「高齢者へのシステマ その2」by コンスタンチン・コマロフ

「高齢者へのシステマ その2」
byコンスタンチン・コマロフ

クラスの時間の長さ、強度、内容は、参加する高齢者の当初の状態に応じて決める必要がある。一般的な規則は単純だ。参加者の健康状態、特に脈拍に基づいてワークを調整する。クラスを始めるときに必ず参加者に対して、自分の現在の気分を常に観察し、心臓の鼓動に耳を傾けるように指示する。自分の鼓動を「内部の耳」で聞くことができたら、呼吸を使って鼓動を鎮めることが重要になる。クラス中に参加者が多少なりとも気分の悪さを感じたら、ただちにインストラクターに告げて休憩を取るようにする。

寝た状態
クラスの最初のワークは、床に仰向けに寝た状態で行うのがよい。これにより、不安や予測を手放すとともに、身体の筋骨格系をリラックスさせることができる。ここでは、ゆっくり呼吸しながらの動的なストレッチ(胴体から離れる方向あるいは対角線上)が高い効果を発揮する。胴体から離れる方向のストレッチとは、手、腕、頭のてっぺんを「上」の方(寝ている場合は床と平行な頭の方向を指す)に、かかとを「下」の方(やはり床と平行な方向)に伸ばすことを言う。これによって、背骨がよく伸ばされる。次に、腕を横方向に、肋骨から離れる方向に伸ばし、指先が開くようにストレッチする。吸いながら伸ばし、吐きながらリラックスする。胴体の対角線上のストレッチを加えてもよい。すなわち、右腕と左足を同時に伸ばし、次に逆をやる。

次に、いろいろな方法で、仰向けからうつ伏せへ、うつ伏せから仰向けへと姿勢を変えてみる。この際、指先や足・膝の動きに胴体が付いていくようにする。その後、仰向けとうつ伏せの姿勢で、できる範囲内で床を這うように参加者に求める。高齢者にとって這う動きは難しい場合があるので、距離や速さにはこだわらなくてよい。むしろ重要なのはプロセス自体だ。体幹部の深層筋を使って動くことと、もちろん、途切れない呼吸によって動きをつないでいくことだ。

這うのが終わったら、背中とお腹の筋肉を使うワークをする。ここで使える練習としては、仰向けになって膝をあごに引きつけることや、片方の膝を反対側の肩に向かって引き上げていくことなどがある。うつ伏せの状態からゆっくりと反り返る動きを加えてもよい。

大事なこととして、身体に負荷をかける練習をしたあとは、必ず筋肉をリラックスさせ、残っている緊張を完全に解消するようにする。

そのための方法としては、ゆっくりと呼吸しながら、背中とお腹の筋肉のストレッチを交互に行う。たとえば、横向きに寝て、吐きながら体をゆっくりと前に曲げ、背中の筋肉を伸ばす。次に、ゆっくりと吐きながら体を後ろにそらし、お腹の筋肉を伸ばす。その後、仰向けになって5分から7分ほどリラックスしながら、脈拍を感じ、意識によって脈拍の感覚を体のさまざまな部分に移動させていく。

座った状態
クラスの次の段階では、座った状態で練習を行う。これは、心臓血管系と神経系に適度な負荷を与え、常に呼吸し続けることの重要性に気づくために重要である。このワークの最も簡単な方法としては、さまざまな方法で上体を起こすことと横たわることを繰り返す。吐きながら倒れてリラックスし、吸いながら上体を起こす。この場合、「倒れる」とは、基本的に座った状態からゆっくりと横になることを意味する。高さの差はそれほど大きくないとはいえ、体が緊張していると、このようなワークには恐怖と心配が伴う。したがって、呼吸と心の興奮度を常に観察していることが重要だ。ときどき練習を止めて、呼吸によって心を鎮めるようにする。

立った状態
次の段階では、立った状態でワークをする。寝た状態と同様に、最初にやるのは姿勢を正しくすることとストレッチである。正しい姿勢を練習するときに注意する必要があるのは、身体のどこかに大きな緊張があると、正しい姿勢を取って維持するのが難しくなるということだ。この場合、正しい姿勢を保つこと自体が、身体に負荷をかける作業になる。これを解決するには、ストレッチによって筋肉をリラックスさせ、身体が正しい姿勢に戻れるようにする。ストレッチに加えて、胴体を(ストレッチしながら)左または右にひねる動きをすることもできる。この場合、吐きながらひねったほうがよい。この動きは、すでに十分緊張している筋肉にさらにストレスをかけることになるからだ。

姿勢を正しくし、ひねりとストレッチを行ったら、次に呼吸しながらゆっくりとスクワットをする。この時点では、できるだけ「優しい」スクワットにしたほうがよい。すなわち、何かにつかまってバランスを取り、足首、膝、股関節に無理のない範囲で行う。ただし、まっすぐで自然な姿勢を維持し、呼吸し続けることは守る。スクワットが終わったら、すぐに心拍を確認し、必要なら呼吸によって通常の心拍数まで戻す。

歩く
次の段階では、20分から25分程度、動きのあるワークを行う。体に緊張が蓄積すると、まず姿勢が歪んでくる。人間の特徴である直立歩行は、複雑な技術であり、高度な協調とバランスを必要とする。ある筋群が過度に緊張していると、バランスを維持するために他の筋群が補償しようとする。これにより動きの自由が制限され、協調が損なわれる。その結果、脚の関節、股関節、背骨に過大な負荷がかかる。

一定の歩数で呼吸に合わせて歩くことは、自然な歩みを回復し、維持するための有効な練習である。歩きながら、できる範囲で身体構造を維持することに全力を注ぐ。また、肩と腕がリラックスして動きに同調するようにする。速く歩きすぎると姿勢の制御が難しくなるので注意する。だんだんと呼吸を伸ばしていき(1回の吸気あるいは呼気で歩く歩数を徐々に増やしていくということ)、吸うときに肩と首に緊張が生じるのを感じたらやめる。記録を伸ばそうとがんばる必要はない。呼吸が完全で、自然で、体全体に満ちていればそれで十分だ。限界まで呼吸を伸ばしたら、今度はゆっくりと徐々に通常の状態まで縮めていく。長い息から短い息に突然変えると、血圧が急変するおそれがある。身体にこれ以上余分なストレスをかける必要はない。

上体
呼吸を伴うワークのあとで、今度は上体、すなわち腕と肩に働きかけることで血圧を正しく配分するワークをする。このためには、床または壁に手をついてゆっくりとプッシュアップを行う。この練習には注意が必要だ。呼吸が不十分だと、練習中に血圧が上がるおそれがある。このため、高齢者のプッシュアップは壁に手をついて行うほうがよい。

プッシュアップの他に、体を押したり、関節をひねったり、相手の抵抗を受けながら動いたりする練習を加えることもできる。簡単に言えば、上体に働きかけるとともに、さまざまな新しい感覚や動きを体験できる練習であれば何でもよい。

