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EDGE日本語版第6章無料公開!

EDGE六章1112

現在、日本語化が鋭意進行中のヴラディミアの著作「EDGE」。
先日はEDGEセミナー参加者にのみ公開された第6章の日本語版が、トロント本部の厚意で一般公開されることになりました。

pdfファイルになってますので、ぜひダウンロードして読んでみてください。

日本語版は来年春頃、epub形式の電子書籍で発売予定です。

ダウンロードはコチラから

Tag:マスターの言葉 

ミカエル・リャブコインタビュー「システマとは?」

Youtubeにアップされたインタビュー動画の抜粋です。本当は全訳を出したかったのですが、聞き取れない箇所や、話があちらこちらにとっ散らかって、意味が良くわからないところが多々あったため、特にシステマに関するところの抜粋としました。その旨ご理解のうえ、参考にして頂ければ幸いです。

〈システマについて〉
我々が扱っている「システマ」は古代ルーシの格闘技です。「システマ・リャブコ」と呼ばれるようになったのは、我々のシステマが人気を博すようになり、インターネット上でそう呼ばれるようになったためです。そして我々の他にも、いろいろなシステマが登場してきました。いろいろあるので、我々も把握しきれていませんが。それで、みなさんが、「システマ・リャブコ」と呼ばれているものの本質は何か、どこが他と違うのか、とご質問なさるようになりました。システマとは、ある意味ではすべての流派がこれに属すると言うことができ、また別の意味では、我々の流派が、すべてを一つにまとめていると言えると思います。他の流派の人たちは、我々からの情報を利用していますが、基本的には、我々はそれに異を唱えることはしません。ただ周りが、我々の流派をそう呼び始めただけです。これは我々のシステマの細かい部分についてそう呼んでいるのではなく、我々の源流のことだろうと思います。我々が扱っている古代ルーシの武術であるシステマは、古代と言っていますが、これはキリスト教化以降を指しています。キリスト教化以前の情報は乏しく、言い伝えレベルのものしかないためです。キリスト教化されてからは、利用に値するだけの情報が多く残されています。

〈システマを学ぶ人々〉
スペツナズとは、閉鎖的な別の組織です。私が退役してから、こういった職種の人たちを相手にトレーニングするようになりました。ウラジーミル・ヴァシリエフがトレーニングした人たちもいます。彼はカナダに移住し、カナダやアメリカでトレーニングをするようになりました。彼のところに人々が通うようになり、みなさん気に入ったのです。2000年代になってから欧米圏でわたしのことが知られるようになりました。それから、わたしもそちらに行くようになりました。2002年にはカナダやアメリカで、世界のさまざまな国々から、私たちのプレゼンテーションに来てくれ、私たちは古代ルーシの格闘技として登録するというお話を受けました。興味深いプロジェクトと言っていいと思います。その後、多方面の武道関係者やオリンピック選手の指導者など、さまざまなスポーツの分野から多くの人たちが集まって来ていますし、保健省や教育省の大臣も次々と視察に訪れています。
システマのトレーニングをしている修道士もいます。呼吸もさまざまな方法で練習しますが、これは健康を維持する役目があり、またそれぞれの活動の助けとなるものです。スペツナズもシステマのトレーニングを行っています。

〈日本との交流について〉
私は合気道の人たちとセミナーを行いました。とても有名な師範で、今その人の名前を思い出すことはできないのですが。インターネット上に載っていると思います。彼が言うには日本の格闘技はすべて力を失ってしまった、と。そしてこのシステマだけが、日本の格闘技に携わっている人々に力を与えることができる。この言葉はインターネット上にあって見ることができます。つまり彼からはすべてを学んできていて、個人の資格として参加しているのではなく、日本人すべてが知る必要があると判断し、日本国民すべてを代表して参加しているのです。
日本人は言うなれば一つの社会集団で生活しています。我々とはまた違っているのです。日本では私についてのマンガが描かれ、物語が書かれています。日本人は非常に興味を示しています。私は今年日本で2回セミナーを行うことになっています。加えて我々のインストラクターも何度も日本に行きます。つまりほぼ毎月のように日本でシステマのセミナーが開かれるのです。さらにアメリカやカナダからも、システマを学ぶ人達たちが日本を訪れます。9月には、日本人たちが我々のところまでやって来てトレーニングを行います。つまり日本人たちは、正教にも非常に大きな関心を抱いているのです。私はそう想像しています。正教に改宗し、洗礼を受けている人もいるそうです。日本人は、信仰心の篤い民族で、その真摯な姿を私はうらやましくさえ思います。それに、秩序立っていています。こういう点が私は好きです。
(こうしたことが起こるのは)ロシアの伝統のみならず、情報を入手しやすくなったというのが背景にあるのだろうと思います。つまり、情報です。スポーツや格闘技を考えてみてください。我々が提供するものに対して、海外の人たちはまるで自分たちの文化であるかのように適応してきます。我々の呼吸に関しても、鼻から吸って、口から吐くとか。

〈システマとサムライの哲学〉
日本の格闘技は、どのようなものでしょうか。サムライの掟とは何でしょう。サムライは、仕える人のために命を落とさなければなりません。つまりサムライの掟によれば、主人を信じ、主人のために命を落とさなければならない。分かりますか。何のために自分の健康を維持するのか。それはすべて命を落とすためなのです。そこに他に何の意味がありますか。精神的な問題です。また、別の意味からすれば、どんな格闘技も、体や精神、国家、家族を破壊するものであってはならない。つまり戦うためのものであるなら、それは正しい使い方であると言えるでしょう。もし、何かを破壊するためのものであるというなら、それは間違った使い方です。
日本に話を限定するなら、日本ではいくらか学ばれてきました。けれども、日本人はどこからこういった考えを受け入れていったのでしょうか。日本は島国です。私が聞いたところでは、日本人はどこかの荒野からやってきたのだそうです。どこかの荒野から、今の場所へとやって来た。おそらく日本人は、中国から物事を受け入れていったのでしょう。信仰や漢字などいろいろなものを。それで独自の文化や文字を作り出したのです。そして、格闘技に関しても。原則的にはこれと似たものはありません。日本の人々は受容し、これを学んできました。スポーツの種類があります。柔道は畳のリンクで闘います。そういうスポーツです。さらに軍の士気というものがあります。精神は高潔なものです。理論的な精神と実践的な精神をもちろん知っています。

〈ソ連時代、それ以前のシステマ〉
(システマとは)ピョートル一世時代から続く、新しくかつ興味深いものです。たとえば、ピョートル一世の憲章を読んでみてください。当時どのような武器が家庭にあったでしょうか。たとえば猟師です。動物の体を切ることができる武器があったはずです。ソ連時代に関してであれば二回の祖国戦争について考えてみましょう。皇帝は猟師たちを集めました。猟師たちはさまざまで正教を信じている者もいれば、そうでない者もいました。けれども、彼らは別の事柄を実行しなければなりませんでした。つまり、祖国、家族、国家を守るということです。分かりますか。なのでピョートル一世の憲章を読んでください。非常に興味深い感覚に陥るでしょう。そして皇帝に関してよく知ることができます。たとえばスヴォーロフという人がいました。非常にユニークな人物でいろいろなものを作り出しました。作り出しただけでなく使い方を教え、そして彼も実際に使いました。けれども、当時、ロシア軍は、世界の軍隊組織の20%を占めていました。当時は、今のような列車や、航空機はありませんでした。では、軍がどこかへ行軍する際、どうしていたと思いますか。歩いて移動したのです。分かりますか。一日に約100kmほどになります。一日に100km歩いてみてください。興味深いことがたくさんあります。大軍でしたがロシア軍は主に農民たちで構成され残りは士官たちでした。荷物が多く、ブーツを履いていました。ソ連時代の編み上げ靴です。それで歩いて行くのです。歩き、立ち止まり、水のある場所は、裸足で歩きました。正しく歩を進めなければなりません。「うぐいす、うぐいす……」 そのリズムで歩くのです。正しく歩けていなければ関節を痛めてしまいます。また、背嚢を背負い帽子をかぶっていました。時に帽子は、弾などを入れる袋として活用されていました。なぜなら雨が降ってきた時でも、帽子の中なら乾いているためです。ですから帽子は背骨で支えなければなりません。足を正しく踏み出す時、背中などの位置がずれないようにします。背中の位置がおかしく、正しく呼吸できていなかったら、きちんとできません。そうでしょう? つまりすべてを正しく、体をすべてしかるべき位置にしておかなければ100kmを歩くことはできないのです。もし僅かにでも傾いていたら、歩いている間にどんどん影響が出てきます。

Tag:マスターの言葉 

ミカエル・リャブコの来年に向けた祝福メッセージ

来年に行なわれる一連のシステマイベントに際して、日本でシステマを学ぶ全ての人に向けて以下のメッセージが送られました。システマジャパンや大阪にも同時に送付されているので、それぞれのサイトでも公開されることと思います。

親愛なる皆さん

日本のシステマがまもなく10周年※を迎えます。皆さんがシステマとその学習に注いできた時間と努力に対して、皆さんと皆さんのご家族に個人的に感謝します。

また私は、アンディ・セファイ、大西亮一、スコット・マックイーン、北川貴英、渡辺文、ブレット・アダムスの功績を高く評価し、いっしょにこの記念の年を祝いたいと思います。私は、彼らが日本でのシステマの普及と、日本の人々にシステマを理解してもらうために行ってきたことすべてに対して心から感謝します。

この記念の年を‘Intensive Year in Japan’として、私はシステマ・ニュー・スクールのコンセプトを皆さんにお伝えするつもりです。

システマの創始者として、私は全世界でのシステマの拡大を見守っています。どんなものでも、急速な拡大の時期が過ぎると、「純粋性の試練」の時期が訪れます。そして今、私にとっての最大の関心は、インターナル・マーシャル・アーツ(内部的武術)としてのシステマの完全性にあります。私は、すべてのシステマ学習者が、現代世界の誘惑に歪められることなく、システマの本質に関する深い知識を得られることを心から望んでいます。ニュー・スクールは、私の個人的な教え子になってほしいという、すべての人々への招待なのです。

誤った噂が流れているようですが、システマ・ニュー・スクールは今まで隠されてきた新しい秘密の知識などではありません。むしろ、システマを外部的に捉え、フィットネス・トレーニングとして行ってきた人々に、その本質を思い出してもらうためのものなのです。システマ・ニュー・スクールは、自分自身の試行錯誤をシステマ全体に関する限られた知識と結びつけてきた人々や、システマのように見える外部的なワークがシステマの内部的なワークとその本質の影にすぎないことを知らないか忘れてしまった人々に対する、私からのメッセージです。

システマ・リャブコのニュー・スクールは、システマの回復であり、その起源への道筋です。本源的な知識を保持し、伝達するインストラクターたちの集合です。真のシステマ・リャブコがこれによって姿を現すのです。このシステマ・ニュー・スクールのワールド・プレミアを日本で開催できるのはなんとうれしいことでしょう。日本はシステマ・リャブコが広く受け入れられている国であり、偉大な武術の伝統を持つ国だからです。

愛を込めて

ミカエル・リャブコ

※2004年に、日本でシステマが公式にスタートしました。


Dear Friends,

It is going to be a 10 year anniversary of Systema* in Japan and I would like to thank you personally and your families for your time and efforts you put into Systema and its learning!

I also highly appreciate and believe we all together should congratulate Andy Cefai, Ryo Onishi, Scott McQueen, Takahide Kitagawa, Aya Watanabe, and Brett Adams with this anniversary! And open-heartedly thank them for everything they are doing to promote Systema and make it comprehensible to Japanese audience.

During this anniversary year which is indeed ‘Intensive Year in Japan’ I would like to share with you the New School of Systema concept.

As a founder of Systema I monitor its growth all over the world and after a period of exponential growth there is always ”purity test” coming, and now the integrity of Systema as an internal martial art school is my main concern. I utterly want to make it possible for every one of our followers to get the deep knowledge in its essence without being distorted by temptations of modern world. The New School is my offer to everyone to become my personal student.

Contrary to rumors and erroneous opinion, New School of Systema is not about some new knowledge or secrets that were hidden to date. In fact it’s a reminder to all who took the external part of Systema and turned Systema training into fitness. New School of Systema is a message to all who combined their own experiments with a limited knowledge of Systema as a whole and to all who did not understand or have forgotten that external work that looks like Systema is only a reflection of its internal work and its essence.

New School of Systema Ryabko is the recovery of Systema and the way to the source, it is the instructors who preserve and convey the original knowledge, it is the emersion of real Systema Ryabko. And it is especially delighting that we set up the World premiere of The New School of Systema in Japan! This is the country where Systema Ryabko has a wide footprint and the country with great martial art traditions!

With warm regards,
Michael Ryabko

*2004 is the year of official establishment of Systema in Japan


北川追記:
ここに名前の記載こそありませんが、裏方として次の方々もまた日本のシステマを支えて来たことを追記しておきたいと思います。

奥内一雅氏(システマ神戸)、西部嘉泰氏(システマ吉祥寺)、柴田勝成氏(むさしのシステマ倶楽部)、吉田寛氏(システマジャパン)、藤盛啓泰氏(システマジャパン)、浅野尚子氏(システマ大阪)など。特に事務方として三本木秀作(システマ東東京)さんの働きが甚大であることを、書き添えておきます。

Postscript by Kitagawa.
I hope to add the next people as the people who supported a Systema in Japan.
Kazumasa Okuuchi(Systema Kobe), Yoshiyasu Nishibe(Systema Kichijoji),Katsushige Shibata(Musashino Systema Club) ,Hiroshi Yoshida(Systema Japan),Hiroyasu Fujimori(Systema Japan) ,Naoko Asano(Systema Osaka) etcetc.. In particular, Syusaku Sambongi (Systema Higashi Tokyo) gave a splendid achievement under the surface.

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ミカエル・リャブコのスピーチ「ストライクを受ける意味」

「ストライクを受ける意味」
by ミカエル・リャブコ 2014年9月19日@インターナル・ディスカバリーセミナー

セルゲイによるストライクの受け方クラスを始めるにあたってのミカエルによる前フリトーク。

(参加者達がセルゲイにパンチを打ち込むデモを見せたあとで)
それで、相手は真剣に何度も何度もストライクを繰り出しましたが、それでも彼はまったく意識を失うことはありませんでした。相手は、強いストライクをさまざまな方向から繰り出したのですが、それはすべて規則にかなったストライクではなかったので、結果として彼は何のダメージも受けなかったのです。何も!

