、簡単な面接をしたり、志望理由を書いて提出したりします。その場合もお題はとくにややこしいものではなく「システマとは何か?」とか「なぜシステマを教えたいのか」といった、ごく基本的でシンプルなことを聞かれるのみです。ただマスター達は「そういった質問でその人の理解度がわかる」との事なので、慎重に、正直に答える必要があるようです。
そう言えば僕が知っている中で、1人だけ面接で落ちてしまった人がいました。この人は合気道の先生だったのですが「合気道とシステマを組み合わせて、新しい武道を作りたい」とか言っていたようです。逆に言うと、これくらいとんちんかんなことを言わないと、面接で落とされることはないようです。
あと「インストラクターズ・イン・トレーニング」の段階でも場合によってはシニア・インストラクターを呼べるとか。いつ、誰を呼ぶかはトロントの本部が管理していますので、まずはそこに相談をすることになります。
とまあ、こんな感じです。多少はクリアになりましたでしょうか??
今のところ、インストラクターの認可を出すのは、モスクワのミカエル・リャブコとトロントのヴラディミア・ヴァシリエフの二人です。いずれかから認可をもらえば、世界中でシステマインストラクターとして活動をすることができるようになります。
インストラクターにはちょっとした特権があります。
それはトロント本部の代理店として商品を卸価格で仕入れることができる、ということ。それと“シニア・インストラクター”と呼ばれるトップクラスのインストラクターを招いて、セミナーを主催できる、ということです。
でも登録料とか試験料とかありません。代理店としてのノルマもありませんし、代理店としての活動をしなくても構いません。
ただ1年に1回はミカエルかウラディミアに技術レベルをチェックしてもらうことが必要です。日本にいる人にとってはこれがちょっとしたネックと言えるでしょう。とは言え、1年間チェックされないと登録を抹消されるとかそういうこともないので、けっこうユルめの決まりごとであるようです。
モスクワでインストラクターになる時には、全てミカエルの判断に委ねられます。ミカエルが必要と判断すればインストラクターの試験が行われたりしますし、行わないで突然インストラクターの認可をくれたりすることがあります。実際、07年に参加したモスクワキャンプでは僕が受けたようなプレゼンは行われず、最終日、ミカエルが見込んだメンバーに証書を渡している、という流れでした。
一方、トロントのヴラディミアのスクールではこの辺、少ししっかりしています。
志願者はまず、「インストラクターズ・イン・トレーニング」というのに参加します。もちろん志願は自主的なもの。誰かの推薦が必要だったりすることはありません。だいたい始めて2~3年経った人達がおおく参加するようです。これは言うなればインストラクターの見習い期間ですね。1年間で技術を高め、インストラクターの補佐として時にトレーニングをリードしたりしながら経験を積んでいきます。そしてその期間が終わった時に、改めてヴラディミアの審査を受けて、合格すれば晴れてインストラクターになれる、といった流れです。もしヴラディミアの審査を受けるのが困難な時は、動画を送ることも可能です。その場合、「特に凝った動きや派手な動きは必要ない。パンチやパンチの受けなど、ごく基本的な動きさえ見せてもらえれば、実力はだいたいわかる」とのことでした。
ヴラディミアの場合、「インストラクターズ・イン・トレーニング」に登録する時にプレゼンをしたり、簡単な面接をしたり、志望理由を書いて提出したりします。その場合もお題はとくにややこしいものではなく「システマとは何か?」とか「なぜシステマを教えたいのか」といった、ごく基本的でシンプルなことを聞かれるのみです。ただマスター達は「そういった質問でその人の理解度がわかる」との事なので、慎重に、正直に答える必要があるようです。
そう言えば僕が知っている中で、1人だけ面接で落ちてしまった人がいました。この人は合気道の先生だったのですが「合気道とシステマを組み合わせて、新しい武道を作りたい」とか言っていたようです。逆に言うと、これくらいとんちんかんなことを言わないと、面接で落とされることはないようです。
あと「インストラクターズ・イン・トレーニング」の段階でも場合によってはシニア・インストラクターを呼べるとか。いつ、誰を呼ぶかはトロントの本部が管理していますので、まずはそこに相談をすることになります。
とまあ、こんな感じです。多少はクリアになりましたでしょうか??