動きによる回復
クラスの最後には、床に寝た状態のワークを行うのがいちばんよい。これにより、練習の結果として現れてきたストレスの残りを筋骨格系から取り除くことができる。また、体幹の深層筋を使うことで体を統一し、血圧を均等化する効果もある。2人組になって、寝ている相手の腕と脚の関節をゆっくりとひねっていく。1人が相手のどこかの関節をゆっくりとひねって固定する。もう1人は床の上で動いて不快な状態から脱する。その後で、呼吸しながら床の上で自由に動き回る。ローリング、ストレッチ、その他好きな動きを、呼吸のサイクルに合わせて行う。クラスの最後には、呼吸しながらストレッチを行ったあと、仰向けになってしばらく自分の体を感じる。

評価
ここで紹介したクラスにかかる時間は、60分から90分程度である。高齢者にとってはこれくらいで十分だろう。

クラス全体を通じて、参加者の状態をチェックし、練習後に定期的に脈拍を測らせるようにすることが重要だ。クラス全体を通じて、1つの段階が終わるたびに、心拍数を毎分60回から80回程度まで回復させる必要がある。

クラスが終わったときの身体の感覚はきわめて重要だ。体が軽く、エネルギーに満ち、落ち着いた状態になっている必要がある。参加者がよい気分になっていることが重要だ。あまりにも疲れていたり、弱っていたり、興奮していたり、ネガティブな思考に囚われていたりする場合は、クラスの内容や形式に問題があったか、いくつかの練習のやり方が正しくなかった可能性がある。何人もの参加者がそのようなネガティブな状態に陥った場合は、クラスの内容、構成、ペースを慎重に振り返り、考え直すことが必要だ。そのような状態になるのが1人か2人の場合は、その人たちを注意深く見守り、ワークを正しくやっているかどうかを確認する。間違いがあれば正し、他の参加者よりも頻繁にその人達にどう感じているかを聞くようにする。

システマのクラスは、高齢者にとってとても有益である。高齢者が健康を維持し、活動的な生活を送り、仕事を続け、常に明るい気分を保ち、老化と停滞を押し戻すために役立つからだ。

一般的なスポーツやフィットネスのクラスと比べても、システマの利点は明らかだ。その理由を次に示す。

・ システマでは何かを達成する必要がない。また、厳格なルールや基準もない。

・ システマは、自分自身に対する感覚に基づく途切れない正常なプロセスを促進する。

・ 同時に、このプロセスは同じような練習の機械的な繰り返しではなく、探求、発見、理解の継続的なプロセスである。決して飽きることがなく、しかも自然な動きの喜びを実感させてくれる素晴らしいゲームである。

高齢者とともにシステマのクラスを行うときには、システマの最も重要な原則の1つを常に心に留めておく必要がある。それは、「傷つけてはならない」ということだ。

2014年のシステマキャンプでは、このテーマの理論的・実践的側面についてさらに詳しく扱う予定である。

高齢者向けのワークは、キャンプのインストラクターワークショップで扱われるテーマの1つである。このセッションは、関心のあるキャンプ参加者であれば誰でも参加できる。

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「パンチの数は?」 by ヴラディミア・ヴァシリエフ

「パンチの数は?」
by ヴラディミア・ヴァシリエフ

よく生徒から聞かれる質問に、格闘中に攻撃してくる相手が何をしようとしているかをどうやって知ればよいかというのがある。パンチをいくつ打とうとしているか、どれくらい攻撃的なのか、どのように準備すればいいかといったことだ。ミカエル・リャブコに教わった練習で、私が大好きなものを紹介しよう。

2人組になり、5メートル以上離れて向かい合って立つ。
両方から近づき、止まらずに互いにパンチを1回打ち合う。
打つ場所は、胸、腹、体側、腕などどこでもよい(顔を打つ場合だけはパンチでなくプッシュにする)。
元の場所に戻り、また近づいて今度は互いに2回パンチを打つ。
次は近づいて3回パンチを打ち合い、さらに4回、5回と増やしていく。
好きな回数までやってよいが、パンチは威力があって正確で、しかも相手を傷つけないものでなければならない。
重要なのは動き続けることだ。打ちながら必要なら互いの周りを歩きまわるようにする。
動きを止めたり立ち止まったりしてはいけない。
この練習はとてもよい格闘の準備になる。
相手が1回パンチを打とうとしているときと、2回、5回、10回、あるいはそれ以上打とうとしているときで、相手の動き、距離の選択、心構えがどのように違うかを観察できるからだ。

このドリルでは、攻撃側と同時に受ける側にもなる。だから、自分の動きや距離の選択を観察し、自分自身の決定や思考を分析することもできる。 闘いの両方の側を、身体面と精神面から検証し、実地に試すことができる。これにより気づきが生まれ、受けと攻撃を同時に行う技術が身につき、強い精神が養われる。

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「高齢者へのシステマ」byコンスタンチン・コマロフ

「高齢者へのシステマ」
byコンスタンチン・コマロフ

今夏のキャンプでは、高齢者を対象とする練習方法について説明する予定である。対象は、システマを教えている人たちと、このテーマに関心があるすべての参加者である。高齢者向けのシステマの健康・回復法のクラスについて、私が経験したことをお話しすれば、きっと役に立つだろうと思う。

老化はどのように始まり、進行するのだろうか。身体能力の低下はどの年齢から始まるのだろうか。それに対抗する方法はあるのか。40歳で著しい老化の徴候を示す人がいる一方で、60でも若く見える人や、80を超えても活動的で能力が衰えない人もいるのはなぜだろうか。年を取るとともに、人は身体的活動を制限すべきだろうか。高齢者向けのクラスを教えるには、いま挙げたような疑問に答えなければならない。ここでは、生理学的な詳細にあまり踏み込まずに、これらの問いに答えてみようと思う。

年を取るにつれて、人の体には根深い筋肉の緊張が蓄積され、そのために動きが制限されていく。
その原因としては、ストレス、怪我、病気、外科手術、過重な労働など、さまざまなものがある。子供と老人は両極端にあり、子供はよく動きまわるのに対して、老人はあまり動かない。

動きが制限される過程は、徐々に始まる。きっかけとなるのは、小さな痛み、不快感、筋肉に力が入らないとか制御できないといった感覚である。それによって、関節を可動域全体で動かしたり、急な動作をしたりすることへの恐れが生じる。次に、体がそのような制限に順応し始め、習慣的な動作や姿勢が変化する。こうなると、体の動きに意識が囚われてしまう。その結果、日常の動作で特定の動きを避けるようになり、動きがゆっくりになり、生活習慣が変わっていく。やがて脳の機能が身体に追随し、記憶や注意力、思考の働きが低下する。

ここで働いているのは、使用しない機能は退化するという生理学の基本法則である。要するに、使わないと使えなくなるのだ。たとえば、何か月か歩かないでいると、立てなくなる可能性がある。歩き方を一から覚え直さなければならなくなるのだ。この法則は、精神機能にも同じように当てはまる。

緊張が蓄積されると、筋肉全体に過剰な収縮が起きる傾向がある。これは特に、横隔膜、肋間筋、腹筋に起きやすい。その結果、呼吸が制約され、心臓に十分な酸素が供給されなくなる。このため、心臓の拍動が異常になって動悸が生じ、神経系が興奮する。これによって筋肉の収縮がさらに亢進し、血管系全体に影響が及び(血管も筋肉組織なので)、血圧が上昇する。