このあとは、セルゲイがトレーニングを担当してくれます。どのようにしてストライクに耐えるのか、どのような準備をすべきかについて、話してくれることでしょう。これはもっとも重要な事柄です。そして、打ちのめされたときに、どのようにして回復するか、ということも。

よいストライクを受けると、人は意識を失います。始めは耳が遠のいて、それから視界が狭まります。呼吸をするのも困難になります。肺にダメージを与えるようなストライクであったなら、それはなおさらです。

そこで、何もしないでいるわけにはいきません。呼吸をしなければなりません。ダメージがなくなるように、呼吸をするのです。ほかのどんな武術を試してみても、このような方法に出会うことはないでしょう。

では、どのように呼吸をすべきでしたか。「回復できるように。」そう。

このようにすれば、容易に失った力を補うことができます。これは偶然の結果ではありません。もしこういった箇所にストライクを受けたとしますね。すると呼吸ができなくなってしまうでしょう。

呼吸ができなくなってしまったら、すぐさま呼吸をし始めてください。もし、ストライクを受けて、耳が遠のき、視界が狭まったら、それは体内の酸素量が非常に少なくなっていることの表れであって、結果として意識を失うことにつながります。

「視界が消えて聴覚が鈍り、意識を失うということは何を意味していますか。それから、自分の中でどのような点に注意したらよいのでしょう。」

お分かりですか。まずすぐにできることのうちで一番大切なのは、驚かないことです。もし、打ちのめされて呼吸ができなくなったとします。なぜいつも私が、目を見なさいと言っているか分かりますか。それは、耳が遠のくと、ごく近距離の音しか聞こえなくなります。そのようになってしまった人の目をじっと見つめると、あたかも「生への執着心」のようなものがその人の中に芽生え、そこから呼吸ができるようになるからです。

分かりますか。

一撃で呼吸ができなくなってしまうということも、大いにあり得ます。すると、次に繰り出されるストライクは「とどめの一発」となりますね。

「そのように耳が遠のくとはどのようなことなのか、体験してみるのも興味深いです。」

つまり、緊張がどこへ伝わるかということです。たとえば背中に緊張が伝わったとしましょう。ここを覚えておきましょう。どのように区別してトレーニングをするべきでしょうか。もう一度。

分かりますか。トレーニングに参加しているときに、ある人のスイッチがオフになってしまったとします。そうしたら、すぐさまオンにしてやらなければならないですよね。

あるいは、意識を失ってしまったとします。

大まかにでもいいので、全体に注意を払うことを心がけてください。

○○さん、少しずつ呼吸をしてみてください。いいですよ。では、ストライクを何度か打ってみましょう。そのあと、ストライクを受けたあとにどのように耐えるべきかを試しましょう。セルゲイ、お願いします。

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インターナルディスカバリーセミナー、ミカエル冒頭のスピーチ日本語起こし

「インターナルディスカバリーセミナー。ミカエル・リャブコによる初日冒頭のスピーチ日本語起こし」

みなさん、おはようございます。よく休めましたか。みなさんトレーニングの準備ができていますか。

ということで、このセミナーは5日間の日程で行います。今回扱うのは、若干新しい分野ですね、インターナル・ワークです。アンコンタクト・ワークです。そもそも、これができるようになるためには、まずは技術的なレベルを経験しなければいけません。呼吸と技術的なレベルが体得できて初めて、インターナル・ワークのトレーニングを始めることができます。そしてようやくノンコンタクト・ワークのトレーニングに移行できるのです。

このノンコンタクト・ワークというものは、さかのぼること少し前、2003年にこれを始めました。そしてこのワークは、噴水のように次々と新しい要素を生み出しています。

実際には、これは予測的なものでもありました。というのも、今の人たちは、そのようなことができるとはもう思っていないでしょう。今の人たちの中で、それがどのような仕組みであるかを理解できている人は、もうあまり多くはないのです。

けれども、みなさんもよく知っているように、「これがノンコンタクト・ワークだ」と言って私たちと似た手法をアピールしようとした人たちがいましたが、やはり私たちの目から見れば、その人たちもきちんと理解した上でやっているわけではないのです。

その一方で、このワークを体系化した私たちもまた、これを説明することはできません。何らかの、「調整された力」によって行うものであるからです。

この点に関して、間違った理解をしている人たちもいます。この「調整された力」の存在を、私は否定はしません。もし神が「調整された力」なのであれば、これについて誰も異論は唱えないでしょう。

けれども、これだけは忘れないでください。何か、これと同じように、心のコントロールをできると言っている人たちがいますが、彼らの行動を見ていても、ノンコンタクト・ワークをしている様子は一度も見たことはありません。

私は、キリスト教の聖人のところに行く機会が頻繁にあります。その場ではいろいろなことが起こるのですが、これを知っているのは、その場に居合わせた主教と私だけなのです。神は、すべてを聞いておられるのです。けれども、主教たちは、これが神の業であるとは決して言いません。そして特別なことをして見せようとも決してしないのです。

また、彼らは現実世界の手品師でもありません。何もして見せてはくれないのです。

このような人たちは、別の世界観の中で生きています。

そして、彼らは何も見せてはくれませんし、何も語ってはくれません。つまり、今ここで話しているような人たちは、自分たちがどれだけすごいことをしているのかという自覚というか、誇りを持ってはいないのです。だからこそ、一体これは何であるのかと、さまざまな憶測が流れ、作り話さえも生まれてくるのです。

私たちのやり方は、人には基本的な、生まれながらの根本的なものがあるのだという前提で行います。この基本となるものをベースに行うのですが、それは技術的なレベルでのみアプローチできるものです。

もし我々が伝統というものに即して話すならば、……大きな音を立てないで!……つまり、もし私たちが今学んでいる伝統というものに即して話すならば、ということですが。

私たちは、古代ルーシの格闘技を学んでいますね。私たちはこれをシステマと呼んでいます。これは古代ルーシのことを学んでいるということですが、洗礼を受けた方はお分かりでしょうが、私たちには正教の伝統があるのです。システマは、すべてこの正教に由来しているのです。

つまり、私たちはここでみんな一緒にトレーニングをするわけですが、必ずしもキリスト教の伝統や根本を受け入れなければならない、と言っているわけではありません。

みなさんもうお分かりだとは思いますが、私たちのシステマを形成しているものは正教でありますが、結局やっていることは、やはりそこから生まれてきたものなのです。

もちろん、たとえば正教の考えを受け入れなかったとしても、それはそれでよいのですが、もし正教をよく知っていれば、戦闘の根本にあるものを理解し、それを自分のベースにすることがよりたやすくできるかもしれません。

次のポイントです。インターナル・ワークをするためには……つまり、なぜ私たちが呼吸やいろいろな敏感なトレーニングを推奨しているかと言うと、それは私たちの内面の状態、私たちの精神状態に左右されるものであるからで、結局その自分自身というものは、内面にのみ現れるものであるからなのです。これが、重要な点です。

さらに、インターナル・ワークは、あなたがどのような肉体状態であるかにもまた左右されます。つまり、みなさんは外的な緊張を感じ取る方法を学ばなければなりません。私たちの体には、インナーマッスルとアウターマッスルが存在しています。そしてそのうちのどれが連鎖するかによって、緊張状態もさまざまに変わってくるのです。

そして、外的な緊張は、人の神経系統を束縛します。同様に、内的な緊張も、神経系統を束縛します。

たとえばもし肝臓や胃や腎臓などの内臓の疾患があった場合、それらも同じように中枢神経系統を束縛します。

私たちが、体のどこかに不調を感じていても、実際にその部分に疾患があるわけでもないということがあります。

「ミハイル、たとえば障害者は、該当箇所はすごく痛いのでしょうか」

その質問はあとでにしましょう。あまり時間をかけていられないのでね。

つまり、以前はそのような考え方はありませんでした。だから、私たちにとってもっとも重要なことは、自分の体を感じ取れるように、そしてどの部分が締め付けられているのかを理解できるようにトレーニングすることなのです。

緊張を低減させること。そして私たちのシステマには、みなさんご存知でしょう、2本の棒を使ったマッサージの手法があります。たとえばこれを例に挙げてみることにしましょう。まず、リラックスさせるべきはアウターマッスルです。私たちのところに来ている人の中には、リラックスはつまり内的な緊張を取り除くことだと考えている人もいます。人の内臓にはさまざまな問題がある場合があります。そういうときのために、内臓をあるべき位置に正すこのメソッドが有効です。これは、あらゆる方法を試すことができます。私たちの考え方は一つであり、向かうべきところも一つです。

したがって、外的な緊張も内的な緊張も、どちらも常に「ストッパー」となるのです。つまり、ストッパーをかけられた状態に陥るのです。

インターナル・ワークを理解するためには、これらを自分自身で始めなければなりません。

つまりそれは、落ち着いた精神状態を保つこと、内臓に問題がないこと、緊張がないことです。

みなさんは感じることはできないかもしれないですが、たとえばこのようなことがあります。緊張に慣れてしまうと、すぐに緊張状態に達しやすくなります。たとえば、肝臓が縮むとします。それは、急には起こらないことです。それが、張りを失ってしまう、という状態になる。このようなことは、よくあるのです。また別の例です。人が、正しくない姿勢でジャンプをするとします。すると、着地のときにかかとに負担がかかり、背骨にも衝撃が走ります。はてなマーク「?」のような格好になりますね。

ここで、私たちが目指すものは何かを思い出してください。

無限に続けることができるような動きを目指す必要があります。

たとえば、ご覧ください。このような姿勢で立つとします。

そしてこの姿勢から何かをしなければならない。ここから何らかの動きをしようとしても、簡単にはいきません。どうにか体を起こすだけになるでしょう。

したがって、動きには、ある「最終局面」が存在するのです。

私たちもこの考えを取り入れることができます。

しかしもっとよい方法は、誤った動きについて考えることです。

それは、基本姿勢というものを考えれば分かります。ご覧ください、こういうような姿勢になっていたとして、まずはそこから抜け出さなければなりませんね、そうしてようやく何らかの動きに移行できます。

そして、さまざまな基本姿勢を見てみると、これ以上は次がないというような「最終形」がありますよね。その最終的な姿からまた動きを始める必要があります。

もし殴られて、すぐに姿勢を回復できないとします。すると、次の打撃を受ける準備ができていません。

もしこのようにしたとします。これは動きの最終形です。

その後に必要なのは、またその姿勢から抜け出すことです。分かりますか。つまり、これは常に体と精神状態をフリーズさせることになるのです。

このような姿勢で立ったとします。歩いてごらんなさい。ここからどうすることができますか。この姿勢から。そうですね、何もできませんね。

考えなければならないのは、どうやってこの姿勢になるに至ったのか、ということです。どうしてこうなったのでしょう。

人が馬に乗るという場合を考えましょう。馬に乗って進撃するときは、足で馬に出発の合図を送ります。体のフリーズ状態を解いてやるのです。そして、剣を手にして馬の上で立つ。しかしこの体の使い方は、馬がいない地面の上では役に立ちません。ですから、先入観にとらわれず、枠にはまった考え方をしないことです。

どのような姿勢であれ、それは次への動きを制限するものであります。

ですから、常に体をリラックスさせることを心がけてください。そうすれば、どのような解決策も容易に理解することができるはずです。

インターナル・ワークは、みなさん自身の状態によって左右されます。あなたがどのような状態にあるのかということに。

もし緊張していたならば、それによって動きは制限されます。

もし何らかの姿勢によって制限されていたならば、同時にそれはあなたの精神状態もまた制限するものとなります。

同様に、トレーニングも左右対称に行う必要があります。両手、両足とも使うことが必要です。それは筋肉が正しく発達するようにするためです。

たとえば片腕でだけ筋力トレーニングを50回やって、反対の腕は10回だけ、なんていうふうにしたら、ゆがんだ体になりますね。

したがって、インターナル・ワークは、内的な状態にもっとも強く左右されます。リラックスした状態で、なおかつ体と精神状態を意のままにできることが必要です。

あとは、さまざまな点にアプローチすることですね。さまざまなポーズ、さまざまな姿勢は、動物の動きから取り入れられたものです。

動物たちは、自分たちのジェスチャーで相手を怯えさせたりなどします。

だから、こういったことはすべて私たちの参考になります。

たとえば向かい合わせに立ったとして、そこに不快な感情は生まれないでしょう。あるいはオオカミのように頭をもたげて向かい合うと、そこに衝突の感覚が生まれるかもしれません。

もし誰かに動きを制限されて殺されそうになっているならば、あなたに残忍さが襲いかかります。

人が武器を持つと、残忍になり、自分から切りつけていく、という行動を取ります。

大事なことは、何もしないということです。もし落ち着いた状態で、平常心を保っていたならば、あなたに向けられた武器は、もはや武器とは言えないものになります。

ですから、今は、いろいろなトレーニングをしていくことにしましょう。最終的な姿勢にならないように努力してください。たとえば、こうやって歩いているとします。そして、立ち止まらなければならなくなった。私は腕をこのようにします。体は止まります。この動きは、体を緊張させることで止まっているのです。必要なことは、これらの仕組みを知り、それを利用することです。緊張を伴って止まっているのです。必要なときにはそのようにします。このことを利用しなければなりません。けれども、この最終的な状態を解放すれば、体は再び自由に動かせるようになるのです。

次の課題は、走っている場合です。ウサギを想像しましょう。呼吸もしっかりとします。暑くなりすぎないように、熱を発散します。

このような状態で呼吸しながらしばらく走ったとします。体も温まりますね。それで、そこから止まるトレーニングを考えます。方向転換のために、片方の腕をこのように、そしてもう片方をこのようにひねります。腕の力を使いますね。分かりますか。すると、その緊張がどのように体に作用しているかを感じることができるでしょう。そうしないと、分からないですから。そしてこの最終的な姿勢を感じて、一度体を止めて、次の動きに入ります。止まって、反対に向きを変えます。もしちょっとでも腕を使って試してみたら、この緊張を感じることができるでしょう。手首の部分ですね、分かりますか。それから肘、肩、そして上半身というふうにすると、まずは体を引っ張ることになります。つまり、ある緊張を体験することによって、どのようにそれを正しく利用すればよいのかを感じることができるのです。さらに、最終的な姿勢を作るような緊張を感じた場合は、いかに素早くその状態から抜け出すかを考える必要があります。なぜかというと、体全体が緊張すると、もとの状態に戻る必要がなくなってしまいます。しばらく歩いていて、向きを変えたり止まったりなどできますね。それは、次の動きを始めているからです。いろいろな方向を感じるのです。肝心なことは、急がないことです。戻ってきて、座りましょう。見えますか。すると体は、いち、に、というふうに回転します。元に戻りました。この動きをしている人を攻撃するのは難しいです。もし体がねじれている人が相手だったら、攻撃し放題になります。動きを使って向きを変えている人に対しては、そう簡単には攻撃できません。