インストラクターになったいきさつ その2
各国から集まった現役インストラクター、インストラクター志願者のプレゼンが着々と進んでいきます。確か最初にしゃべったのはオランダ人の元プロボクサー。昨年のキャンプにも来てました。昔、アーネストホーストのチームにいたという強者です。練習ではこんな人のパンチもどかんどかん受けていたのですから、僕もずいぶんと成長したものです。
プレゼンを聴いているのはミカエルを初めとするキャンプの他の参加者と、モスクワのインストラクター達。みんな真剣に聴いているのでどきどきします。
緊張と英語力の不足であまり詳しい内容は分らなかったのですが、だいたいみんな「システマはマーシャルアーツの中でもとても優れている」ということを言っているようでした。とても自由で、しかも身体にも良いと。
それはまあそうなのですが、僕はシステマをただの格闘技の範疇におさめたくありませんでした。だから旅の恥はかき捨てとも言いますし、思い切りその思いをこめた事をしゃべることに決めました。
どんなことをしゃべったのかは完璧に覚えています。なにせ僕の人生でこれだけ頭をフル回転させたことはありませんから。
ちょっと恥ずかしいですが、後に続く人の参考に僕の答えを書いておきます。
いよいよ僕の番が来ました。
普段の練習でやる、カラダの緊張をほぐす簡単なエクササイズをやってみせて、「これがシステマの恩恵です」と言いました。「僕はいま、とても緊張しています。でもシステマで学んだことのお陰で、自分の意志でそれをほぐすことができるようになりました」と。
「システマは武術としても、ボディーワークとしても、思想としても、いずれの面においても優れています。でもそのうちのどれでもありません。“良い人になろう”という努力の全てが、システマなのだと思います」
「システマを始めれば、きっとあなたの心と身体は変化するでしょう。それはおそらく、あなたの隣人にも良い影響を与えることと思います」
「その影響は、さらにその隣の人にも及ぶでしょう。そうやってあなたがシステマをやることで、世の中を少し、良くすることができるかも知れません」
「もし興味があったらシステマを一緒にやりましょう」
…なんか大それた答えですが、ミカエルはニコニコしながら聞いてくれました。最初のつかみもおおむね好評だったようです。
その答えが良かったのか、悪かったのかはわかりませんが、とにかく最終日に私はミカエルからインストラクターの証書をもらいました。とはいえ、このテストで落ちた人はいません。それどころかこのキャンプでムードメーカー的な役割をしていながら、「まだ実力不足だから」とテストを辞退していた参加者がいたのですが、ミカエルはこの人にもインストラクターの証書を与えていました。
こんな感じですので、システマのインストラクターになる上で、これといった試験なんてものはありません。ミカエルかヴラディミアが「こいつはインストラクターにしても良い」と見込んだら、その人はインストラクターになってしまうのです。
だからもしかしたら、「なりたい」と言えば誰でもインストラクターになれてしまうのかも知れません。でも僕はそれで良いのではないかと思っています。システマを始めればすぐに、その世界にはとんでもない怪物がゴロゴロしていることを思い知らされます。インストラクターになる、というのは彼らと同列に立つ、ということです。それを知った上で「インストラクターになります」というのは、とても勇気があることです。ミカエルやヴラディミアはその勇気もまた一つの審査基準にしているのかも知れません。
ただ個人的な感想としては、画一的な基準を設けたテストを受けて合格するよりも、ミカエルのようなすごい人にじきじきに見込まれて、インストラクターになるほうがなんだか心の底から嬉しい感じがします。

ミカエルからの証書の授与。左の赤いシャツの人物がミカエルの子息ダニエル、右は数カ国語がペラペラと言う秀才、ディミトリです。
プレゼンを聴いているのはミカエルを初めとするキャンプの他の参加者と、モスクワのインストラクター達。みんな真剣に聴いているのでどきどきします。
緊張と英語力の不足であまり詳しい内容は分らなかったのですが、だいたいみんな「システマはマーシャルアーツの中でもとても優れている」ということを言っているようでした。とても自由で、しかも身体にも良いと。