このように、老化が進むときには、身体システム内部の相互作用の均衡が失われる。これは悪循環であり、逆転させたり止めたりするのが非常に難しい。

最近の研究では、老化自体によって体の組織や器官に基本的な生理的変化が生じることはないとされている。何が起きているかというと、これまで述べたような理由で、一部の器官やシステムが異常を起こし、機能しなくなっているのだ。だから、年を取っても、重要な身体機能を維持し、修復するために必要な動作は行えるのであり、行う必要がある。

システマのアプローチは、この目的に非常に適している。

高齢者向けの練習には、2つの主な道筋がある。1つは一般的な回復の道筋、もう1つは選択的な道筋(異常を起こしている特定の身体機能に働きかけるもの)である。

ここでは選択的な道筋については説明しない。それは複雑で、専門的な知識と訓練を必要とするからだ。これについては夏のキャンプで扱う。この文章では、基本的な健康を目的とする一般的な実践について簡単に説明する…

次号に続く。

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[優位を保つ動き - その秘密とは?」byヴラディミア・ヴァシリエフ

「優位を保つ動き - その秘密とは?」
by ヴラディミア・ヴァシリエフ

射撃で動いている的を撃つのは止まっている的を撃つよりはるかに難しいことは、どなたでもご存知でしょう。動いている的を撃つほうが努力と技術を必要とします。格闘でも同じことが起こります。闘いの中で常に動き続けていれば、相手にとってその闘いはずっと複雑なものになります。相手が1人の場合だけでなく、複数でも同じことです。リラックスしていつでも自由に自発的な仕方で反応できる人を相手にすると、武器を持った複数の攻撃者であってもその利点を失うのです。動きながら闘うことで、独特の距離感が生まれ、格闘の力学にチェスのような構造が生じます。このような人を相手にすると、複数の攻撃者は戸惑い、チームとして行動できなくなるばかりか、互いに邪魔をし合う結果になるのです。もちろん、だれでも闘いの最中には動こうとしていますが、その動きは通常、小刻みに止まったり力みによってぎくしゃく動いたりする「位置の変化」に過ぎません。このような力みだらけの位置の変化はむしろ逆効果です。その理由の1つは敵に見えやすいこと、もう1つは脅威と見なされることです。

システマではこれとは違う方法を取ります。システマが目指す動きは、完全に滑らかで、体にも心にも全く力みがないものです。これを実現するための練習方法として、止まらない呼吸、気付きの呼吸、闘いの呼吸、内部のコントロール、独自の動きと接触のドリルが行われます。このような練習は楽しいものですが、簡単ではありません。重要なこととして、力みがあるとパワーとは何かが理解できません。力みがある人が強くなれるというのは幻想です。どんな人の中にも、活用されない膨大なパワー、自発性、スピード、精度が備わっていることに気づいてください。力みと恐怖(およびその他の否定的感情)を取り除けば、このような強力な性質が目覚め、成長し、あらゆる対立で優位を保てるようになるのです。

システマのトレーニングは、核となる部分を対象とし、人間の能力のあらゆる要素にスムーズに働きかけます。動きながら闘う技術の養成は、トロントのすべてのシステマクラスで行われており、パリのセミナーでもこれに関する解説やデモと徹底した練習が予定されています。フランスで最も新しく近代的で最も広いジムは、トレーニングのテーマとこの素晴らしいイベントにとって理想的な場所となるでしょう。

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「子供にとってのシステマ - その2」byコンスタンチン・コマロフ

「子供にとってのシステマ - その2」
by コンスタンチン・コマロフ 訳:ドミトリ・ツルファノフ


前号から続く

…あまり重視しないほうがいいのは、止まった状態でのワークだ。常に動き続けるように促した方がよい。這ったり、転がったり、歩いたり、走ったりする。力に頼るのはよくない。それよりも、リラックスと動きを通じてワークをする。

子供のクラスには、目を閉じてやる練習も組み込むとよい。これは、感じること、聴くこと、方向感覚、記憶、複雑な状況で決断することなどの訓練になる。子供は目を閉じてやるワークが大好きで、とても上手だ。ロシアで一般的な「ズムルキ」(目隠し鬼)という遊びを思い浮かべるとよい。1人が目隠しをして「鬼」になり、他の3人から10人の参加者を決められた範囲中でつかまえる遊びだ。

いろいろな遊びを利用して、できるだけ多く身体接触を取り入れるとよい。

クラスの初めには、動きが激しく体への負荷が大きいワークを主に行う。そのあと、ペースを落としてクラスを落ち着かせるワークに移る。たとえば、ゆっくりしたプッシュアップやスクワットをゲーム形式で行う。ここまでの目的は、余っているエネルギーを発散させることだ。そうすることで、その後30分から40分、用意したテーマで生産的にクラスを行うことができる。最後は、盛り上がった状態で終われるように、楽しいワークや遊びで締める。決してやってはいけないのは、クラスを決まった型にはめたり、窮屈な制約を持ち込んだりすることだ。なるべく即興でやる方がよい。子供たちが緊張を解放し、自由に飛び回れるようにする。彼らは学校や家庭ですでに多すぎるほどの制約を課せられているからだ。

1つ例を挙げよう。私が9歳以上のクラスの終わりによくやる「象」というゲームだ。このゲームは8人以上で行う。

グループを同人数の2つのチームに分ける。部屋の中央に直径約4メートルの円を描くか、何かで印を付ける。床にチョークで描いてもいいし、ロープを円の形に置いてもいい。1つのチームは、1人または2人の「番人」を決め、残りは「象」になる。象は円の真ん中に立って、腕を互いの肩に掛け、手を内側に垂らす。円の外にいるチームの目標は、相手チームのメンバー(番人を含む)の背中に飛び乗ることだ。誰かが番人の背中に乗ったとき、番人が円の外に出たら、乗っている人は下りなければならない。番人の目標は、相手チームの誰かが「象」に乗る前に、その脚の膝から下にタッチすることだ。番人のどちらかの足は、常に円の中になければならない。相手の上に乗っていられる時間に制限はないが、このゲームの面白いところは、できるだけ何回も相手チームの上に乗ろうとすることだ。チームの誰かがタッチされたら、2つのチームは役割を交代する。

このゲームはとても面白くて動きが激しい。2、3回交代したら、私はいったんゲームを止めて、参加者の誤りを指摘し、助言を与え、それからゲームを再開する。10分もあれば、グループ全体が元気になり、十分な強度の運動が得られる。

子供を相手にクラスをやるのは楽しいが、同時にかなりの集中力を要する。子供の注意を惹きつけておくには、速いペースと積極的な態度を維持しなければならないからだ。だが、子供たちの目の輝きと楽しそうな様子を見れば、苦労など忘れてしまう。彼らの充実した子供時代と成長に多少でも貢献できたと思えるからだ。

トロントのシステマ本部スクールでは、8歳から16歳を対象とした年少クラスが定期的に行われている。世界各地のシステマスクールの中にも、年少者対象のクラスを開いているところがいくつかある。