原理としては、今のこのような動きは、そういった考えから生まれているのです。

けれども、この動きができていないということは、完全に体が緊張しているということです。つまり、一番重要な点が抜けてしまっているのです。

そうなった場合、何が起こるでしょうか。体の個別の部分しか使っていませんね。ここで必要なのは、体全体を働かせることです。

では、ウォーミングアップをしましょう。またあとで続きをお話します。



提供:システマ東京 日本語訳:福田知代(セラピオン

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ミカエルセミナー、無事終了&語録

システマジャパン主催のミカエル・リャブコセミナーが無事終了しました。

参加者は総勢200名。
ミカエルはその全員に直接パンチを入れ、手をとって教えました。

ほんの数十秒の個人指導で、参加者たちの動きが続々と変わって行くのは見もの。
今後のトレーニングが大きく変わるのではないかと思います。

1日目は最初にブリージングについての丁寧な指導があったあとに、回復の方法などを学びました。
午後はミカエルによるストライク。前参加者相手に平均3発ずつくらい打っていたのですから大変な数です。

2日目は武器の使い方など。
武器の重さに乗って動く動きを丁寧に。拳もナイフもスティックも同じ、ということ。
少ないメニューを今後の練習でさらに深めていけるような、方向性を教わったような気がします。

また月曜夜に予定されていたザイコフスキーのクラスでは、ミカエルが飛び入り参加。
呼吸がもたらす効果やナイフディフェンス、インストラクターのあり方などなど、これもまた貴重な教えがいっぱいでした。

以下、参加者たちが寄せてくれたミカエルからのアドバイスを掲載します。
他にも思い出した方がいたらお寄せ頂ければ幸いです。

「回復の方法知らないなら、武術はやらない方がいいのです。」

「武器は自分の手の延長です」

「悪い男性には、何かが必ず邪魔しているものです」

「自然な力には、すごい力があるのです」

「息を止めて血圧が上がることにより、血流が良くなります」

「1〜15回のプッシュアップ、スクワットをやった後。骨から暖かさが伝わり、内部から暖まります。代謝が上がり、新しい血を蘇生し、健康に良く、万病によい影響があります。」

「エクササイズをすると、身体の内部から熱が生まれます。暖房などで外部から暖められるのとは違います。この内側からの熱が身体を健康にし、病気を癒すのです。」

「皆、筋肉が違うから、動きが違います」

「ゆっくりと動くと神経に良く、いきなり出す動きは神経に悪いのです」

「バーストブリージングをしながらのプッシュアップ、スクワットは、身体のすべての動きにスイッチを入れます。ダメージ回復やスタンバイの時に使うのに良いです」

「SEXの前に踊る人はいませんね? まっすぐ女性のいるベッドに飛び込むでしょう。武道も同じです。A点からB点つなぐ最短距離は直線です。だからまっすぐ動けばいいんです。打つ前にかまえたり踊ったりする必要はありません」

「相手を倒す意識を持ってやってるのですか?」という質問に対して、
「全くありません。自分が(武術とか)のプロだったら必要ないでしょ? 自分の知ってる動きをするだけ、そこに意識や感情はいりません。漢字の勉強する時、書けないからといって怒りの感情とか必要でしょうか(笑)?」

「相手に触れてる時、手がプルプル(小刻みに)揺れてるのは何故ですか?」という質問に対して。
『視覚的効果がまずあります。心理的効果も』
「身体には影響を与えてないんですか?」
『筋肉に影響を与えたりもします。』
「例え参加者が多くても全員の事をちゃんと見ています」

「今私がやったように皆さんが出来るようになれればいいですね。後ほんのちょっとですよね」

「何故そんなに緊張してるのですか? 人生つらいですか?でも大丈夫。必ず出来るようになります」

「自然な動きをすれば、相手に勝ち目はありません」

「私はできるだけ参加者に見本を見せてもらうようにしています。なぜなら私は誰でも出来るということを見せたいのです。私だけが特別であると思ってもらいたくないのです」

足と手で数字を書くワークを指示したあと、「数字を書くのもよいですが、自分の名前も書いてみて下さい。名前は世界であなただけのものだから、あなただけの動きになります」

「赤ちゃんは力を使わなくても本能でそれができます。大人は頭で考えすぎてしまうのです。」

「デモを見続けますか? それとも自分でやってみますか?」

「インストラクターは生徒の要望に応えすぎてもいけません。弱いインストラクターだと思われることになってしまいます」

「ミカエルはロシア正教を信仰していますが、ソ連時代は信仰を禁止されていました。どうしたんですか」という質問に対して。
「私たちは70年間(!)信仰を禁止されていました。その間、ずうっと心の中で信仰を保ってきました」

「私はセミナーで約千発もストライクしました。みなさんはどうでしょう? 20回? それとも50回? こういうことを意識することで大きな違いが生まれます」

「通常の体温や脈拍はいわば宇宙の摂理です。あえてそれを高めたとしても長続きはしません。システマの特徴は、この通常の状態が持つ力を使うという点にあります」

「やるべきことは、自分自身を高めることです。」

「なぜシステマをやると心地よくなるのか? それはシステマの動きが自然の原理に叶うものだからです。そういう動きをするとエンドルフィンが分泌され、心地よさを感じるのです。」

「システマのDVDから多くのことが学べます。毎日と言いません、一ヶ月に一度、一年に一度見直してみてください。自分が成長していれば、新しい発見があるはずです。見ることで8割は学べます。私は言葉が分からなくても、(他の国の)武道でも見ていれば学べます」

「言葉を再現(表現だったかも)するのではなく、動きを再現してください」

「ある人は『断続的に5年間練習をしています」と言いました。でもおそらく月に2回〜3回くらいでしょう。1回2時間としても月に数時間。一年間でも5日ぶんくらいでしょう。そのペースでは5年といってもほんの数十日です。それを5年間と言ってしまう事に問題があるのです。」

「私がシステマを教えるのは、求める人が居るからです。そのためには自分も向上する必要があります。
私が絵描きだったとします。もし誰も私の絵を欲しがらなかったら私はそれを続けるでしょうか? 誰でも出来ることをしてください。得意なことをしてください。」

「私は毎月モスクワで違うことを教えています。毎回、同じことをしているわけではありません。このままでは、日本との差が広がるばかりです」

「私は何年も日本車を愛用しています。私は自動車は日本製が一番だと思っています。日本が素晴らしい自動車を提供する代わりに、私たちは素晴らしいロシアの文化を伝えるのです。これはとてもバランスのとれた良い関係と言えるでしょう」

「身体をニュートラルな状態に保つことを推奨する武術はシステマの他には私の知る限り合気道しかありません」

「私の身体には小さな切り傷がたくさん残っています。私も完全にコントロール出来るわけではないのです。」

「今回、インストラクターになった人たちは、自分を推薦してくれた人の縁を切らないように」

「インストラクターには、できないことは出来ない、知らないことを知らないという勇気が必要です」

「武道の先生の中には、自分ではやらないで口だけで説明している人たちもいます。もし、私が口だけで説明していたら、どうでしょうか。きっとクラスの最後には誰もいなくなってしまうでしょう」

「インストラクターは自分の生徒たちを、自分の力を証明するための道具にしないでください。あなたがワークから学んだこと、それが全てなのです。時には挑んで来る人もいるでしょう。中には本物のナイフで挑んで来る人もいるかも知れません。彼らは学びに来たのではありません。そんな人に対して何ができるでしょう。殺してあげれば良いのでしょうか。それでは殺し屋を増やすだけです。練習の度に牢屋に入ることになってしまいます。それを適切な練習と言うことはできないでしょう」

「また、戦争ごっこが好きな人達もいます。彼らは小さな頃に戦争ごっこをやりたりなかったのでしょう。でも私は彼らの親でも乳母でもありません。その相手をする必要はないのです」

「セミナーで学んだことをぜひフェイスブックやブログなどで発信してください。そうすることで、より多くの人に恩恵を届けることができます。(ミカエルは毎朝ザイコフスキーに翻訳させてウェブをチェックしているそうです)」

「ロシア科学アカデミーで、ある実験が行われました。二人の強化選手が用意され、一人は私(ミカエル)、もう一人には、スポーツのトレーナーが担当としてつき、1時間ハードなトレーニングをさせたのです。その結果、トレーナーがついた人は練習後、80%もバイタリティが落ちたのに対して、私が担当した人は逆に80%、アップしていたのです。」

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ミカエルセミナー前夜の言葉覚書

ミカエルセミナー前夜の夕食の時に色々と質問することができました。
おそらく皆にも参考になるかと思いますので、シェアします。

・指導について
―モスクワ本部で行われるセミナーでは、ミカエルはクラスの最中に会場から去りました。その間、皆が試行錯誤しどんどんレベルアップしていく事に驚きを感じました。こうしたことを計算したうえで、席を外したのでしょうか?
「そうです。私がいなければ、自分で考えなくてはいけませんからね。あと、皆ならそれができるという信頼を示すためでもあります」


・チームワークについて
―戦場のような混乱した状況でチームワークを保つのはどうしたら良いのでしょうか?

「リーダーが必要です。混乱したチームを束ねるのです。混乱しているのですからチームワークだけではやっていけません。明確な指示を下し、自分に注目させるリーダーが必要なのです。」

―混乱した状態で自分に注目させるにはどうするのでしょう?

「(手にした箸でお皿を叩いて、その場の皆の注目を集めてみせて)学校の先生と同じです。混乱している子供達に注目させるのです(笑)」


・上達について
―シャーシュカのドリルから非常に多くを学びました。ミカエルもまたそのようにして学んだのでしょうか?

「教わる、というのは特定の誰かに学ぶ、ということでしょうか。私の場合は色々な経験から学んできましたので、特定の誰かの教えだけ、ということはありません。システマとは愛の営みのようなものです。誰も学んでいないのにできるでしょう?(笑)」

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ミカエル・リャブコ インタビュー 【後編】

前編と同じく「MEIBUKAN MAGAZINE No9」に掲載されたものです。翻訳&転載許可を与えてくれた執筆者のケビン・セコアーズと翻訳者のTさんに感謝です。
前編はこちら

「ミカエル・リャブコ インタビュー 後編」


Q.あなたはしばしば「システマの秘密は、それが心理的、肉体的、霊的レベルなど人間のあらゆる段階を取り扱う、まさに『システム(体系)』であることだ」とおっしゃいます。では、システマを完璧な武術であると考えるあなたの目に、それを一心に修行するのではなく、一部の概念やアイデアだけを借用しようとする人々はどのように映りますか?
A.(リンゴを手に取り、それをシャツで磨いてから)「システマは、このリンゴのようなものです。わたしは隠し立てせずに、このリンゴを世界中の人々に提供しようとしています。全部食べなさいと勧めています。このリンゴがどんなに良いかも教えています。このリンゴが私に何をしてくれたのか、リンゴを食べる人に対し何をしてくれるのかも話しています。それでもまだ一部の人は、少しだけしか齧ろうとしません。そういう人に対し、私は何ができるでしょうか?彼らは、それを選んだのです。私はと言えば、リンゴは丸ごと食べるのが好きですけどね。」(笑)


Q.ご子息が最近、以前よりも頻繁にシステマを教えるようになりました。今回のサミットにも、あなたとあなたの家族と一緒にいらしています。我々のほとんどは、彼と会うのは初めてです。あなたの歩いてきた足跡をご子息が辿るのをご覧になるのは、どんな気持ちですか?
A.「息子がシステマを練習するのは、仕事で必要だからです(ダニエル・リャブコ氏はロシア軍警察の中尉)。私や私の父のように、息子はやがて成長し、システマの本当の奥深さと重要性を知るようになるでしょう。そして同時に、システマに対する彼自身の理解も深まると思います。」


Q.システマが普及するにつれて、その質が低下することは心配ではありませんか?また、教程を規格化したり、審査基準、指導基準を設ける計画はありますか?
A.(笑いながら)「皆さん、段位やレベルなどがすごく気になるのですね。でも、システマでは、そういうものは大事ではありません。本当に大切なのは、あなたが自分自身について学び、日々より良い人間になり、自分が学んだことを周りの人々と共有することです。こうすることで、システマは自分自身を守っています。正しい人々はこれを理解し、システマに魅力を感じ、練習を続けます。悪意のある人あるいは他人を傷つけることだけを考えている人は、やがて一緒に練習をしてくれる人がいなくなってしまうでしょう。だから、上達できなくなるのです。それが自然の成り行きでしょう。」


Q.システマを一度も見たことがない人に、システマを何と説明しますか?
A.「あなたがすでに言ったように、システマはケンカや戦闘だけでなく、人間のあらゆる側面を取り扱います。また、芸術的であろうともしていません。動きがしゃれているか、美しいかどうかなど気にしません。また、誰かが決めた特定の指導法に従っているわけでもありません。システマには動きのパターンも決まった型もありません。ただ、良い動きがあるだけです。私たちは皆、異なるタイプの肉体と能力を持っているので、それぞれが表現するシステマも違ったものになります。」


Q.「システマは、あなたのおっしゃる『自然な動き』というものが基本です。多くの人はそれを、自分でする動きはどれも自然である、という意味に捉えるかもしれませんが、それはあなたが意味したことではないですよね?この点をもう少し詳しく教えて頂けますか?
A.「私たちが言う自然な動きは、人がリラックスして、緊張のない状態で出る動きを意味します。もちろん誰もが違った動き方をします。システマを練習すると、自分自身の自然な反射的動作に気付きます。まず、気付くことが最初の一歩です。そして次に、リラックスする方法を身に付けることにより、自分独自の反射的動作をより優れたものにする練習を始めます。」


Q.戦いや危機的状況でリラックスする方法を学ぶ際のカギとなる要素は何でしょうか?
A.「大切なのは、システマの基本原則です。特に、呼吸がすべての基礎です。子供の時、私たちは誰もが完璧に呼吸をする方法を知っています。が、この世に出ると、ショックやストレスと出会います。それらが私たちの呼吸する能力を奪うのです。システマでは、ストレスや恐怖に晒された状態で呼吸する方法を生徒に教えます。他の事はすべて、その後に学びます。正しい体の形と姿勢も重要です。前屈みでいたり、立ち止まっていると、体のバランスを崩し、筋肉に緊張を加え、それらの結果として、サイキ(心、気、精神)を不安定にしてしまいます。正しい姿勢とは、すべてがなすべきことをしている状態です。骨格は身体に構造を与え、筋肉はリラックスして必要な時だけ力を出し、関節は緩んで、しなやかです。
 人はしばしば呼吸を機械的なものだとみなし、胸上部や下腹部で行う呼吸法を習得します。しかし、呼吸はそれだけではなく、もっと生理学的なものなのです。呼吸をすると、血液が酸素で満たされ、力と持久力が増加します。システマでは、呼吸によりリラックスし、パワーを増強し、自分自身を癒す方法を学びます。これはとても重要です。歳をとるにつれ上達するようなトレーニングをするべきです。」