それはまあそうなのですが、僕はシステマをただの格闘技の範疇におさめたくありませんでした。だから旅の恥はかき捨てとも言いますし、思い切りその思いをこめた事をしゃべることに決めました。
どんなことをしゃべったのかは完璧に覚えています。なにせ僕の人生でこれだけ頭をフル回転させたことはありませんから。
ちょっと恥ずかしいですが、後に続く人の参考に僕の答えを書いておきます。
いよいよ僕の番が来ました。
普段の練習でやる、カラダの緊張をほぐす簡単なエクササイズをやってみせて、「これがシステマの恩恵です」と言いました。「僕はいま、とても緊張しています。でもシステマで学んだことのお陰で、自分の意志でそれをほぐすことができるようになりました」と。
「システマは武術としても、ボディーワークとしても、思想としても、いずれの面においても優れています。でもそのうちのどれでもありません。“良い人になろう”という努力の全てが、システマなのだと思います」
「システマを始めれば、きっとあなたの心と身体は変化するでしょう。それはおそらく、あなたの隣人にも良い影響を与えることと思います」
「その影響は、さらにその隣の人にも及ぶでしょう。そうやってあなたがシステマをやることで、世の中を少し、良くすることができるかも知れません」
「もし興味があったらシステマを一緒にやりましょう」
…なんか大それた答えですが、ミカエルはニコニコしながら聞いてくれました。最初のつかみもおおむね好評だったようです。
その答えが良かったのか、悪かったのかはわかりませんが、とにかく最終日に私はミカエルからインストラクターの証書をもらいました。とはいえ、このテストで落ちた人はいません。それどころかこのキャンプでムードメーカー的な役割をしていながら、「まだ実力不足だから」とテストを辞退していた参加者がいたのですが、ミカエルはこの人にもインストラクターの証書を与えていました。
こんな感じですので、システマのインストラクターになる上で、これといった試験なんてものはありません。ミカエルかヴラディミアが「こいつはインストラクターにしても良い」と見込んだら、その人はインストラクターになってしまうのです。
だからもしかしたら、「なりたい」と言えば誰でもインストラクターになれてしまうのかも知れません。でも僕はそれで良いのではないかと思っています。システマを始めればすぐに、その世界にはとんでもない怪物がゴロゴロしていることを思い知らされます。インストラクターになる、というのは彼らと同列に立つ、ということです。それを知った上で「インストラクターになります」というのは、とても勇気があることです。ミカエルやヴラディミアはその勇気もまた一つの審査基準にしているのかも知れません。
ただ個人的な感想としては、画一的な基準を設けたテストを受けて合格するよりも、ミカエルのようなすごい人にじきじきに見込まれて、インストラクターになるほうがなんだか心の底から嬉しい感じがします。

ミカエルからの証書の授与。左の赤いシャツの人物がミカエルの子息ダニエル、右は数カ国語がペラペラと言う秀才、ディミトリです。
インストラクターになったいきさつ その1
私は08年の6月にモスクワにて、システマ創始者のミカエル・リャブコからインストラクターとして認可してもらいました。日本人としては2人目です。
1人目はシステマ大阪を率いている大西亮一さん。イギリスに長く住んでいた大西さんは在英中にシステマを学びました。来日したあるシニアインストラクターからも「早くインストラクターの資格をもらえよ」とそそのかされながらも、「まだ実力不足だから」とこれを固辞。07年にミカエル・リャブコ、ヴラデミア・ヴァシリエフ、ダニエル・リャブコのお三方が来日した際に、その実力が認められてインストラクターの資格を手渡されたというホンモノの実力者です。
私はそんな大西さんとは比較にならないほどのへなちょこ。にも関わらずなんでインストラクターになったのか、という疑問を持つ方も多いかと思いますので、ここでは私がインストラクターになった経緯について、お話したいと思います。
私がシステマを始めたのは2005年の終わりでした。月刊秘伝に掲載されていたシステマのシニアインストラクター、アレックス・コスティック氏を招いてのセミナーの記事を読んだのがきっかけです。それまで空手を中心にいろいろな武術や野口整体やホメオパシーを中心とする各種身体論を学んでいましたが、なにか物足りなさを感じていたときのことです。