今年2014年のシステマキャンプでは、さまざまな年齢の子供たちを対象としたワークの方法について説明し、練習する予定だ。子供たちにシステマを教える方法は、システマのインストラクター向けのテーマの1つで、キャンプの他の参加者にとってはオプションとなる。

皆さんの健闘をお祈りし、お会いできることを楽しみにしている。

コンスタンチン・コマロフ

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「強さと平和の源泉 ヴラディミア・ヴァシリエフへのインタビュー」

「強さと平和の源泉 ヴラディミア・ヴァシリエフへのインタビュー」

インタビュー者:ロブ・ポイトン(英国カッティング・エッジ・システマ・アカデミー主任インストラクター、システマ・インターナショナル誌編集者)

システマ・インターナショナル(SI):まず、ここにいる全員を代表して、スクール設立20周年をお祝いいたします。素晴らしい成果ですね。初めてトロントで教え始められたとき、世界中にスクールがある今の状況を予測されましたか。

ヴラディミア・ヴァシリエフ(VV):心のこもったお祝いとご支援に感謝します。1993年にトロントで教え始めたときには、特に何かを成し遂げるというつもりはありませんでした。人生の進展はおのずと決まります。現在世界中に、システマを教えているスクールは200箇所以上、インストラクターは500人以上おり、40以上の教育用映像が作成され、定期的なセミナーやキャンプがたくさんの参加者を集めています。もちろん、私はいつも誠実に努力していますが、決まった目標は何もなく、いま言ったような発展に依存することもありません。

SI:これまでいろいろな分野でいろいろな人とトレーニングをなさってきたと思いますが、特にミカエルに引きつけられ、現在トレーニングの源泉となさっているのはどのような理由からですか。

VV:ミカエルがやっていることはいつも興味深く、いつも新しく学ぶことがあります。それがなにより面白いのです。ミカエルの達人ぶりを見て、私ももっと努力しようという気になります。

SI:システマは過去20年間に驚くほど普及しましたが、今後20年間にどのように発展するとお考えですか。

VV:私はすべてのことに神の意志があると信じています。そのような遠い未来について予測するつもりはありません。私は今あるものをありがたく思っています。それは素晴らしい仲間と素晴らしい達成です。私が言えるのは、システマは本当に独自のもので、練習者にとってとても大きな効果があるということです。今後20年間もそれ以後も、多くの人々がシステマから利益を得ることができればいいと思います。

SI:中心となるスクールから人々が散らばっていくにつれて、持ち味が変わっていく恐れはありますか。

VV:人々が「散らばっていく」なら何も問題はありません。私たちは人々に集まるように要求もしないし、去っていく人を止めることもしません。他の方法を試してみるのはいいことです。多くの人たちが戻ってきます。普通は、システマを必要としない人たちは去っていきます。システマを理解できないのです。システマの全体を理解して受け入れることは困難です。多くの人が、このやり方の一部だけを取り入れて、システマを身につけたと思っています。これはシステマにとってよくないことです。

SI:ここ何年か、システマとは全くやり方が異なるいくつかの軍事的流派が人気を集めています。健康と呼吸を重視するシステマが軍事的背景を持つことに驚く人がいると思われますか。

VV:優れた戦士とは健康な戦士です。魂も体も健康である必要があります。システマは人の体を強くするだけでなく、善良さと親切さを高め、恐怖と攻撃性を減らす効果があります。恐怖や攻撃性を持たない優れた戦士は、国を守るために非常に役立ちます。

SI:システマのワークの中には、一般的な武術の方法の対極にあるように見えるものがたくさんあります。たとえば、体の動きを使わない打撃とか、テンションに対してリラクセーションで対処するとか、相手よりも自分を観察するなどです。他の流派から来た人たちに、このような考え方を理解してもらうにはどうすればよいでしょうか。

VV:練習者は、健康と武術の要素との間の緊密な関係に気付くことが必要です。練習者を間違った方向に導く武術がたくさんあります。私の考えでは、そういった武術の教えは健康や生存にとってなんの意味もありません。伝統的な武術は、同時代の人々を守ることを目標としていましたが、今ではそれは失われてしまいました。システマの健全で自然な取り組みと呼吸を基礎とすることで、正しく練習し、闘い、生きる方法を取り戻すことができます。これを理解するには、自分で練習するしかありません。

SI:ヴラディミアさんご自身も年々着実に進歩しているという評価を耳にします。上達し続ける秘訣はなんでしょうか。また、どのような目標を持ってトレーニングしていらっしゃいますか。

VV:おほめいただいてありがたく思います。私の目標は、システマの考え方をより深く理解することです。システマは生きており、常に進歩し続けています。それは私たちが死ぬまで終わりません。多くのシステマインストラクターが、常に自分のスキルを向上させ続けています。例を挙げれば、ロシアのヴァレンティン・タラノフ、パリのジェローム・カディアン、トロントのブレンダン・ゼットラー、そのほかにも大勢います。

SI:トレーニングで、困難に挑戦することと安全性とのバランスをどのように取っておられますか。練習者がどの程度耐えられるかをどうやって判断されるのでしょうか。

VV:とても重要で意味のある質問です。それは非常に難しいことなのです。相手を強く打ったり圧倒したりすると、相手やほかの生徒たちから苦情が出ます。圧倒しなければ、相手は信じてくれません。これはどんなインストラクターにとっても試練です。特に、システマは動きの中でワークをするから余計です。止まった状態で決まったことをやるなら、納得のいく技を見せるのは簡単です。しかし、動きの中でちょうどよい度合いを測り、パートナーが受け入れてくれるワークの程度を見つけるには、本当の技術がいります。相手がどれだけ耐えられるかを判断するのはそれほど難しくなく、練習すればできるようになります。

SI:軍隊でミカエルといっしょにトレーニングされていたときのエピソードを何か聞かせていただけますか。

VV:それを話し出すと長くなります。また別の機会にお話しできるかもしれません。

SI:システマを始める人たち、何年かトレーニングしている人たち、システマを教えている人たちに、それぞれ何かアドバイスをいただけますか。

VV:すべての練習者に対するアドバイスは、辛抱強く行うことです。システマを学ぶことは奥深いプロセスで、あらゆる段階に困難と報酬があります。常に新しい発見が待っており、正しい道をたどっているという奥深い喜びが得られる、素晴らしい体験です。

SI:技術の進歩にもかかわらず、あるいはそれゆえにかもしれませんが、世界はあいかわらず不確実性や悪い出来事でいっぱいです。この困難な、あるいは「興味深い」時代に、システマが人々に何かをもたらすことができると思われますか。

VV:間違いなくできると思います。さっき言ったように断片だけを学ぶのではなく、システマの全体を学べば、無数の応用があります。システマをトレーニングすれば、ストレスと恐怖が減り、健康と明晰な思考が得られます。真の意味で強さと平和の源泉になるのです。 詩篇第23編にこのように書かれています。「死の影さす谷を歩くとも、私は悪を恐れない。あなたが私とともにおられるから。あなたの笞とあなたの杖、それが私の心を安らげる」