Q.システマの打撃力は非常に有名です。呼吸は、強い打撃力を養うカギですか?
A.「リラックスすることが、とても大切です。緊張や悪意、自意識は、打撃からパワーを奪います。もし自分の心と体をコントロールできないのなら、攻撃してくる人をコントロールできるようには絶対になりません。呼吸と姿勢も大事です。システマのストライクに秘密はありません。実際は、とても簡単なのです。力学的構造をうまく使うことと、もともと設計されている通りに身体を動かしてやるだけです。緊張があると身体を統一して使うことができません。逆にリラックスしていると、身体のすべての部分がそれぞれなすべきことをできるようになります。」


Q.システマには武術的応用以外にも効用がたくさんあります。しかし、武術的側面に比べ、健康法としてのシステマに興味を抱く人が少ないのに驚きませんでしたか?
A.「健康法としてのシステマへの興味も高まっています。システマは最初、軍隊で訓練されていた格闘術であることが話題になりました。しかし、今では健康法として学ぶ人が増えています。私たちは最近、システマ呼吸法に関する本を出版しました。システマ呼吸法は、ロシアでの科学的研究に基づいており、国内では疾病の治療に使われています。システマがロシア国外で紹介されたのは、まだ最近のことです。新しい生徒たちは日々、呼吸法が日常生活にもたらす素晴らしい効能に気付いています。呼吸法だけでもやりがいがあります。新しいものは何でもそうですが、正しい評価が広まるには時間がかかります。もっともっと多くの人が呼吸法から利益を得るようになれば、その評判も広がるでしょう。私はただ、自分の知識を他の人々と分かち合える立場にいることに感謝するのみです。」


Q.システマのクラスでは普段どんなことをしているのか、読者に簡単に教えて頂けませんか?
A.「練習の内容は、いつも違います。基本の準備運動から始まる時もあります。システマ特有のエクササイズがたくさんあり、その中には、サイキ(気、心、精神)と肉体の準備を整える呼吸法も含まれます。プッシュアップや抵抗を使った運動、自重を使ったトレーニングなど肉体的に激しいワークをする時もあります。生徒が、自分の体を制御する能力を改善し、感覚を鋭くできるようにしてやることが大切です。次に、プッシュやストライク、掴みや武器に対して身体が自然に反応できるようにするための訓練を行います。生徒は自分の反応に気付き、それらを修正するためにゆっくり動きます。模範演技をする場合、指導者は原理を説明し、その応用をたくさん見せます。しかし、生徒が特定のテクニックを真似するように求められることは決してありません。むしろ自分のやり方で実験や練習をすることを勧められ、インストラクターはその手助けをします。そして慣れてきたら、接触と抵抗を導入します。このように、どのクラスもゆっくりと簡単なことから始まり、上達するにつれ実戦的になるので、まるで生徒の上達過程をそのまま映し出しているかのように見えます。」


Q.多くの人があなたの能力に驚嘆します。私は今までさまざまな武術のたくさんの名人達人に教わったことがありますが、それでもあなたの持つ知識の量とそれを他の人々と分かち合おうとする積極的姿勢には、いつも感銘を受けます。あなたの能力は何によってもたらされたものですか?
A.(笑いながら)「潜在能力は誰にでもあります。私のスクールに入門した人は皆、私よりずっとうまくなる能力を持っています。システマはその点、とても効果的です。私は単に、私が生徒に教えるのと同じ基本原理を守り、それを一途に練習しているだけです。私の持っている力はどれも、できる限り正直で、誠実な人間であろうと努力していることから生まれています。そしてもちろん、神が私にシステマを学び、教える機会を与えて下さったからで、私はそれに本当に感謝しています。すべては、善き人であることから始まります。後のものは自然についてきます。」


Q.10年後、システマはどうなっていると思いますか?
A.「神が望んでいらっしゃるのであれば、現在同様、成長し続けているでしょう。このシステム(体系)はあらゆる人の役に立つと思います。」


Q.システマの最高指導者を務め、挑戦に直面し続けることにプレッシャーを感じたことはありますか?
A.「私はいつも、自分が知っていることを人と分かち合いたいと思っています。私は他人と競ったり、人の上に立とうと思っていません。私とあなたは今日、一緒に練習しました。その時、あなたは接触(打撃)を経験しました。でも、けがはしませんでしたね。むしろ、自分自身の肉体と潜在能力に対する理解を深めました。それは私があなたを負かそうとしなかったからです。私は単にあなたに対し何ができるかを見せただけなので、あなたは今、良い感情しか持っていません。悪意はないですよね。」


Q.まったく、その通りです。では、そうした謙遜の気持ちで状況に臨めば、戦いのプレッシャー自体を消すことができますか?
A.「自負心は確実にプレッシャーを高めます。私は生徒と練習する時、最善を尽くします。例えばある日、ナイフで切られてしまったとしたら、私はもっと一生懸命練習しなければ、と思うでしょう。もし神がその時に私の命を取り上げず、学び続ける機会を与えて下さるのなら、わたしはその機会を掴み、全力を尽くすでしょう。(笑いながら)事実、私はナイフで切られた経験があります。」


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聞き手のケビン・セコアーズは、ヴラディミア・ヴァシリエフ氏に認定されたシステマ・インストラクターであり、モントリオール・システマ・アカデミーの主宰者。世界のシステマ・ファミリーの統率者であり、ヴラディミア・ヴァシリエフ氏の師であるミカエル・ヴァシリエヴィッチ・リャブコ氏とのインタビューは、2006年8月6日に行われた「サミット・オブ・ザ・マスターズ」の際に行われた。



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ミカエル・リャブコ インタビュー 【前編】

MEIBUKAN MAGAZINE No9」に掲載された、2006年夏のインタビューです。
翻訳&転載許可を与えてくれた執筆者のケビン・セコアーズと翻訳者のTさんに感謝です。

「ミカエル・リャブコ インタビュー 前編」

 ロシア武術システマが、ロシア国外に初めて登場したのは1993年だった。しかし、その後、システマはまるで世界を侵略するような勢いで普及していった。カリスマ性と達人技を持つ元ロシア軍特殊部隊隊員、ヴラディミア・ヴァシリエフ氏が先頭に立ち、システマは国際社会にその根を広く深く伸ばしていく。だが、システマは他の武術とはあらゆる点で異なり、革新的であり、非伝統的な戦術を特徴とすることから、たちまち疑いの目で見られ、議論の対象ともなった。旧ソ連軍で長い間、極秘に用いられてきた武術であるという過去も、そうした理由の一つだ。それでも、その実践性への評価は広まり、瞬く間に一流武術家から初心者まで大勢が、この驚異的な武術の力を自分自身で確かめようと集まってきた。
(聞き手 ケビン・セコアーズ)

 多くの名人達人と同じく、ミカエル氏の外見からは、彼の卓絶した技と今日の彼を作り上げた特別な経験を窺い知ることはできない。ミカエル氏は1961年、ロシアのベラルーシに生まれた。わずか15歳でロシア軍特殊部隊に徴兵された当時の彼は、今とはまったく違う引き締まった肉体を持つアスリートだった。現在のがっちりした体格と幸せそうな笑顔は、精鋭部隊の兵士というよりは優しい叔父を思わせるが、ミカエル氏は最近までロシア軍特殊部隊の現役の大佐だった。彼は、人質事件から秘密軍事作戦までのあらゆる危機的状況を生き抜いてきた経験を持ち、ロシアの法務大臣の個人的アドバイザーも務めたことがある。しかし、ミカエル氏は今でもトレーニング用マットの上では、ずっと小柄な人間と同様の反応速度と優雅な動きを見せることができる。だが、こうした目に見えるものよりも、彼の弟子の心に長く残る印象を与えるのは、ミカエル氏の謙虚さと寛大さである。

*   *   *

Q.なぜ武術の練習を始めたのですか?
A.「私の父は、筆舌に尽くしがたいほどの技を持つ達人で、私がまだほんの小さい子供の頃から武術を教えてくれました。しかし、軍に入隊後、彼の教えは、私の生死を分けるほど重要なものとなりました。」


Q.どうして軍隊に入ったのですか?
A.「ヒーローになりたいか?女の子と出会いたいか?と言われたからです。もちろんでした(笑)。しかし、入隊してみると、女の子はいないし、誰もが私をボコボコにしようとしているかのようでした。いや、まじめな話をすると、国を支えるのは国民として私の義務であると思ったからです。他の兵士が入隊するのと同じ理由で入隊しました。何も特別なことはありません。」


Q.武術を始めた時、そのトレーニングによって自分がどのようになるのかという予感はありましたか?
A.「まったくありませんでした。私の唯一の目的は、生き続けることでした。生き残るために練習したのです。トレーニングが上手くなったのは、ただ生きていたかったからにほかなりません。」


Q.初期のトレーニングはどんなものだったか説明して頂けますか?
A.「それは厳しい、とても乱暴なものでした。私たちには、はっきりと決められた目標があり、成功することを求められていました。それで、私たちは、そのために必要だと思うことをやったのです。」


Q.そのトレーニングの詳細を教えてくれませんか?
A.「よく同じ質問をされます。皆さん、私がどんな訓練をしたのかを知りたがりますね。まるで、それを知れば、私が今いる境地に辿り着くための完璧な行程表を手に入れられると思っているかのようです。だが、トレーニングとは、そういうものではありません。上達の過程は、人それぞれなのです。人は、自分の現状や、必要性、置かれた環境などに応じて練習すべきです。私が自分の練習で、あることをしたからというだけで、それが必ずしも正しいという訳ではありません。私たちは皆、やれと命令されたことや、その時に一番良いと思ったことをやります。だが、誰もが誤りを犯します。私よりもずっと厳しい練習をした人が大勢いるのは間違いありません。また、戦争で偉大な英雄だった多くの人々を私は知っています。でも、私は英雄ではありません。ただ運が良かっただけです。すべては神の思し召しです。」


Q.その頃からトレーニングのやり方や内容は変わりましたか?
A.「もちろん私の現在の目標は、昔とは違います。その一方で、今でもプロを教えることには深く関わっています。警備要員や警察官、軍人が、毎日のように私の所へ入門してきます。彼らは私の評判を聞き、私が彼らと同じ状況で働いた経験を持っているので、私のもとにやって来るのです。彼らは、私の言うことが単なる意見ではないことを知っています。私が彼らに何かを教える場合、それは、それが私と私が関わったチームの役に立ったからです。もう一方で、私は多くの民間人も教えています。システマは、大人も子供も学べるとても門戸の広い武術です。戦い方を教えるだけでなく、自分自身をさらに強くし、肉体的、精神的そして心理的に守る方法を教えてくれます。」


Q.ご自身の練習はいかがですか?今は日常、どんな内容のトレーニングをしていますか?
A.「私は動きの研究にかなり重点を置いています。いつも人がどのように動くのかを研究しているのです。私たちの肉体は絶えず変化しつつあり、私たちの肉体の働きも日々、それに応じて変わっています。私は現在、モスクワにある自分のスクールや世界中の国々でたくさんの生徒を教えています。でも正直に言うと、根は大変な怠け者なんです(笑)。練習よりも食べることの方が好きなのです。でも、優秀な人たちが訪ねて来て、私に正直な質問をします。私はこれまでの経験から、彼らの問いへの答えを知っており、また彼らを指導する義務も感じています。私にとってシステマは、自分一人で独占するのではなく、他の人々と分かち合うべき価値のある存在です。」


Q.システマについて多くの誤解があるようです。例えば、ある人々は、システマは、ロシア以外の武術や格闘術に対抗するためのものだと誤解しています。
A.「言い争いをしたがる人はいるでしょう。物事をセンセーショナルに取り上げるのは人の性です。システマの本質はロシア正教にあり、正教がシステマに与えている影響は良く知られています。正教がシステマの普及を助け、その活動を推進しているのは確かですが、私たちは生徒に特定の信仰に改宗することを求めてはいません。システマのインストラクターと生徒は、さまざまな経歴や信仰を持ち、その中には男性も女性も、若者も年配者もいます。私たちが認可したインストラクターたちを見れば、彼らがどれだけ多様であるかがわかるでしょう。システマは、神から世界中の人々に贈られた賜物なのです。」


Q.恐らく、システマについて最もわからない部分の一つに、サイキック・エネルギー(気の力)の役割があると思います。これが何を意味するか読者に説明して頂けますか?
A.「私たちはトレーニングで、パートナーのサイキ(心、精神、気)に関わる事柄について言及する時、この用語を使います。これは単に、肉体的と無関係の事柄を意味します。ここ(カナダなど欧米諸国)では、サイキック・エネルギーが違う意味を持つのは理解していますが、私たちは何も魔法や神秘的なことを言っているのではありません。例えば、ボクシングで、一方の選手が他方にフェイントをかけ、実際にパンチを出さずに他方をのけ反らせた場合、これは相手を肉体的接触なしにコントロールしたことになります。こうすることで相手は、他の部分への攻撃に対し脆弱になります。これが相手のサイキをコントロールしているということです。別の例をあげましょう。あなたが車で高速道路を走っている時、他の車にぶつからずに自分の車を運転できたとしたら、それもサイキック・ワークの一つの形です。追い越しをかける時、他の車がいることかどうかを確かめるために、いちいちぶつかる必要はないですよね。それは、あなたが他の車の存在を感じ、パーソナル・スペース(個人的領域)を直感的に維持できるからです。人は毎日、意識せずにサイキック・エネルギーを使っています。システマでは時々、恐怖や恐怖に対する反応が戦いの中で果たす役割を利用しているだけです。」