「システマ」の名はそれ以前にも「合気ニュース」で目にしていたので、知ってはいたのですが「月刊秘伝」の記事はよりシステマの精神面に切り込んだ記事になっていたのです。
「実はこれ、スゴいかもしれない」と思って、ネットで検索してシステマジャパンのサイトを見つけ、参加の申し込みをしたのです。
僕がインストラクターになったのは、2回目となるロシア・キャンプに参加した時でした。この時、僕は約4ヶ月後に第一子の誕生を控えていまして、できれば生まれて来る子供と一緒にシステマを練習したいと思っていました。でもたった2人だけで練習するのも味気ないに違いありません。うちの奥さんは僕と一緒にシステマを始めたので、かなりの使い手ではあるのですが、それでも3人。システマは現代日本の子どもたちの身体性やコミュニケーションを高めるのにも最適だと思いますので、うちの家族だけで楽しむのではなく、いつかシステマのキッズクラスを、日本でやりたいなと思っていたのです。
シベリアやトロントではすでにキッズクラスがスタートしていて、なかなか好評なようです。
というワケでキャンプの最中に僕はミカエルに尋ねました。
「私は子どもたちと一緒にシステマをやりたいと思っています。どのような事に気をつければ良いですか?」と。
そしたらミカエルは即答しました。
「大事なのは“何を教えるか”ではない。“どのように接するか”だ」と
キッズクラスをやる上では、参加する全ての子どもたちに対して、本当の父親のようの接しなさい、と言うのが、ミカエルの答えなのでした。
「なるほど」と僕は思いました。一見簡単そうでいて難しくて、でもとっても大切な感じがします。どんなドリルを組もうか、あれこれと考えていた自分を少しばかり反省しました。
そしたらミカエルが続けて言いました。
「タカは今回のキャンプでインストラクターになる。最終日にプレゼンテーションの機会を与えるから、それに参加しなさい」と。
薮から棒に「インストラクター」という言葉が出ましたので、一瞬キツネにつままれたような心地になりましたが、ミカエルが言うことなのでとりあえず「はい」とだけ答えておきました。
いよいよ最終日。僕は英語があまりよくできません。だからミカエルの言葉も通訳さんの言葉をこちらが聞き間違えてしまったのかなー、なんてその時には思っていたのですが、最終日の終盤に差し掛かって、ミカエルが言いました。「現役のインストラクターと、インストラクター志望の者は集まりなさい」と。
「これのことか」と思いました。ミカエルによるインストラクターの審査がここで行われたのです。僕に対してミカエルは「タカにはインストラクターのライセンスをあげる。でもいちおう、審査を受けてみなさい」と言っていたのですね。
ミカエルによるインストラクター試験って、意外にも実技試験がありません。プレゼンテーションだけなのです。考えてみれば今さら実技試験をやる必要はないのですよね。だってこれまで1週間にわたってトレーニングをともにして、動きなんてさんざんみているわけですから。
このプレゼンテーションに参加したのは、現役インストラクターと志願者をあわせて15人ほど。
僕たちに与えられたプレゼンのお題は「“システマとは何か”を、システマを全く知らない人にも分るように、説明しなさい」というものです。
なんてシビアなことを訊くんだ、と僕は思いました。
システマって一言で言い表すことがとても難しいのです。「システマってどんなの?」と、なんにも知らない人に説明するのは、いつだって苦労します。
僕の順番はだいたい15人中10番目くらい。その間、僕はなんと答えたら良いか、頭をフル回転させて考えました。ただでさえムツカしい質問を、英語で答えなくてはいけないのですから。
1人目はシステマ大阪を率いている大西亮一さん。イギリスに長く住んでいた大西さんは在英中にシステマを学びました。来日したあるシニアインストラクターからも「早くインストラクターの資格をもらえよ」とそそのかされながらも、「まだ実力不足だから」とこれを固辞。07年にミカエル・リャブコ、ヴラデミア・ヴァシリエフ、ダニエル・リャブコのお三方が来日した際に、その実力が認められてインストラクターの資格を手渡されたというホンモノの実力者です。