SI:ヴラディミアさん、ヴァレリーさん、本日お時間を割いてくださったこと、また20年間のご努力に対して感謝いたします。今後も末永い活躍をお祈りしています。

元の記事はトロント本部ウェブサイトに掲載された「The Source of Strength and Peace」です。

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「子供にとってのシステマ」by コンスタンチン・コマロフ

「子供にとってのシステマ」
by コンスタンチン・コマロフ ドミトリ・ツルファノフ訳

子供のころ私は、よく自分のアパートの中庭で友達と遊んでいた。この中庭はとても広いので、近所に住んでいた友達がみんな遊びにくるのだ。どの建物にも中庭があったが、うちのがいちばん広くて、サッカー場2つ分くらいあった。遊び場はほかにもたくさんあった。地下室や屋根裏、建築中の建物や庭、近くの工場や倉庫の敷地、そして大人の目が届かないあらゆる種類の狭い場所や入り組んだ一角。

私たちはいろんな遊びをした。よくやったのは戦争ごっこだ。友達はいろいろなおもちゃの武器を持ってきた。木製のマシンガン、剣、弓、ピストルなど。私たちは、見たり聞いたりしたことがあるさまざまな戦争を再現した。そのころ私たちの周りには、あれこれの恐ろしい戦争を体験した退役軍人や生き証人が大勢いたからだ。私たちの戦いは、中庭、地下室、屋根裏、建築中の建物、庭を巡って行われた。ときに私たちは、いろんな種類の銃器や爆発物をこしらえることもあった。使った材料は、マッチ、アルミの削り屑、過マンガン酸塩、硝石、古い弾丸や砲弾の火薬などだ(私が住んでいた街はかつて激戦地だったので、そのような戦争の遺物はよく見つかった)。

私たちは、ルールのあるスポーツ(サッカー、ホッケー、テニスなど)をするよりも、中庭で遊んでいる時間のほうがずっと長かった。中庭での遊びは、自分たちで考え出すだけでなく、年上の子供たちから受け継ぐこともあった。ほとんどの遊びは、あちこち動き回ることからなっていた。動かずに一箇所に坐っているのは、ほんの短い時間でも退屈だった。中庭で遊んでいたこの頃から、私はずっと、子供は体を動かして遊ぶべきだと固く信じている。最近の子供たちはやることが多すぎて、遊ぶ時間が足りない。その傾向は時とともにますますひどくなっていく。

16になっても、私はまだ中庭で遊んでいた。ただし、大きくなると遊びの内容は変わっていった。自転車の代わりにバイクに乗るようになった。鬼ごっこの代わりに、水平の棒の上で闘うようになった。斜面を滑り下りる代わりに、学校の地下室でボクシングや重量挙げをやった。だが、遊びの核心は変わらなかった。遊ぶとは仲間たちを相手に全力を発散することで、私たちはよく、ただそれだけをやっていた。

子供がシステマを始める場合、必要なワークのやり方が大人とは根本的に違う。大人向けのシステマでは通常、個人的な安全と自信の確立が目標となる。幼い子供には、このようなことはまだ重要ではない。子供は結果を気にするよりもトレーニングの過程自体を楽しむことが多い。もちろん、ティーンエイジャーになると話は別で、目標設定が重要な役割を果たし始める。

子供たちのグループを年齢で分けるとすれば、大まかに次のようになるだろう。

7歳まで−親と一緒の少人数のグループで、動きの激しい遊びを使ってトレーニングを始める。あるいは一人ずつを相手にワークを行う。
7歳から13歳まで(中心的な子供クラス)−能動的で動きの激しい発達を促す遊び、専門的なエクセサイズ、そしてたくさんのレスリングを行う。ロシアでは伝統的に、この年齢の子供たちは、遊び、かけっこ、レスリングといったエクセサイズを主に行っていた。
14歳から16歳−システマの基礎を教え始める。専門的なエクセサイズ、レスリング、ストライクを使用する。この年齢の子供は一部の大人向けクラスに参加させてもよいが、それまでは別のグループにしたほうがよい。
16歳を過ぎたら、特別な配慮なしに大人のクラスに参加させてよい。
7歳から13歳までの子供の中心的なグループについて一言。この年齢では遊びが非常に重要だ。遊びを利用し、この年齢の子供たちに固有の特徴を考慮することで、子供の貴重な注意を引きつけながらクラスを生産的に運営できる。

この年齢を対象としたクラスの目標は、重要な身体的・心理的特徴の発見と発達、それに基本的なスキルの養成に置くべきだ。たとえば次のようなことだ。

調和の取れた身体の発達、適切な姿勢
自然な動き、身体のコントロール能力、全身の協調
正しい呼吸
不要な緊張のない動き、必要なときにリラックスする能力
感情と精神のコントロール
スムーズに安全に倒れる能力、痛みの克服
距離の感知と理解
パートナーとの生産的な対話
その他いろいろ…
このようなことは、すべて単純な遊びやエクセサイズを通じて教えられる。一人ずつでも、パートナーやグループといっしょでもよい。このワークの大部分は、競争よりも対話、理解よりも感知に重点を置いて行う。子供は抽象的概念の把握は苦手だが、物事を感じるのは得意だ。この特徴を利用する。

役に立つワークとしては、倒れること、床に寝て動くこと、這うこと(特にパートナーの下から這い出すこと)、押すこと、レスリング、そして一般的に多くの身体的接触を伴うワークが挙げられる。これは、パートナーに対する感受性を養い、適切な運動量を与え、一般的な身体認識を養うことに効果がある。このようなワークを恐れる必要はない。怪我をすることはあまりないからだ。子供は大人よりも柔らかく自然に転ぶことができる。目標は、曲芸的な技や決まった転び方を教えることではなく、自由で、容易で、安全なやり方で地面に倒れ、また起きあがること、倒れることに対する恐怖を体と心から取り除くことだ。決まった動きや構造を教えると、子供は固くなる。子供を自由にさせ、全力でエクセサイズをやらせれば、わずかなヒントと修正だけで正しくやれるようになる。

あまり重視しすぎないほうがいいのは…。

次号に続く。

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元記事は3月2日のトロント本部ニュースレターに掲載された「Kids in Systema」です。

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「恐怖なしに生きる」 by コンスタンチン・コマロフ

「恐怖なしに生きる」
by コンスタンチン・コマロフ

 現代生活は、恐怖で一杯だ。私たちは、いつも誰かに脅かされている。テレビをつければ、戦慄するようなニュースばかりが伝えられている。インターネットも悪夢のような出来事で一杯だ。近くの銀行や店に行けば、金融危機や増加する犯罪、インフレ、税金、社会不安、物価の急上昇、高い失業率など同じことを誰もが喋っているのが耳に入るだろう。最も楽観的な人でさえ、私たちを暗い気持ちにし、否定的な考えに陥らせる不安と心配の種に影響されずにはいられない。