Q.実戦では、どんな応用があるのですか?
A.「応用はたくさんあります。例えば戦いを避けようとする場合、どう自分の体を位置させるのか、どう手を動かすのかが大きな役割を果たします。どんな言葉を使い、どのように話すのか、そしてどのように呼吸し、どう目を動かすのかさえ、戦いを避けるのか、それとも進んでやるのかの違いを生み出します。私たちが、学んでいるのはこうした事です。私たちのほとんどは、普段の生活で毎日攻撃を受けることはないでしょう。でも人ごみや混雑した道を通らなければならないことはあると思います。接触しないで動くことを学べば、自分の体をもっと上手に制御し、相手を攻撃することなく状況を切り抜ける方法を身に着けることができます。これは健康に良いですし、精神を穏やかにします。誰彼かまわずぶつかっていると、いずれ多くの攻撃を引き寄せ、目を向ける先どこででも戦うことになるでしょう。もちろんサイキック・ワークは、システマのトレーニングのほんの一部でしかありません。」


Q.多くの人々が、あなたの「触れずに倒す技」の動画をインターネットで見て、超自然現象だと信じたり、あるいはインチキだと思ったりしています。そうした人々に対して何と言いますか?
A.「トレーニングの目的は、生徒を強くすることで、弱くすることではありません。戦いに備えるためには、接触と抵抗を絶対に経験する必要があります。何なら、私と練習したことのある人に聞いてみて下さい(笑)。接触を経験したはずです。しかし、いつもそうした練習をするのは体に良くありません。やがて肉体を疲れさせ、痛めることになるでしょう。誰もが、ボクサーが実践的な練習をしていることに尊敬の念を抱きます。それはボクサーが、彼ら自身の考える戦いというものを理解しているからです。ボクサーたちは戦う時、実際に叩き合います。しかし、それは実は彼らのトレーニングのほんの一部なのです。ボクサーのトレーニングはほとんどの時間、リングの外で行われます。走ったり、縄跳びをしたり、フットワークやシャドウ・ボクシングの練習をするのです。スパーリングをやる場合も、しばしば非常に軽くやります。ボクサーでさえ、いつも全力でやるのは不可能なことを知っています。サンボの選手も同じです。彼らは床の上を一緒に転がりながら、関節技や押さえ込みを練習するためお互いに隙を与え合います。相手の骨を折ってやろうと、いつも全力を出している訳ではありません。お互い壊し合っていたら練習が成り立たなくなるからです。例えば、あなたが受け身を学ぼうとしているとします。慣れるまで、自分の前に椅子か何か他の障害物を置いて、それを飛び越える練習をするかもしれません。でも、そうした障害物を思いっきり投げつけられたり、車から飛び出したりする必要はないでしょう。私たちがやっているのは、これと同じです。もっともスポーツをやるつもりはありませんが。私たちが対象としているのは、日常の出来事や路上で遭遇するかもしれない攻撃です。私たちは時に、安全にかわすことができる程度のゆっくりとした速度でストライクを出すなど、練習相手に脅威や障害を与えます。相手に、攻撃とそれに対する自分の反応をじっくりと観察する時間を与えるのです。この練習は、自信を育て、動きを研究する助けになります。もちろん、これは私たちのトレーニングのほんの一部分にしかすぎません。システマを完全に理解する最良の方法は、私たちと一緒に練習し、それを直接感じてみることです。



後編はこちら

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セルゲイのシステマ語録(11月5日追記)

※11月5日、一部追加しましたー。

大盛況のうちに終わったセルゲイ・オジョレリフ東京セミナー。
質疑応答の一部をメモしたものを参加者がFBにアップしてくれたので、まとめて転載させてもらいました。他になにか印象に残った言葉などがあれば、お知らせ頂けると嬉しいです。Aさん、Sさん提供ありがとうございます!

〈セミナーを始めるにあたって〉
・生きている人間が死体と違うのは「動いている」という点です。今回のテーマは「動き続けること」ですが、動いているということはすなわち、生きているということなのです。

〈逸話〉
-格闘技で制圧したのではなく、コンタクトワークで状況を納めた例

・ミカエルがロシアで飛行機に乗っていると、酔っぱらい客がいて他の客を順に殴り始めた。(通訳の人:ロシアっぽい話ですね)他の客は関わらないように見て見ぬ振りをした。
こういう場合でも酔っぱらいを殴って押さえ込むと、飛行機を降りた後に逮捕されることになる。
ミカエルは暴れる酔っぱらいに近づいて落ち着かせると、椅子に座らせて寝かせてしまった。

・ミカエルがある見知らぬ男に近づいていって、「やぁ」と肩に手を置いた。すると男は去っていった。
一年くらい経ってから、その男は実はミカエルを殺しに来たのだとわかった。しかし、男はミカエルが肩に手を置いた時に全てを理解して、あきらめて去ったのだと話した。

・セルゲイがミカエルの家に遊びに行って、一緒にテレビで体操を観てた時のこと、ある選手が見事な演技をしたので、セルゲイが「これこそシステマのキープムービングではないか?」と尋ねたら、ミカエルは「とんでもない」と一言。その時にミカエルが見せた動きがあまりに凄かったのだとか。それを見たセルゲイは「自分はまだまだシステマをわかってなかった」と感じたセルゲイはそれ以来、システマ本部ジムに通うのをやめ、学び方そのものを変えたのだそうです。

〈質疑応答〉
Q:コネクトしやすい相手、しにくい相手はいますか?
セルゲイ:います。テンションが強い相手ならコネクトもしやすいです。

Q:相手が多数でもコネクトは可能ですか?
セルゲイ:可能です。もし相手が5人だったとしても、自分が機関銃を持っていれば相手をコントロールしすいでしょう。

Q:相手にコネクトしている時はなにを考えていますか?
セルゲイ:相手をコントロールすることです。

Q:練習ではなく、実際に戦う場合には、どうしてもテンションが入ってしまうと思いますが…。
セルゲイ:あなたが戦う目的はなんですか? 目的によって変わってくると思います。

Q:セルゲイさんの体格を作ったのはシステマのトレーニングだけですか。それともケトルベルなどの器具も使っていますか?
セルゲイ:この体格は子どもの頃からです(笑) 筋肉についてですが、誰かがすごい筋肉を持っていてもそれは他人のものです。他人と比較はしない方がいいでしょう。

Q:セルゲイさんはシステマを練習する前は空手をやっていたそうですが、それはシステマの障害になりましたか。
セルゲイ:なりました。空手では攻撃的なやり方をしますから、そのやり方を切り替えるのには時間がかかりました。

Q:システマの練習の時に失敗したと思うと、ついテンションが入ってしまいます。また相手にテンションが入っていると、自分にもテンションが入ってしまいます…。
セルゲイ:不要なテンションは避けてください。テンションが入らないようにする良い方法は、システマの練習をたくさんすることです。

Q: モスクワのセミナーや本部に行くと、セルゲイやヴァレンティンといったマスター達が、少しだけミカエルの指導を見学して帰ってしまうのをよく見かけます。それだけでどうやって学んでいるのですか?
セルゲイ:それで十分自分に必要なものを吸収できたからです。確かに9月のセミナーに私は20分しか参加しませんでしたが、多くのことを学びました。その時に学んだことも、今回のセミナーにはかなり反映されています。それはつまり「動き続ける」ということです。ですがミカエルはすごすぎて、まだ10分の1も理解できていません。

Q:ミカエルのどういうところを見てるのでしょうか?
セルゲイ:ミカエルの謎を解くべく推測しています。

〈懇親会にて〉
・“ワーク収集家”になることを服(コート)に例えて
「色んな色のコート、色んなサイズのコートがいっぱいあるけど、どれも自分に合ってないんじゃしょうがない。
コートを沢山集めるんじゃなくて、もらったコートを、着ていく内にだんだんに、自分好みの色自分にピッタリのサイズに着こなすのがいい」

・スペツナズに関して
「スペツナズは面白いところではないよ(笑) システマとスペツナズはちがう。スペツナズは神風みたいに死ににいかなきゃいけない時がある。そこでサバイブできたらその人は全然違うものになる。スペツナズ兎に角サバイブしなくちゃいけない。」

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ミカエルから日本人参加者へのメッセージ

先日行なわれたモスクワセミナーの最終日に行なわれたパーティーで、ミカエルが日本人参加者に向けてメッセージを語ってくれました。そのスピーチの訳です。

「日本からの生徒さんは、秩序正しい良い人たちです。心を開いてくれています。つまり、あなた方と接するのは、気持ちがよいです。しかし、あなた方は……何と言ったらよいでしょうか、あなた方は信仰を持っていますね。あなた方は、みなさん、どの点においても優秀です。こういう人たちもいます――ここに、学びに来るのではなく、確認をしに来るような人たちです。そうです、確認をしに来るのです。そういう人たちに何かを教えようとすることは、とても骨が折れます。つまり、そういう人たちは、矛盾を抱いているように思えます。もし本人が何かを学び取ろうとしていないのに、そういう人に何かを教えることは、果たして可能でしょうか? とても骨の折れることです。そういう面で、日本からの生徒さんとトレーニングをするにあたって、問題は一切起こりません。

彼らは、心を開いた良い人たちです。しかし、みなさんは普段のトレーニングは日本でしなければいけませんね。覚えていらっしゃるでしょうか、ペアを組んでもらって、私が見本を示したときの様子を。あの人物は、戦地で実際に戦っていた経験を持っています。ですから重要なことは、人々に対して、礼儀正しくそして注意深くあることです。

しかし、私もまた、これから何か新たな一歩を踏み出すような場面に出会ったときは、最大限の注意を払うことでしょう。けれども、そこに自惚れがあった場合には、何もよい結果はもたらされません。ですから、そのような場面に出会うときがあったら、必要としているものを目撃しようと努力してください。あくせく動いたりしないことです。

もちろん、私から必要な情報を得られないこともあるでしょう。期待に胸を膨らませて参加してみたのに、そこで収穫がなかった、ということもありますね。どうか焦らないでください。それが人生です。それが実際です。私から、日本に対して深くお辞儀をしたいと思います。もし、日本でのトレーニングが『つつましい日々の作業』であったとしても、それはきっと日本への、日本人への手助けとなるだろうと思います。ほんの少しリラックスできたり、お互いに心を開く関係を構築できたりだとか、そのようなことです。神の御加護がありますように。みなさんにお辞儀を。日本のために、乾杯!」

P1050234.jpg日本人参加者(一部)とミカエル

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ミカエル・リャブコインタビュー「百聞は一見にしかず」

「百聞は一見にしかず」
by ミカエル・リャブコ

リャブコ、ミハイル・ヴァシーリエヴィッチ
1961年5月6日、ベラルーシ生まれ。10年以上特殊単位部隊に所属し、戦闘活動や人質解放に参加、また特殊戦闘部隊の作戦技術訓練センターでインストラクターを務めた。2002年から2006年まで、ロシア連邦法務省顧問。国内軍務大佐。2006年8月1日から現在までロシア連邦最高検事局に在籍。法務大佐、退役軍人。ロシア連邦大統領国家勲章、および内務省国家勲章受章。ロシア連邦法務大臣より、個人名を記された武器を授与されている。20年以上に渡り、全世界に門下生を持つ「古代ルーシの格闘技システマ」を主宰している。

ミハイル・ヴァシーリエヴィッチ・リャブコを初めて目にしたら、こんなに太った中年男性が、ロシアや世界のさまざまな格闘技の流派で権威として君臨している、まさにあの偉大なリャブコ氏であるとは到底信じることはできないであろう。たとえば日本では、もうすでに何冊ものコミック本が出版されているほど、彼は人気者なのである。そのコミックでは、「ミハイルさん」は笑みを浮かべながら敵対するものたちを蹴散らし、マフィアを懲らしめている。
しかし10分ほど彼と話をしてみると、ミハイル氏の戦闘能力に対する疑念は消え去ってしまう。しかもそれは、超自然的な現象を見せつけられたからではない。まして私たちは道場にいるわけではないし、何かのデモンストレーションをしてもらったからでもない。リャブコ氏は多弁ではないにもかかわらず、彼のその力を、この人物の善良な力を、今後一瞬たりとも疑うことはできなくなるのだ。

インタビュアー:アナトーリー・ミハイロフ/ 撮影:アントン・ヴォロジン

 
 -ミハイルさん、強面でいらっしゃらないことで、何か困った目に遭ったことはありませんか?

 それはありませんね。ときには、この見た目に助けられることもあります。私の信念の一つに「衝突を回避できるなら、回避せよ」というものがあります。
 あるとき私は映画を見ていて、終わりを待たずに映画館を出たことがありました。ロビーに4人組の男たちが座っていました。彼らはこう言い放ってきたのです。「おっさん、可愛がってやろうか」と。当時の私はすでにいろいろなことを経験してきていましたが、この外見ではまったくそんなことは想像だにできなかったのでしょう。私はこう答えました。「君たち、それは困るよ。僕はフルート奏者なんだ。唇が割れたら、演奏できなくなってしまうよ。」「ああ、おっさんは音楽家か。なら行っていいよ……」またあるときは、もっと簡単に事が済みました。夜、男が私に近寄ってきて、こう言ってきたのです。「あんたの顔が気に入らねえな」と。私はこう答えました。「私もね、自分でこの顔が気に入らないんですよ。」そういうわけで、争いを未然に防ぐことができました。

 -つまり、いつも衝突を回避することができたということでしょうか?

 必ずしもいつもうまくいくというわけではありません。悪意に満ち溢れている人は、そう簡単には引き下がりません。そういうときは、力を行使することになります。

 -日本のコミック「ミハイルさんの冒険」を彷彿とさせるような事件もありましたか?

 それはないですよ。あれは、映画の中のような話、陳腐な大ヒット映画のシナリオとして好まれそうですが。残念ながら、我々の道場にも、格闘技を「映画の中のような」ものと誤解してやって来る人もいます。そういう人たちは、映画のエキストラをしていればいいのです。

 -そういう人が来た場合、どう対処なさっているんですか?

 人生は映画とは違うのだ、と説明します。

 -それで理解してくれますか?

 理解してくれていると思います。我々の門下生の中から、ギャングになった人はいませんし、「自分はこんなに強いんだ」という気持ちから、力を実践の場で発揮した人はいません。

 -変なことを伺ってすみませんが、たとえば一年間トレーニングを積んだ門下生の方々は、板やレンガを何枚くらい割れるようになるものなのでしょうか?


 そういうことは、私たちは行いません。考えてみてください。板を割る、レンガを割る――そうすれば、自分が誇らしく思えますね。では、板ができるまでには、木を育てなければなりません、それを切り倒し、かんなをかけ、のこぎりで切り分けなければなりません。誰かが、これらすべてを手作業で行っているんです。かんなをかけ、のこぎりで切るという作業を。そこに何も知らずにふらっとやって来て、「えいや!」と割る。おいおい、なんでそんな真似をするんだ? 説明してみろ。そこにどんな意味があるんだ? それが何の役に立つ? レンガであっても話は同じです。誰かが焼いて作ったレンガを、また何も知らずにふらっとやって来て、「えいや!」と割る。

 -リャブコさん、「システマ」の一番の特徴はどういった点にあるのでしょうか? 他の格闘技と、どういった面で異なるのでしょうか?