私はそんな大西さんとは比較にならないほどのへなちょこ。にも関わらずなんでインストラクターになったのか、という疑問を持つ方も多いかと思いますので、ここでは私がインストラクターになった経緯について、お話したいと思います。
私がシステマを始めたのは2005年の終わりでした。月刊秘伝に掲載されていたシステマのシニアインストラクター、アレックス・コスティック氏を招いてのセミナーの記事を読んだのがきっかけです。それまで空手を中心にいろいろな武術や野口整体やホメオパシーを中心とする各種身体論を学んでいましたが、なにか物足りなさを感じていたときのことです。
「システマ」の名はそれ以前にも「合気ニュース」で目にしていたので、知ってはいたのですが「月刊秘伝」の記事はよりシステマの精神面に切り込んだ記事になっていたのです。
「実はこれ、スゴいかもしれない」と思って、ネットで検索してシステマジャパンのサイトを見つけ、参加の申し込みをしたのです。
僕がインストラクターになったのは、2回目となるロシア・キャンプに参加した時でした。この時、僕は約4ヶ月後に第一子の誕生を控えていまして、できれば生まれて来る子供と一緒にシステマを練習したいと思っていました。でもたった2人だけで練習するのも味気ないに違いありません。うちの奥さんは僕と一緒にシステマを始めたので、かなりの使い手ではあるのですが、それでも3人。システマは現代日本の子どもたちの身体性やコミュニケーションを高めるのにも最適だと思いますので、うちの家族だけで楽しむのではなく、いつかシステマのキッズクラスを、日本でやりたいなと思っていたのです。
シベリアやトロントではすでにキッズクラスがスタートしていて、なかなか好評なようです。
というワケでキャンプの最中に僕はミカエルに尋ねました。
「私は子どもたちと一緒にシステマをやりたいと思っています。どのような事に気をつければ良いですか?」と。
そしたらミカエルは即答しました。
「大事なのは“何を教えるか”ではない。“どのように接するか”だ」と
キッズクラスをやる上では、参加する全ての子どもたちに対して、本当の父親のようの接しなさい、と言うのが、ミカエルの答えなのでした。
「なるほど」と僕は思いました。一見簡単そうでいて難しくて、でもとっても大切な感じがします。どんなドリルを組もうか、あれこれと考えていた自分を少しばかり反省しました。
そしたらミカエルが続けて言いました。
「タカは今回のキャンプでインストラクターになる。最終日にプレゼンテーションの機会を与えるから、それに参加しなさい」と。
薮から棒に「インストラクター」という言葉が出ましたので、一瞬キツネにつままれたような心地になりましたが、ミカエルが言うことなのでとりあえず「はい」とだけ答えておきました。
いよいよ最終日。僕は英語があまりよくできません。だからミカエルの言葉も通訳さんの言葉をこちらが聞き間違えてしまったのかなー、なんてその時には思っていたのですが、最終日の終盤に差し掛かって、ミカエルが言いました。「現役のインストラクターと、インストラクター志望の者は集まりなさい」と。
「これのことか」と思いました。ミカエルによるインストラクターの審査がここで行われたのです。僕に対してミカエルは「タカにはインストラクターのライセンスをあげる。でもいちおう、審査を受けてみなさい」と言っていたのですね。
ミカエルによるインストラクター試験って、意外にも実技試験がありません。プレゼンテーションだけなのです。考えてみれば今さら実技試験をやる必要はないのですよね。だってこれまで1週間にわたってトレーニングをともにして、動きなんてさんざんみているわけですから。
このプレゼンテーションに参加したのは、現役インストラクターと志願者をあわせて15人ほど。
僕たちに与えられたプレゼンのお題は「“システマとは何か”を、システマを全く知らない人にも分るように、説明しなさい」というものです。
なんてシビアなことを訊くんだ、と僕は思いました。
システマって一言で言い表すことがとても難しいのです。「システマってどんなの?」と、なんにも知らない人に説明するのは、いつだって苦労します。
僕の順番はだいたい15人中10番目くらい。その間、僕はなんと答えたら良いか、頭をフル回転させて考えました。ただでさえムツカしい質問を、英語で答えなくてはいけないのですから。