 だが、いつの時代でも、こうだった訳ではない!わずか1世紀前には、辺境地帯で土地を手に入れ、水道や電気なしに、自分1人で新しい生活を始めるのは珍しいことではなかった。もちろん、携帯電話もパソコンも、警察や救助隊員の助けもなかった。彼らは怖くはなかったのか?その時から何が根本的に変わったのか?
 現代人は、恐怖に取り憑かれ身動きができなくなっている。もはや自分自身や自立心というものを信じていない。だから、恐怖を煽ることが、巨大な(そして儲かる)ビジネスになっているのだ。現代では、あらゆる種類の恐怖に対処するための手段を買うことができる。死や病気、財産を失うことが心配なら、保険を買えばいい!地位を失うことが怖い?高級車を買いなさい。虫歯になるのが恐ろしいのなら、歯磨き粉がある。例えを上げればきりがない。

 私たちは、恐怖で一杯の生活を受け入れるか、一息ついて周りを見回し、意識的に別の道を歩むかのどちらかを選ぶことができる。自信があり、何も恐れていないように見えるだけでなく、複数のプレッシャーに直面した際にも冷静で落ち着いた状態になり、それを維持する方法を習得することは可能だ。
 恐怖は、人間を不安定にし、緊張させ、傷つけやすくする。恐怖は人間を抑圧する。だから私たちは、恐怖を覚えない方法を身に付ける必要がある。システマの主目的は、さまざまな恐怖からの段階的な解放だ。システマは、恐怖なしに生き、何も気兼ねすることなくのびのびと呼吸し、「自立した人間」になるための方法、つまり恐怖から自由になるための基礎を与えてくれる。

 もし恐怖と対面しようと意識的に努力しなければ、もし恐怖を自分自身の奥底から引き出し、白日の下にさらし、それに対処しなければ、私たちは練習においても、人生においても自らの進歩を阻害してしまうだろう。

〈著者紹介〉
コンスタンチン・コマロフ氏は、2012年8月に行われたシステマ・フルレンジ・キャンプで教えるためロシアからカナダを訪れたマスター・インストラクターの1人。ロシア特殊警察軍少佐であり、戦闘心理学で博士号を持つ。また、モスクワではプロのボディーガードとして要人警護も行う。

本稿の元記事はコチラです。

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「知ること」への近道 byコンスタンチン・コマロフ

「知ること」への近道
コンスタンチン・コマロフ

 私にとってシステマとは、一言で言えば、自分に不利な状況に対処する方法を習得すること、つまり生き残る可能性を高めることを意味する。人は、その人生でどんな悪い事が起きるかを完全に予測することはできない。だから、そうした可能性に対して個別に準備することは不可能だ。そのかわり、すべてに対して一度に準備する必要があり、だからこそシステマでは個別のテクニックや対処法よりも、生徒の肉体と精神に起きる変化の方を重要視している。

 陸軍での勤務経験も、私に悪い出来事を克服する方法を教えてくれた。しかし、システマとは違い、それは自分自身に打ち勝つことによって学ばなければならなかった。士官学校で過ごした4年間に、私はランニングで恐らく地球を1周したのではないかと思う。士官学校の学生は毎日、いやというほど走らされた。朝も昼も夜も。凍てつく寒さの中もうだるように暑い時も。いつも軍靴に軍服で走った。しばしば銃を持ち、完全装備で。時にはスキーも履いた。障害物のあるコースや森、野原、舗装路も未舗装路も走った。私はランニングが心底嫌いだった。「自動車だけでなくマークIVF型装甲車や装甲兵員輸送車などあらゆる軍用装甲車が使える時代なのに、なぜ俺たちは、こんなに走ったり、行軍しなくてはならないんだ?」としばしば自問した。だが、当時の私には、その答えが分からなかった。

 これ以外にも、身体を鍛えることは、戦術や銃器の扱い、地形学、大量破壊兵器に対する防御、軍用車の運転など他の訓練の一部に組み込まれていた。例えば、銃を持ち、装備を背負い、時には防弾ベストを着て何キロも歩いたり走ったりすることや、車両に乗り込んだり、降りたりする時間を計ったり、弾薬を積み込んだり降ろしたり、銃器を据え付けたり外したりすることなど、たくさんの体育的な“お楽しみ”があった。私は最初の2年間、移動する時は必ず行進するか走っていた。夢の中でも「なぜこんなことやらなくちゃいけないんだ」と問い続けていたほどだ。

 しかし、士官学校を卒業し、最初の任務に就いた時、なぜあれほど苦しまなければならなかったのかが突然理解できた。司令官や教官は、私が堅忍不抜の精神と耐久力を身に付けるのを助けてくれたのだ。この2つの資質のあるなしで、悪い出来事に耐えることができるか、つまり生き残ることができるか否かが決まる。軍隊には「お前を殺さないものは、お前を強くしてくれる」という古くからのことわざがある。実際、自分自身に打ち勝つことで、信じられないほどの力を得ることができる。私は、私がこの内なる力を持っていることがわかった。そして私の部下も。さもなければ部下は、私の命令に従わなかっただろう

 軍隊は私に自分自身に打ち勝つことを教えてくれたが、システマは自分自身を理解することを教えてくれる。軍で私はさまざまな訓練を通じて自分を鍛え上げた。しかし、システマでは自分自身をもっと直接的に成長させることができる。もし良いシステマ・インストラクターの下で学ぶことができるのであれば、こちらの方がずっと効率的だ。もちろん訓練はある。だが、私はそれぞれの訓練がどのように、そしてなぜ私を変えるのかはっきりとわかっている。土台から自分を作り上げ、足りない部分を発見、修正し、必要な資質を強化することができるのだ。システマは、自己成長のための驚異的かつ精妙な手段であり、あらゆる動きや活動のためのしっかりとした土台を作るのに役に立つ。そして自分に打ち勝つことよりも、自分自身を知ることに重点が置かれている。私の言うことを信じて欲しい。システマの方が、ずっと速く、そしてもっと楽しく成長することができる。

 ちょっとした実験をしよう。あまり複雑ではないモダン・ダンスか民族舞踊のビデオを観て、その動きを1分間まねしてみよう。もしうまくできたら、システマをきちんと学べていることになる。つまり、システマの練習をすれば、どんな珍しい複雑な動きも簡単にまねることができる身体になれる。

 もし自分自身を克服し、その効用を手に入れてみたいと思うなら、腕や足を使わずに這う練習をしてみよう。この練習は、体力に応じて20分から90分間休みなしに行う。その後、システマのクラスで、パートナーとレスリングや単純なストライク、動きながらつかんだり、それから逃げたりする練習をする。自分自身を克服することができた人は、驚くほどすばらしい、しかも長期的に続く成果を得ているはずだ。なぜなら、私たちはほとんどの活動を手と足で行っており、胴体をうまく動かすことができないからだ。しかし、この練習方法は万人向けではない。今年(2012年)の夏のシステマ・キャンプでは、もっと簡単でおもしろく、楽しい訓練を紹介しよう。
 
著者紹介
コンスタンチン・コマロフ氏は、2012年8月に行われたシステマ・フルレンジ・キャンプで教えるためロシアからカナダを訪れたマスター・インストラクターの1人。ロシア特殊警察軍少佐であり、戦闘心理学で博士号を持つ。また、モスクワではプロのボディーガードとして要人警護も行う。