 不可侵の原則についてはもうお話しましたね。この原則は、多くの格闘技で取り入れられているものです。あらゆる直線的な作用は、人間に反作用を生み出します。たとえば、ふつう、肩を小突くと、肩は固くなります。これを私たちのところでは、攻撃の動きそのままに動くように、どんな方向に繰り出されるものであっても、相手の動きを妨げないように、その攻撃が向かいたい方向に動いていけるようにしなさい、と教えます。どんな動きも、あなたのコントロールできる範囲内にあるのだということです。私たちは、相手の打撃が生み出すエネルギーを、そっくりそのまま相手に返してあげるよう教えています。相手が繰り出してきた打撃を、すぐさま復元させるのです。放たれてきた打撃の力を借りて、相手の防御の隙を突くのです。ここで、呼吸を整えること、そして呼吸をしながら動くことが非常に重要になってきます。

 -リャブコさん、ちょっといいですか。呼吸を整える、ということを聞くと、何だかオカルト的な行為を想像してしまうのですが……


 正教の静寂主義者の修道士たちは、呼吸を非常に強く意識していました。これは、人間の生理作用と精神を統一するために行っていたものです。ギリシャのアトス島でも、「システマ」が非常によく普及しています。私も何度もそこを訪れました。ただ、私たちを「正教に傾いた少林寺の密教修道士」だとか思わないでください。私たちは、イイススの祈りを実践するように教えてはいないんです。ただし、静寂主義の考えは、もちろん取り入れています。もし単に比較してみるならば、精神的な戦いの場においては、我々はただの一般兵士です。修道士たちは、これはもう特殊部隊であると言ってもいいですね。
 話は変わりますが、正しい呼吸によって、人は打撃を受けたあと、すぐさま立ち直ることができます。大事な原則の一つに挙げられるのが、息を吐くときに打撃を受ける、という技能です。格闘技に限らず、正しい呼吸は人の健康状態をよくしてくれますしね。
 しかし、全体として、基本となる原理は、スヴォーロフの言葉を借りて説明することができます。知性を常に明白なものとしておけ、それは鏡のように現実を映すものだ。理性を常に柔軟で粘り強いものとしろ、警戒心を持ち、過剰に興奮することなかれ。戦闘の緊張状態の中では、精神は相手の攻撃が発せられたとき、その攻撃が繰り出される「瞬間」に反応しなければならない。
 原則を言いますと、「システマ」の技術の中に、さまざまなスタイルの格闘技の、ほとんどすべての基本的な手法とよく似たものを指摘していくことができます。しかし、我々が扱っているものは、それらよりも範囲が広いのです。それだから、ボクサーや空手家、フリースタイルの格闘家などが我々の門をたたくのです。

 -つまり「システマ」は決定的な総合性というものを狙っているわけですか?

 そうです、だから我々は、団体登録をする際に「古代ルーシの格闘技システマ」という名称を使いました。「システマ」という言葉は、総合性とほぼ同じ意味です。

 -これまで歩んでこられた道について教えてください。

 私には、「ハリウッド的な選択肢」というものはありませんでした。「偉大な師匠」や「先代」という人に出会ったことはありません。さまざまな人に教えを請うてきました。父を真似た部分もあったでしょうし、見てきたことが影響した部分もあったでしょう。また、自分で会得した部分もありましたし、なんと言いましょうか、お告げのようなものもあったかもしれません……

 -では、道場では師弟関係はどのように構築されていますか? 私は入口のところにミハイルさんの肖像画があるのに気がついたのですが。古代ロシアの軍人が着ていた甲冑を身にまとった姿でしたね。


 よくある階級制度ですよ。ただ、私は「グル」なんかではありませんし、どんな人でも受け入れています。それに、多くの東方の格闘技とは違って、私の肖像画に向かってお祈りを捧げている人は誰一人いないと断言できます。東方では、師匠の肖像画を前にして瞑想したりしますね。よく行われている方法です。私たちのところでは、至極簡単です。自分の中に偶像を作るな、と教えています。ただ、イコンの前でお祈りすることはありますけれど。

 -リャブコさん、「システマ」とはつまり何でしょうか?

 これは人間の精神的、身体的、心理的鍛錬と教育が調和した複合体と言えます。ロシアの歴史的な精神的伝統と戦闘の伝統がもとになっています。「システマ」は、人間の身体的は成長を通して、心理的文化や精神性の発達を手助けしています。

 -生理学と心理学が相互に関係し合っていることは理解できたのですが、ここに精神性が入って来るのはどういうことなのでしょうか?

 では、逆に質問してもよいですか?

 -もちろんです。

 あなたは身を清めるために断食をすることはありますか?

 -ええ。

 そういった斎戒は、精神状態に何か影響を及ぼしますか。

 -それは間違いないことです。

 つまり、そういうことですよね。あなたは精神的なものと身体的なものが強く結びついていることをよく理解していらっしゃいます。多くの格闘技には、数千年の歴史があります。そして、戦士の力は、その身体的な力だけでなく、精神的な力にも直接に作用されるのだと理解されてきました。それだから、精神力の影響は多くの場合で決定的なものとなるのです。

 -私は、「システマ」の精神的な根本はロシア正教だと理解しているのですが、東方の格闘技の根本には何があるのでしょうか?

 もちろん、ロシア正教が「システマ」の根本になっています。正教の戦士は、告白や浄化、聖体礼儀を通じて精霊を獲得してきました。東方の格闘技に関して言えば、四段や五段までは技術の領域ですが、それ以降となるともう精神との相互関係の領域に入ってきます。ここですべてお話することはしません。忍者を例にお話します。忍者は、闇でうごめく戦闘集団です。「忍者」という漢字が持つ意味の一つに、九字の法というものがあります。これが何を意味しているかというと、忍者が型通りの動きをすると、足は同じような漢字を描くのです。その漢字は、まあそういったものと相互関係にあるのですよ。

 -なるほど。それで、ロシアでは全土で空手武術が普及していますね。子どもたちもこぞってこの流派に入っていっています。私の息子が通う学校でも、空手のクラブがあるくらいで。

 私は、イギリスでこんな経験をしたことがあります。女の子が武術の稽古をしていて、龍を前にしてお辞儀をしていました。そんな彼女を見て、私たちのインストラクターがこう言ったのです。「マリヤ、龍にお辞儀をしてはだめだ、よくないことだよ。」彼女はこう言いました。「どうして?」インストラクターが答えます。「イギリスの守護天使は誰だい?」「ゲオルギオスです。」「彼はどう描かれている? 馬に乗って、槍で何を威嚇していたっけ、マリヤ?」「ヘビです。」「そうさ。きみは、そのヘビに向かってお辞儀をしているんだよ。」「まあ。私はカトリック教徒なんです。そうしたら、道場では一体どう振る舞ったらよいんでしょう。」これはロシアでも起きる問題です。「龍の道」が示されるのです。では、この龍はどこに向かっているというのでしょう。この道とは、どのような道なのでしょう。答えは、穴の中です。下へと我々を導くのです。もし親御さんたちに「あなた方は、お子さんたちを、背景にこれこれを持つ流派に入れようとしているのですよ」と話して聞かせたとしたら、多くの親御さんたちは自分の行為を見直すと思いますよ。

 -ところでリャブコさん、システマは海外でも多くの道場をお持ちですよね。そしてそこでたくさんの外国人がトレーニングに励んでいる。彼らは、自分の信じる宗教とロシア正教の「システマ」との間で、どのように折り合いをつけているのでしょうか?


 ロシア正教は、誰かを力ずくで排除しようとすることはありません。けれど、隠すことはないので言いますけれど、「システマ」の精神的基盤は、「あなたがどんな宗教を信仰していようと、それは関係ありません」と言うことはしません。東方の格闘技がそうであるのと同じように、初級段階というのは、誰でも取り組むことのできるものです。私たちの海外支部を訪れる人の多くは、初級段階の人たちです。
こんな特殊な経験をしたことがあります。私のもとを、それまで数多くの東方宗教に携わってきた人が訪れました。この人物は私たちのところでトレーニングを始めたのですが、あるとき、道場で彼は壁から壁までを、かなり周りが不愉快になるような声を出しながら移動していったんです。それが、彼がそれまで身につけてきた流派の「名残」であることは、すぐに理解できました。私はこういう穏やかな性格をしていますでしょう……でもそのときは、もう来るなと彼に言ったんです。もしすごくやる気があるなら、まずは教会に言って信仰を告白して来い、と。

 -これまでに門下生が洗礼を受けたり、あるいはロシア正教に回心したということはありましたか?

はい、それも一人や二人ではありません。私たちのところには、格闘技の世界で誰もが知っているような人物、あるいは格闘技に全人生を注いでいるような人物がよくやって来ます。そして彼らの多くが私たちの流派に入り、門下生としてこれを続けている様子を見るにつけ、おそらく我々の流派には、他にはない何かがあるのだと思えてきます。

 -リャブコさん、私はこんな意見を聞いたことがあるのですが。「システマには独自なものは何一つない、リャブコが東方の格闘技から全部引っ張ってきたんだ」という。

これに関しては、日本人に感謝しなければなりませんね。日本ほど私を温かく迎えてくれる国は、どこを探しても見つかりません。我々は、日本にも道場を持っています。そして合気道も、空手も、私たちのことを認めてくれています。日本では、アルメニアの特殊単位部隊が我々の手法でトレーニングを行っています。日本人は、私たちのことをいろいろなメディアで取り上げてくれています。先ほど引き合いに出されたコミック本も、そのうちの一つです。でも、見ていて笑ってしまうこともありますよ。泥棒をしたりしているんですから。ここに雑誌がありますが、これは呼吸法を取り入れた古代格闘技に関する、もっとも重要なニュースを取り上げたものです。ぱっとしない古い文章の断片のように見えるでしょうが、ここには、正しく呼吸するためにはどうしたらよいのかが書かれているのです。これは、私たちのパンフレットに書かれた正しく呼吸する方法とまったく一致しているのです。
きちんと理解してもらえるよう、私は日本で「システマ」との関係性を話すときは、いつも次のように言っています。もし我々が東方の格闘技から何かヒントを得たのだとすれば、それは、日本人が最初に私たちにそれを示してくれた、ということでしょう、と。

 -これはまさに、「預言者故郷に容れられず」といったところですね。あるロシアの作家がこのように言ったそうです。「もしこの世に天才的なロシア人作家が現れるとしたら、まずはドイツの文芸批評家に評価されなければならない。そうすれば以後、ロシア国内でも天才として扱われるだろう」と。

 たしかに、その通りですね。私はドイツにも特殊単位部隊を所有していて、ロシアの副大臣と数人の特殊部隊員が、彼らのもとを訪れたことがありました。視察をし、あらゆる点が気に入ったんですね。「きみたちは、どこで訓練を受けてきたんだね?」「モスクワに留学していました、リャブコさんに習ったんです。」これを聞いて、みんな拍子抜けしてしまったみたいですよ。

 -リャブコさんは、国連にも招待されたそうですね?


 はい、去年の国連62周年のときに。我々の「システマ」が、世界のもっとも人道的な格闘技の一つに認められたんです。招待されて、報告を行いました。みなさん気に入ってくれました。格闘技の四つの団体が招待されたんです。「システマ」と、合気道と、空手と太極拳です。それぞれに30分の持ち時間が与えられて、デモンストレーションと報告をしました。あとで、私たちをアンコールで呼んでくれたんですよ。
ただ残念だったのは、海外での方が、私たちの可能性がとても大きいということです。本来ならば、「システマ」は、空手や武術に熱狂しているようなロシアにこそ必要なものなのです……しかしながら全体的にみると、ロシアでの我々の活動は、まずまずの状態と言えます。私は、警察の単位部隊やロシア連邦保安庁、内務省でもトレーニングを行ってきています。もちろん、ロシア最高検事のユーリー・ミハイロヴィッチ・チャイカ氏には、特に感謝しています。彼はいつも我々の活動を支持してきてくれました。現在では、ロシア連邦法務省、最高検事局、そしてロシア正教会も我々を支持してくれています。

 -話は変わりますが、「システマ」に試合などはあるのでしょうか?

そういった類のものは、ありません。私たちの中でも、スポーツとして審判団を作り、体育・スポーツ組織を立ち上げようという動きもありましたが……ただ、ルーシには競争というものがなかったのです。子どもたちがあまりにもヒートアップしたら、きちんと叱るということはありましたが。

-打撃戦はどうでしょうか?

かつて、戦地から帰還した兵士は、打撃戦を行ってはいけない、というしきたりがあったのはご存知でしょうか。これは単なる野郎の遊びなんです。確かに、ケンカにもいくらかの技能が必要ですし、技を盗むこともありますが、これは戦闘術ではありません。民衆のスポーツとでも言いましょうか。そこに悪意や攻撃性はありません。集まって、自らの力を見せつけ合うのです。もしかすると、そこには自己有能感が働いているかもしれませんね。ただ、すべてに言えることは、どんな競争の形態も人間にうぬぼれの意識を生み出してしまうのです。皇帝がルーシを治めていた時代には、サッカーもボクシングもありませんでした(これらが出てきたのは、ロシア革命以降のことです)。しかし、そんな中でも、もちろん軍事部隊ではトレーニングが行われていました。剣術のトレーニングも、馬上のトレーニングもありました……

 -では、試合などの概念なくして、どのように若者の興味を惹きつけていこうとお考えですか?

 私たちには競争性の原理がないために、門下生の年齢やレベルはさまざまです。想像していただくと分かりやすいですが、もし隣に違った格闘技の超専門家が一緒にトレーニングをしていたとしたら、若者のトレーニングに対する姿勢はどうなるでしょうか。
トレーニングを始めるのに、年齢的な制限は一切ありません。トレーニングを始める時期が早ければ早いほど、目覚ましく上達していきます。基本的な動きや心理的能力、技能は容易に固定され、積み重ねられていきます。もう一度申し上げますと、「システマ」は身体的に強くなるためではなく、心理的な強さを獲得することに重点が置かれています。子どもたちは、こういった特徴の基本的原理のうちの一つ――姿勢をうまく正すこと、つまり身体と心理の総合的な状態、非攻撃的な状態、非感情的な状態――をすぐさま身につけていきます。このような技能は、それだけでも未成年の段階では価値のあるものだといえます。

-ソ連時代に「システマ」というものは存在したのでしょうか? 「アポストル」という偵察員を扱った連続ドラマが最近放映されていましたね。エヴゲーニー・ミロノフが主人公を演じていましたが、彼はどうしても格闘技を習得できない役柄でした。その後、内務人民委員部に所属していた人物が、「私にはコンダコフという上司がいた」と回想します。このコンダコフという人物は、デモンストレーションを行った際に、ロシアの格闘技に熱中し、敵を次々と蹴散らしていました。彼は、「システマ」の手法を用いたのではなかったでしょうか?

私が知っている限りでは、ロシアの歴史のさまざまな時期に「システマ」の総合性が違った姿で存在していました。部分的には、「システマ」はソ連時代にも存在していました。まず、これはサンボの形態であったわけですが。もちろん、コンダコフという役の背後には、実在した人物がいたのでしょう。

 -リャブコさん、では現在の「システマ」は完成形であるといえますか?

まだまだだと思います。まだまだですよ……毎日新しい発見があります。まるで情報のようです。人は何か熟達すると、もっとうまくできるようになります。祈りも同じです。人が祈るとき、すべてを見透かせているような感覚を覚えます。そして時が経つと、結局何も理解していないし、何もできないのだと分かるのです。常にその繰り返しです。福音書でも同じことです。それを何度も読んでみても、一言一句暗唱してみても、それでもやはり無限に新しいものが見えてくるのです。でもお分かりのように、行動を伴わない信仰は意味を為しませんし、同じくシステマについての話だけではまた、これも意味を為さないのです。そういうわけですので、百聞は一見にしかず、ですね。


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・24ページ緑色の囲み
 夜、男が私に近寄ってきて、こう言ってきたのです。「あんたの顔が気に入らねえな」と。私はこう答えました。「私もね、自分でこの顔が気に入らないんですよ。」そういうわけで、争いを未然に防ぐことができました。
・25ページ緑色の囲み
 精神的な戦いの場においては、我々はただの一般兵士です。修道士たちは、これはもう特殊部隊であると言ってもいいですね。
・26ページ緑色の囲み
 想像していただくと分かりやすいですが、もし隣に違った格闘技の超専門家が一緒にトレーニングをしていたとしたら、若者のトレーニングに対する姿勢はどうなるでしょうか。
・27ページ緑色の囲み
 我々の門下生の中から、ギャングになった人はいませんし、「自分はこんなに強いんだ」という気持ちから、力を実践の場で発揮した人はいません。
・26ページ写真下の説明
 「ミハイルさんの冒険」を描いた日本のコミック本。

※本記事は数年前にこちらの雑誌にpdf版も一緒に出てたのですが、現在ページを観られないので確認できません。申し訳ないです。

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来日システマセミナー2011、ヴラディミア語録

10月29、30日の2日間にわたって行われたヴラディミア・ヴァシリエフによるシステマセミナー。

参加者の協力のもと、マスターの発言を集めています。

〈呼吸について〉

・(バーストブリージングについて)求める状態に、ひと呼吸ごと、少しずつでもいいから近づくようにする。
・バーストブリージングを過度にする事でテンションを作り出してはいけない。
・この会場のほとんどの人が完全回復できてないから気にすることないよ、トレーニングを積み重ね、自分になにが起こっているかを観察することが大事でそれをやっていけばそのうち完全回復を手に入れることができるから心配ない。
・息を吸うのは吐くよりも身体への負担がかかる。だから息を止める練習は軽く吐いて息を止めることから始め、追って吸って止めたり、吐き切ったり、吸い切ったりして止めたりする。こうした原則がわかれば、自分次第で様々な練習を作ることができる。
・システマをやっている人が事故に遭い、車の下敷きになって息が吸えなくなったが、浅い呼吸をし続けることで、救急車が来るまでの2時間を耐えた。深く息が出来なくても大丈夫。浅い呼吸を繰り返せば。例えば、ウオッカの瓶を一気飲みすれば直ぐに酔えるが、小さなコップでもちょびちょび飲み続ければ、同じだけ酔える?
・早さではない。必要な分量を必要に応じて呼吸すればいい。
・鼻での呼吸が困難な時は、鼻の頭を押し上げて鼻腔を広げるようにして呼吸すると良い。「水の中でどうやって呼吸するのですか?」と聞かれたりもするが、そうした時は「仕方ないだろう」と言うしかない。それぞれの状況でできることをやるまでだ。
・ゆっくり呼吸できない理由が無いのなら、急いで不正確に呼吸するより、鼻から吸うように呼吸しなさい。
・呼吸を止めると身体に緊張が生まれてくる。それは格闘の時に緊張し始める部位と同じだ。

〈練習について〉
・良いエクササイズをすると、身体が膨らむような感じがする。呼吸によって新鮮な酸素が全身へと運ばれるのだ。
・いい練習は疲れない。逆に体が活性化してエネルギーが増していくものだ。
・動きは常に怠けているようであるべきだ。なにせロシア人が生み出したものなのだから(笑)       ・
・デモンストレーションなどの際、あえて日常的なしぐさを見せることで、相手を緊張させすぎずに済む。
・特定の何かを見せようと意識することで、自分でもうまくいかなくなることがある。
・中身はマジメなんだけど、見た目は楽しく愛嬌をもってリラックス出来るようにやりなさい。
・システマはできないことがあっても良い武道だ。
・疲労も精神的なものだ。色々と考えると、「こんなにエクササイズしたのだから自分は疲れているはずだ」と思い込んでしまう。
・システマは男性をより男性らしく、女性はより女性らしくするものだ。だから女性が男性と張り合って、男性のようになる必要はない。
・プッシュアップはそのままストライクの練習になる。人ではなく床を殴っているのと同じだ。だから力んで自分の身体を持ち上げるのではなく、床を押すようにして行う。

〈健康について〉
・人は小さなストレスが積み重なる事で、老化してゆく。ストレスを解消していくことは、アンチエイジングになる。
・治療する人間がフィジカルもサイキも健康でないと、患者に悪いエネルギーを送り込んでしまう。指使いも間違うと、同じく患者から悪いエネルギーを吸い取ってしまう。リラックスして患者にコネクトしていないと、本来は指先を洗えば済むだけの負のエネルギーが、腕を通して体にまで伝わってくるので、シャワーを浴びなければ流せない程の強さで受け取ってしまう。
・人間は普段、前進している。これは常に未来にの方へ向いているということだ。だからあえて後ろ向きに歩く事で脳を混乱させる。その結果、脳がリラックスできて体もリカバリーしやすくなる。
・私は医者ではない。だからシステマのマッサージを知ったからといって、誰かを治しに行ったりしてはいけない。まず自分がリラックスすることだ。温かく、重い手を持つことが大切だ。
・椅子から立つ動きはスクワットだし、ベッドから起きる時に手で身体を支える動きはプッシュアップそのものだ。そのくらいの運動ならできるのだから、例えば極度の高血圧の人でもごく軽い負荷からエクササイズを始めることができる。「エクササイズ」という言葉にとらわれて、日常の動作と切り離して考えてしまうのは良くない。

〈格闘術について〉
・(テイクダウンの仕方について)Softly,softly,softly!(柔らかく、柔らかく、柔らかく!)。相手を小さな少年と思って扱いなさい。
・(攻撃を受けた際の対処について)相手を避けた自分の動きに従って動きなさい。
・ローキックかハイキックかなんて関係ない。ただの動きだ。ただ動きに対応すればいい。
・必ず両手を使いなさい。片手だけのときでも、必ず足なども使って、2カ所以上を使うように。
・肩をリラックスしなさい。何をするにもこれはすごく重要です。
・自分の体と同時に対峙している相手のどこに緊張があるか常に把握しなさい
・(相手をはっと驚かせるような仕草について)わざと緊張を作って見せると相手はそこに集中してしまう。
・テクニックで動いているわけではなくて、リラックスから動きがうまれている。
・後退する時は足の裏全体を床に着けて歩く。相手からみたら1.5倍のスピードで動いてるように見える。
・視線に関して特に決まりはない。もし見ることで恐怖心が起こるなら、目をつぶって戦ったっていい。
・目を閉じるとこれまでとは違った緊張が生まれる。私は車の運転をしながらほんの数秒だけ目を閉じることもある。
・リラックスとはただゆるむのとは違う。ギターの弦のような適度な張りが必要だ。緩み過ぎると音が出ないし、かと言ってキツすぎても音がビンビンして良い演奏ができない。
・相手が適度な距離に来るまで待つことが大切だ。焦って自分から仕掛けたりしてはいけない。

〈その他〉
・私はまだマスターではない。
・神の大きさの前なら自分のエゴの小ささを実感できる。
・とても強いとされている格闘家でも、試合で相手をめちゃくちゃにやっつけた後、家に帰って「俺は何であんなことをしてしまったんだ!?」と泣いていたりする。ある時はやり過ぎたり、ある時は逆に落ち込んだりするようでは強いとは言えない。子どもなのだ。
・(過去に他の武道を習んでいたことが今役に立っているか? という質問に対して)
特に役に立ってないが、ボクシングや空手をやっている生徒が来た時に、彼らのことをすぐに分かってやることができる。





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システマ創始者TVインタビュー inウクライナ 第3部



S:おそらく一番簡単なのは、もっとも初歩的なこと、私たちにとってもうすでに習慣となっているプレッシャーとスクワットです。この基本的な体勢をコントロールすることは、体の中の緊張が増大しないようにするためです。つまりもし人がしゃがむときに力のバランスが崩れると……

R:猫背になりますね。

S:ええ、猫背ということです。これはいい状態とは言えないでしょう。これだと余分な緊張を持たせることにつながって、呼吸はうまくできません。私たちは体勢を維持して、たとえば息を吸って、吸い込んで下に、息を吐いて上に。今ここで息を吐き終えました。ここまでで吸って、吐きます。そしてこのようにして、人は自分の動きをコントロールしながら、呼吸と動きを結びつけるのです。吸ったり吐いたりは、具体的な動きに必要な分だけ行います。プレッシャーも同じですが、今はうまくお見せする状態ではないように思います。

動きが行われていれば、そこに呼吸があります。とても単純なことなのです。やるべき事は、実践的で科学的です。体を整えて、呼吸を整えるということです。つまり動作を完了するために必要な力に見合うだけの、呼吸が必要なのです。たとえて言うなれば、以上のようなことです。

M:歩きながらの動きもお見せすることができます。

S:原則は同じことで、規則にのっとって一歩目を踏み出します。このときに吸って、次に吐きます。それから踏み出す足の数を増やしていきます。2歩でやってみます。3歩でやってみます。

Q:吸って、吐いて、というパターンですね。

S:3歩の間に吸って、3歩の間に吐いてみましょう。吸うのは鼻から、吐くのは口からです。

M:つまり正しい体勢で、です。

S:そしてこのあとは際限なくこれをやっていくことになります。

M:そうです、10歩で吸って、10歩で吐くなどということも可能です。

Q:どうぞおかけください。

M:警護という分野には興味を持っていまして、私たちは安全のための仕事をしている人たちをトレーニングしています。私は特殊部隊に勤めていましたが、2002年に退職しました。そして2002年から、システマが広まるようになりました。我々の中にはさまざまな種類の……さまざまな国でトレーニングがなされています。アメリカやカナダ、日本、ドイツ、そしてさまざまな特殊部隊の中でシステマが利用されています。カナダでは現在子ども向けの教育機関でシステマを取り入れようとしています。幼稚園などで、です。

Q:それは授業として、ですか。

M:ええ、呼吸を伴った授業です。すでに合意済みの事項でして、近く実現することになります。そして私自身もまた、軍隊活動や特殊活動など多くの事業に参加しています。そのようなわけで、ちょうど90年目の年に多くの出来事がおこるようになりました。

Q:全盛を迎えているわけですね。

M:総合的に判断して、そうだと言えるでしょうね。私と一緒に活動してくれるということに満足をしていて、ときどき謝礼を辞退しています。単に出かけていって、ごはんを食べて、また次の所へ向けて出発する、というような感じです。いろいろありますよ。剣などを使用することがあります。原則としては…。

Q:武器を使った技術もあるのですか?

M:ええ、もちろんです。私のところでは武器を使用するクラスや、ナイフを使ったセミナーを開催しています。張りぼてのナイフを用意してきて、私からいくつかプレゼントしたりします。かばんいっぱいに入れてきて、これをみんなで分けます。それぞれが気に入ったものを取るように、と言います。そのあと、どうしてそのナイフを選んだのか教えてくれ、とこちらから言います。そして各人が選んだ理由を話すのです。「大きいナイフだからこれを選んだ」とか「これは輝きがほかと違ったからだ」とか、「自分は誰かを殺す気は毛頭ないけれど、これが格好よかった」と言ってナイフを見せる者もいます。

Q:(電話での質問)「教えていただきたいことは、どこの地区で何曜日にクラスが開かれているかということです。」

S:はい、これについては週に3回トレーニングを開講しています。アンリバルティウサ通り9、キエフ市内です。ウクライナ宮殿という地下鉄の駅で降りてください。夕方7時から、月、木、土です。

M:ウクライナでは、ほかにペトロフスキー、ネフスキー、ハリコフなどにもクラスがあります。

Q:どうぞお話の続きを聞かせてください。

M:そうでした。各人が、なぜそのナイフを選んだかについて話すのです。ある者は、鋭くて、色を塗ってあるのがあまり気にならなかったからこれがよかったと言って、もし必要なときが訪れたらこれを取り出しますよ、と言っていましたね。つまり各人が武器を使う心理を語るのです。なぜこれを選んだのかという。どのようにこのナイフを使うつもりなのか、ということです。これがとても興味深いのです。それというのも、武器に関してもっとも大事なことは心理なのです。もしナイフを手にした人を目撃したとします。それであなたはその人物の行動を目にして、この人物がどのような威嚇をしてくるだろうかと理解することができるのです。そしてこの人物に対してどのような行動に出るべきなのか、ということです。もちろん分析をする必要があります。必ずしなければいけないことです。これは何なのか、何のためなのか、ということをです。

Q:心理的な側面をここでも重視されるのですね。

M:単純明快です。心理は必要なことの第一番目です。非常に重要な側面です。
どのように振舞うかが問題です。問題にしなければならないことは、もし人が武器を持っていたとして、あなたに対して武器を使うように、この人物を挑発することもできます。私は撃ったりはしません。飛び道具は使いませんが。そして逆に挑発しないこともできるでしょう。もし人を威嚇し始めたならば、この人は恐怖のあまり何をしでかすか分かりませんね。ですからここで恐怖を覚えさせることは、肯定的なものでもあり否定的なものでもあります。しかし恐怖によって自己保存、自分の命を守ることもあります。

Q:恐怖心には、相反する性質があるように感じました。

M:私もそう思います。まずは、恐怖というのが非常に興味深いテーマであるということです。私たちは恐怖という問題に関していくつかDVDを出していますが、これは内なるもの、腹の中にあるものなのです。これは簡単に過ぎ去るような感情ではなくて、人の内面に残り続けるのです。

Q:ミハイルさん、お電話がきました。もしもし。こんばんは。
「こんばんは。先ほど、役割を決めてのトレーニングの様子を見せてくださって、パートナーの一人が、ずっとすばらしい受け身を見せていて、すごくすばらしかった。もう3,4人のパートナーの人たちがデモンストレーションをしている様子を見せてください。」

M:ご質問ありがとうございました。世界中に出かけていってセミナーを開講していますが、いろいろな人が来て、みなさん力を試すのです。今日は5人から9人のグループが来て、みなさん技を試して、スピーリンがその様子を撮影しました。私たちはDVDを発売しようと考えています。そうすれば、わざわざクラスを受けにこなくとも、これを手にとって見ることができます。私たちは、いろいろな人たちと私がトレーニングをしている様子を収めたDVDをたくさん発売しています。みなさん技を試しあっているのです。先ほどの映像では、彼一人にそのような役割を振り当てて、痛めつけているみたいでしたね。ごめんなさい。誤解を与えてしまいましたかね。それに、インターネットで私の苗字「リャブコ」を単に入力していただければ、検索ですぐにたくさんのものが出てくるでしょう。

Q:システマには他にも流派があるのですか?