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「恐怖と勇気について」by コンスタンチン・コマロフ

「恐怖と勇気について」
by コンスタンチン・コマロフ

システマでは最近、恐怖と勇気が話題になった。それがきっかけで、私自身も自分の子供時代について考えるようになった。憶えているのは、いつも勇敢であろうと努力していたことだ。

暗闇に対する恐怖を克服するため、暗い地下倉庫にもぐり込んだり、勇気を振り絞って夜の森に入っていった。また、高所恐怖症を克服するため、屋根から飛び降りたり、崖から水に飛び込んだりもした。ケンカするのが怖かったにもかかわらず、自分より強い相手にケンカをふっかけたり、ボクシングの練習に行ったりした。例を挙げればきりがない。
小さな子供だったにもかかわらず、私はどういう訳か、もし恐怖に負けると、恐怖は自分の中で取り除くことができないほど巨大な怪物に成長してしまうことを本能的に知っていた。また、恐怖から隠れることができないことも知っていた。恐怖は自分自身の中に存在しており、毛布の下や想像上の基地に隠れても無駄だ。唯一の解決法は、恐怖と徹底的に向き合い、恐ろしい状況を直視し、自分自身に打ち克つことだ。これはいつも難しかったが、必ず効果があった。同じ状況でも2回目は、恐怖を克服するのがさほど難しくはなくなった。3回目は簡単にさえ思えるようになった。

今になってわかるのは、勇敢であろうと努力していた間、私が極めて重要で広範囲に影響が及ぶ人生の選択の多くを無意識に行っていた、ということだ。しかし、誰もが若い頃は、理由をあまり深く考えずに重要な決定をするものだ。
ところが戦争では、少し事情が異なる。私が言っているのは、訓練ではなく、困難で危険な状況に対処しなければならない実戦の場合だ。士官は戦場で、怖がっているところを見せてはならないとされている。なぜなら部下の兵士たちは「上官のやる通りにやれ」という大原則に従い、いつも士官を見ており、その真似をするからだ。そしてこの大原則は、戦闘にも日常生活にも適用される。私たちのほとんどは、いわゆる怖いもの知らずで、無鉄砲と言って良いほどだった。しかし、私たちが恐れを知らなかったのは、次の3つの理由からだった。

① 戦友に対する揺るぎない信頼
② 自分自身に対する自信
③ 我々の兵器への自信

普通のありふれた恐怖は、ほとんど気にならなかった。理由は何であれ、死について考えることは決してなかった。負傷や苦痛は覚悟していた。しかし、ある時、新たな、今まで経験したことのない恐怖が生まれた。それは今になるまで言葉にすることができなかった。私は当時、その恐怖を心の深い部分に押し込めていたが、それでも時に顔を出して、私の意思決定を妨げた。

その一番目が、戦友の期待を裏切ることへの恐怖だった。それは例えば、時間通りに任務を達成できないことや、戦場で本隊とはぐれたり、道に迷うことなどだった。2番目は、無力であることへの恐怖だった。武装していなかったり、捕虜になったり、状況を制御できなくなることは恐ろしかった。これらは私の個人的なものではなく、友人たちの間にも共通する恐怖だった。

かつて南オセティアで任務についていた時のことだ。基地で休んでいると、我々の車両部隊から雑音の多い無線連絡が入った。通信兵は「市街地で敵の攻撃を受け、釘付けになっている」と言うのが精一杯で、すぐに通信は途切れた。部隊を助けるため緊急即応部隊が10秒後に出発。他の隊員も全員、すぐに夕食を中止して、車に飛び乗り、出撃命令を今か今かと待っていた。その時だった。皆が恐怖の表情を浮かべているのを見たのは。それは戦闘への恐怖ではなかった。なぜなら誰もが戦いたくて仕方がなかったからだ。我々は、自分の身に何が起ころうと怖くはなかった。
恐れていたのは、戦友の身に何か起きるのではないかということだった。もし戦友たちを発見できなかったらどうしよう?もし到着するのが遅かったら?
その時は幸いすべてがうまくいった。我々は車両部隊を発見し、すぐにそこに到着することができた。
私は、その時に友人たちの顔に浮かんだ表情を忘れることはないだろう。この種の恐怖を克服する一番良い方法は、戦友愛と「自分は死んでも戦友を助けろ」というスヴォーロフ(無敗を誇るロシアの名将)の言葉だろう。実際、この方法は役に立った!

恐怖と言えば、はっきり覚えているもう一つのことは、私がどこへ行く時でもポケットに手榴弾を入れて持ち歩いていたことだ。手榴弾を持ち歩いていたのは私だけではなく、ほとんど全員が同じことをしていた。あなたは手榴弾を持ち歩くのは不便だし、危険だと思うかもしれない。確かにそうかもしれないが、手榴弾を持っていると何となく落ち着いたのだ。誰も何でそんなことをするのか質問しなかった。誰もそれについて話さなかったし、他人に説明もしなかった。なぜなら共通の理由があり、無言の理解があったからだ。

それから約10年間、私は合流地点に時間通りに到着できなかったり、弾薬切れになったり、自分の銃が弾詰まりを起こしたりする悪夢に悩まされた。汗をかき、息を切らし、心臓が狂ったように拍動して夜中に目が覚めたものだ。
今でも時々、そうした気分になることはある。だがシステマのお陰で、今では、そうした感情が芽生えるのを素早く認識し、私の行動に影響を及ぼさないようにすることができる。

ありがたいことに私は軍にいる間、戦友の期待を裏切ることはただの一度もなかった。しかし、無力感がもたらす大きな恐怖は2度経験した。最初は、敵が支配する戦争で荒れ果てた街で、ほとんど武器を持たず、1人だけになるという経験だった。この経験については数年前、「最後の議論」という題ですでにコラムを書いた。2回目は、自分の乗った満員のヘリコプターが墜落しかけた経験だ。それでは、このヘリでの出来事について話すことにしよう。

それは1992年の早春、アルメニアの山岳地帯で起きた。
ナゴルノ・カラバフ地方を巡ってアルメニアとアゼルバイジャンの間に武力衝突が勃発。両国は、ほぼ互角の戦闘を繰り広げた。我々の部隊46名は、500人以上のアルメニア人ゲリラが包囲する基地にヘリコプターで派遣された。我々が到着する前日、ゲリラたちは基地を攻撃し、司令官と士官10人を人質にした。そして彼らの命と引き換えに、グラートやウラガン多連装ロケット砲システムに使う砲や弾薬など基地にある重火器を放棄するよう要求していた。
我々の部隊は仕事を片付けた。どのように片付けたかは、別の機会に話すことにしよう。仕事には、ゲリラの再攻撃を退け、周辺地域での任務を完了することも含まれていた。数日で人質全員を無条件で取り戻した。しかし、基地がゲリラに再び攻撃される脅威は依然として非常に高かった。