M:私はアレクセイ・アレクセーヴィッチ(Aleksey Alekseyevich Kadochnikov:カドチニコフスタイルの創始者)を個人的に知っています。尊敬していますし、支持しています。彼もよいシステマを展開していて、私も気に入っています。たしかに100%知っているわけではありませんが、大部分を知っています。しかし私たちのものとはあまり似ていなくて、少し違った原則があるようです。けれどやっていることは似ています。なぜなら人間は腕2本、足2本の動物であって、これらを使ってできることはまあ大体同じようなことですしね。だから似ているのです。

Q:なにか違いがあるのですか?

M:ありますよ、ええ。理論は似ていますが、少し違っています。もちろんそうです。彼のものは独自の、とても興味深く、よく練り上げられた理論で、軍もそれを取り入れて、方法を整備して、ある部分では変更を加えていると聞いています。

Q:残念ながらお別れの時間が近づいてきました。最後に一言お願いいたします。

M:私が申し上げたいことは…、見かけだけだと簡単そうに見えるかもしれません。相手がこちらの意のままに動いていたように感じられると思いますが、これは非常に複雑なのです、うそではありません。世界中で人々があなたに降伏するなどと言うことはできません。腕試しをすることが、結局のところ一番大切なのです。私たちには無傷の箇所はありません。打撃を受けない場所なんてないのです。ですから、戦いを通して、認識を通して上達していくだけです。もちろん、やってみようと思ってくださるといいな、と思いますけれど、もし私たちの対面格闘技というスタイルが気に入らない方は、サッカーとかホッケーとか、バスケットボール、バレーボールなど、どうか躊躇なさらずに、どうか体を動かしてみてください。ご自身のお子さんを参加させてみてください。なぜなら、あなたのお子さんが、あなたがソファーに横たわって、始終「なんだよ、つまらないね」と言って酒を飲んで、わーわー言っているのを見ていたら、その子も将来同じようになるからです。その子もソファーに横たわる大人になります。ですからご自身が体を動かしてください。お子さんとボール遊びをしてください。

Q:本日は古くからロシアに伝わるシステマについてお話を伺いました。ごきげんよう。

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システマ創始者TVインタビュー inウクライナ 第2部



M:子どもたちにとってはまず第一に、システマを用いて全身運動をすることが必要です。これは正しい呼吸法であり、分析であります。子どもたちは分析するようになります。考えるようになります。なぜなら、それはまず第一に大人と向かい合わねばならないとなると、自然にあらかじめ質問をするようになります。初心者なりに質問し、すぐに大人の生活に適応し、自暴自棄に走らなくなります。すると「幸福の調和」を感じ、ビールを飲んだりアルコールを摂取したりする必要を感じなくなります。これについては、ちょうど2002年にプレゼンテーションがありました。私を支援してくれて、それに対して私も顧問という形で参加しました。そこで対面格闘技を披露したのです。

Q:先ほどから流れている映像ですね。

M:そうです。このデモンストレーションしている人たちは、外国人たちです。

Q:システマは世界中でポピュラーなのですよね。

M:非常にポピュラーです。今ここで映っている人は、アメリカの特殊部隊に対して訓練を行っています(1:54)。ここでは相手を威嚇していますね。アメリカの特殊部隊を訓練している人です。彼自身も、彼らと生活を共にしています。こちらはフランス人の、我々と一緒に活動しているインストラクターです(2:10)。彼はアラブ地域の安全を守る警備をしています。彼はカナダで活動している、我々のインストラクター、ヴラディミア・ヴァシリエフです(2:30)。

Q:肉体が機敏に動いていますね。力強いはっきりとした動きに感じます。

M:そうです。

Q:はっきりとしたスポーツのようです。とても難しそうですが、誰にでもできるものなのですか?

M:いくらか見かけとは違うところもあります。細部はそれほど簡単ではないと言っておきましょうか。よく路上などで人を前に座らせて、デッサンを15分から20分くらいですらすらと描いてくれるサービスがありますよね、これをたとえば100ルーブルで買い上げるとします。一度試してみたことがあるのですよ。それでまあ、女の子が前に座ったとしましょう、そして手早く彼女を描きます。こうたずねる人がありかもしれません。どうやって20分で描いて、それほどいいお金を稼げるのでしょうか、と。彼は、「人生も20分ですよ」と言うのです。もちろん冗談で言っているのですよ。もしあることを日常的に行っていたならば……これは何をするのでもよいのです。人それぞれ違った職業を持っていますもの。すると人は自動的に動ける域にまで達します。私はかつて、タイピストの女の子を見たことがあります。もちろんプロの人です。それで私が、職員さんたちがいる部屋に入ったら、彼女が対応しに出てきてくれました。「私が打ちますね」と言って、こうやって手を広げて、それでこうやって「ドドドドド!」と、素早く全部打ち込んでくれましたよ。私たちだったら、一つ一つ打つしかできないですよ。もちろん、はじめのうちは彼女も苦労したと思いますけれど、一歩一歩上達していったのだと思います。そして簡単にできるようになって、自分なりのパターンというものを体得して、苦もなくやってのけるようになるのでしょう。やってみれば分かってくることでしょう。

Q:お話を伺ってきて、システマというのはストレスも軽減するし、肉体を整えるのにも効果があるのですね。

M:ええ。問題はもちろん、ストレスについて、そしてプライドについてですね。自分のプライドを、どういうわけか受け入れなければならなくなります。

Q:なぜでしょう。

M:なぜでしょうか。なぜこれは理解しがたいものなのでしょうね。私たちは一等賞にならなければいけないし、いつもよりよい姿でいなければ、と考えます。これはある面では別に悪いことではありません。

Q:それをコントロールしないといけない、ということでしょうか。

M:そうです。そうなのです。せかせかしないこと、急がないことです。今の世の中では、物事を分析するということが足りていません。人の分析力が低下しています。そして、だから、どうしたらよいか分からないのです。この点に関していろいろな考えがなされていて、まず第一に練習を通して、呼吸を取り入れた練習を通して、中枢神経系が鍛えられます。そして人は働いたり活動したりということを、意識を通じて行うようになります。意識を通じて筋力や精神面をトレーニングするようになり、こうすることでストレスが消えるのです。なぜならストレスを取り除く分析や活動ができているからです。でも、すぐにお話できるものではなくて、手に取るようにお見せしなければいけないのですが。問題は、ストレスと一口に言っても、さまざまな種類があることです。家族間でなんらかの問題が起こることもありますし、人も家族もこのような問題を片付けることができない、などということもあります。本当に人それぞれ、100人いれば100通りの事例があるのです。だからそれぞれの事例ごとに分析をして、その人と会ってどこに問題があるのか尋ねてみる必要があります。たとえば教会などで思いを口に出して告白する場面がありますね、これによってもストレスは軽減します。しかしもしそのような場が用意されていないとすれば、これは何かを変えたり、肉体的なトレーニングを取り入れたりすることが必要不可欠です。呼吸を伴うトレーニングです。なぜなら呼吸というのは……私は少し気になっているのですが、呼吸というのは内臓から出る毒なのです。ここには化学的なプロセスがあって、内臓の中や脳の中でも同様ですが、栄養や酸が不足すると、たとえば筋肉は押さえつけられて、縮まって、つまり循環系ですね、栄養が不足して、生命力も同時に不足してくるのです。これには個々の具体的な事例が人に反映してきます。そしてどの点に関してコントロールできるのか、というその人の理解ですね。あとは、どのように自分を管理するか、どのようにその状況から脱すればよいかを示唆してあげればよいのです。

S:付け加えてお話してもよいですか。本当に基盤となる目的を持ってトレーニングに来る人も確かにいらっしゃいます。それは緊張を解きほぐすというものなのですが、現代の世界は……そうですね、普通の世界ではない。想定外のことが起こります。トレーニングにいらっしゃって、そういう方が、それまで不足していたと感じていた正しい求められている状態を得ることができます。生きる上での、なんらかの複雑な状況、仕事上の複雑な状況ですね、それらをみなさん自立的に処理することができずにいたのですが、ここでのトレーニングでの「つながり」が功を奏して、「つながり」というか……

M:「環境」ね。

S: 「環境」……。「つながり」というのは、何というか、濃密なもので、とても、うーん、濃密なものです。人々は、時にはお互いに打ち合うこともあって、うまい具合にそれがいかないこともあります。時にはだれかがだれかを怪我させてしまうこともあって。これもまたストレスの一種になります。打撃というのは、ストレスなのです。ただその前にトレーニングの場面ではよく言われていることは、これをどのように行うかということで、みながリラックスすることはできます。このストレスからくる結果を取り除くことはできます。このようにして、その人は、もうすでにたまっていた別のストレスも取り除くことができるのです。緊張緩和の条件ですね、ストレスがたまって、たまって、トレーニングに来ることによってこれが取り除かれる。これはお風呂に似ていますね、みなさんトレーニングを終えたあとは何だか調子がよいようです。

Q:多分に感情に関わりそうですね。

S:そうです、たしかに感覚の問題です。しかし、ネガティブな面は存在しません。つまり……言いたいことはですね、トレーニングそれ自体にネガティブな面はないのです。もしここにネガティブな面が存在したとすると、正反対のプロセスが生じます。人はますますストレスを上乗せすることになるでしょう。ここでは「善い正確な環境」、「善い正確なコントロール可能なストレス」、これはもしかすると逆説的に聞こえるかもしれませんが、まさにこれが、たまりたまった負荷を整えるのに役立つのです。

Q:「(電話での質問)私は子どもたちに教える仕事をしています。私は体育の教師です。教えていただきたいことは、呼吸練習に関して、ギムナジウムの生徒たちにはどのような方法を取るべきだとお考えですか。そしてお二人は、何歳の子どもからこの方法を取り入れさせていらっしゃいますか。聞いてくださり、ありがとうございます。」 …学校での正しい呼吸法についての質問ですね。

M:そうですね、それはとても興味深く、またその通りです。ご質問ありがとうございました。そして尊敬の念を持って体育の先生に接したいです。大きな深い尊敬の念です。なぜならば、お給料はあまり多くなかったりするのですが、努力なさっていて、子どもたちに学問を教えていらっしゃるからです。我々のところでは、4歳、5歳の子どもたちからもう受け入れています。そうです、子どもたちです。しかし呼吸法についてはさまざまです。動きの中の呼吸、歩行中の呼吸そして走っているときの呼吸。つまり本当にいろいろなレベルがあり、私たちは人に教えるときに次のようにしています。息を吸う、空気を取り込むのは、これは多すぎても少なすぎてもいけない。なぜならば、頭がくらくらしてしまわないようにするためです。ご経験があると思いますが、息が続かなくなると、頭がくらくらしてしまいますよね。これはつまり酸が余分になったときも同じで、これもよくありません。しかし残念ながら、どのような呼吸法を私たちが教えているかについてお話するには、時間が非常に限られています。

Q:今お見せいただくことはできますか?

M:うーん、とても難しいですね。インスピレーションが必要なのです。我々には教材があって、DVDを出しています。それを見てもらうのも良いですし、本当に基本的なことであれば、ここにいるミハイル・スピーリンがお見せすることもできます。

Q:これはあなたのクラスの模様ですね(12:58)。

M:これは私が(AikiExpo:合気ニュースが開催した各国の合気道家が集まる国際イベント)招待された時のものですね。合気道の方法を取り入れていますが、彼らは私たちのことを非常に尊敬してくれています。(AikiExpoの後、)私たちを招いてくれて、合気道の道場でセミナーを開きました。私は彼らのスタイルをお見せして、お話をしました。

Q:合気道のスタイルを、ですか。

M:ええ、そうです。何について話しているか、彼らにとって分かりやすいようにするためです。彼らにとって分かりにくいことを示して見せるのです。この人は日本人です。

Q:彼らは非常に何と言うか、言うなればピエロのようになっていますね。

M:そうです。あたかも全然、力が抜けてしまったかのようで。ただ、また立って次を受けるのです。

Q:起き上がって。

M:またやられるのです。

Q:力はコントロールできるものなのですか。

M:ああいう活動なのです。

Q:お見せいただくことは可能ですか。

M:ええ、いいですよ。

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北川貴英:システマ東京主宰。株式会社アトス代表取締役。08年モスクワにて創始者ミカエル・リャブコより公式システマインストラクターとして認可。16年コンディショニングに特化した「INSTRUCTOR OF APPLIED SYSTEMA」に認可。システマ関連書籍を多数執筆。教育機関、医療系シンポジウムなどでの講演するほか、テレビやラジオなど各種媒体を通じてシステマを幅広く紹介。今なお毎年欠かさず海外研修に赴きスキル向上に努める。ヤングマガジン連載「アンダーニンジャ(花沢健吾著)」、NHKドラマ「ディア・ペイシェント」監修。
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