交代する次の部隊が到着したので、我々はMI8型ヘリ4機に分乗し、本土に帰還しようとしていた。その時、我々は基地の士官の妻子も一緒に連れて行くことを決めた。それぞれのヘリが載せた人員と荷物の重さは、決められた積載量の2倍以上だった。人々はヘリの床や荷物の上にびっしりと座っていた。この任務をさらに複雑にしたのは、高地にある基地から夜間、風と雪の悪天候の中、離陸しなければならないことだった。
だが、我々のヘリには最高のパイロットたちが乗っていた。乗組員は全員、アフガン戦争の経験者だった。彼らは、今回を逃すと救助できるチャンスがなくなることを良く知っていて、全員を乗せようと努力した。リスクはあった。しかし、そのリスクはパイロットの技量と装備の性能に基づいてきちんと計算されたものだった。
私の乗ったヘリは最初に離陸する組の2番目だった。離陸するために使える場所はとても狭かったので、ヘリは飛行機のように滑走してスピードを上げることができなかった(これは、高い山岳地帯からヘリを離陸させる時に良く使われる方法だ)。私はヘリの左側の窓から銃口を突き出し、最初のヘリが離陸に3回失敗した後、左右に大きく揺れながらようやく飛び立つのを見ていた。そのヘリは左に曲がり、電柱や木にぶつかりそうになりながらも、バランスを取り戻し、上昇し始めた。

するとすぐに、我々のヘリが激しく揺れ始めた。エンジンがうなりを上げ、離陸を開始する。だが、次に私はヘリが落下し、地面にぶつかって大きく跳ね返るのを感じた。パイロットは再び離陸を試み、またドスンと落ちた。我々のヘリはボールのようにバウンドしていた。それからようやく離陸し、上昇して、右に急旋回した。窓から見えたのは空だけだった。誰かが座席から転げ落ちた。女性が甲高い悲鳴を上げる。叫び声。何かがぶつかる音。金属がこすれる音。また、何かにぶつかる。そしてエンジンが耳をつんざく唸りを上げ、ヘリの機体が小刻みに振動した。それが、どのくらい続いたのかはわからない。永遠のように感じられたが、実際は恐らくほんの3、4秒だったろう。だが、生死の狭間では時間の感覚はなくなってしまう。それはまるで、私の体の中のすべてが縮んで凍りついてしまったような感じだった。手足に力が入らず、呼吸は止まっていた。私は突然、すべてがいかに無力で、もろく、役に立たないかということを痛いほど感じていた。

我々は何とか離陸することができた。助かった。我々の優秀なパイロットは離陸に成功したのだ。私は彼らにいくら感謝しても感謝しきれない。だが、残念なことに、きちんとお礼を言うことができなかった。私たちを急造の滑走路に降ろすと、パイロットたちはすぐに基地へ帰還した。それが、生きた彼らを見た最後だった。彼らは2か月後、山岳地帯で墜落し、我々は海抜11,000フィート(約3、353メートル)の雪の斜面で彼らの遺体を回収しなければならなかった。

後日、我々の後に離陸したヘリに乗っていた人々から、我々のヘリが離陸の際、2階建ての本部棟に向かって風に流され、車輪とその支柱が本部棟の雨樋と屋根の一部に引っかかり、それを引きちぎったこと、そしてプロペラの羽がアンテナを切断したことなどを聞いた。パイロットが離陸に成功したのは、本当に奇跡だったのだ。

とにかく、ヘリが安定して上昇を始めるや否や、恐怖は消え、私はうつらうつらし始めた。我々は夜間飛行を続けた。しかし突然、鋭い横からの振動で目が覚めたことを憶えている。窓からは見えたのは、鎖のように繋がって我々の方に流れてくるいくつもの光点だった。寝ぼけていたので私は呑気に、それらを花火かはるか地上を走る列車の灯りだろうと考えた。しかし、ヘリから降りる時、機体に銃弾による穴がいくつも開いているのに気がついた。
その夜から何年も過ぎたが、私は今でも、あの恐怖をはっきりと憶えている。また、私は自分でコントロールできないような状況を避ける努力をすることを自分に約束したことも憶えている。だが、私も今では、この約束が時には守れないことをわかっている。

システマで身につけた強さと自信があれば、(過去と未来の)自分の人生について熟考し、自分自身についていろいろな事を発見できるようになる。私は、これが唯一の健全な方法だと信じている。さあ、冷静なトレーニングを通して、自分の中の記憶や印象、思考を解明し、自分の恐怖を徐々に理解し、その原因を探り、恐怖なく生きる方法を身につけよう。これが恐怖を認識し、勇気を奮い起こすということだ。

著者紹介
コンスタンチン・コマロフ氏は、2012年8月に行われたシステマ・フルレンジ・キャンプで教えるためロシアからカナダを訪れたマスター・インストラクターの1人。ロシア特殊警察軍少佐であり、戦闘心理学で博士号を持つ。また、モスクワではプロのボディーガードとして要人警護も行う。

元記事は「On Fear and Courage」です。

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「完璧な射撃のための呼吸のコツ」 by コンスタンチン・コマロフ

「完璧な射撃のための呼吸のコツ」

by コンスタンチン・コマロフ

 システマ式射撃術のカギは呼吸にある。
 現実的状況においての射撃、つまりシステマ式射撃術は、ほとんどの場合、動きながら行われる。そのため、他の多くの射撃術で推奨されているように、呼吸を止めることができない。活発に動き回っている時、肉体は多くの酸素を必要としており、息を止めると射手のサイキ(精神、気)と筋肉を過剰に興奮させることになる。したがって、動いている時、呼吸は自由かつ連続して行われるべきである。
 ここで、運動量が非常に多い時でも、肩の高さに影響を及ぼさないような正しい呼吸法が必要となってくる。つまり吸気と呼気が、胸と肩ではなく、主に横隔膜と下腹部を使って行われるべきであるということだ。それでは、簡単なドリルで、あなたの呼吸の仕方が、動きながらの射撃に適しているかどうかチェックしてみよう。

 小石を10個拾い、4、5メートル離れた所から木の幹に向かって投げてみよう。全部投げ切るのに15秒以上使わないこと。10投1セットで3セット投げて、命中した数を投げた数で割って命中率を出そう。次に、息を止めてスクワットを25回。その後、リカバリーのための呼吸をしながら15秒以内に小石を10個投げる。結果を憶えておくこと。
 次に息を止めてプッシュアップを25回行い、その後、同じように小石を投げる。最後に、息を止めてレッグレイズを25回やり、同様に小石を投げる。命中率の平均を出し、それを普通の呼吸で投げた時の結果と比較してみよう。このドリルでは、体力に応じて、システマ・コア・エクササイズ(プッシュアップ、スクワット、レッグレイズのこと)の回数は増減しても構わない。

 さて、もし息を止めた後の命中率が、普通の呼吸の時よりも30パーセント(つまり1セットで3投)かそれ以上、落ちていた場合、動きながらの射撃には逆効果の呼吸法を身に付けている可能性が高い。つまり、激しく呼吸している時に、肩や首など本来は呼吸に必要のない多くの筋肉を使っているということだ。これはまた身体とサイキに過度の緊張をもたらす。

 それでは、どうしたら正しい呼吸法を身に付けられるのか?簡単なことだ!システマ呼吸法のエクササイズを徐々にそして定期的に行えば良い。そして経験者にあなたの呼吸を時々見てもらい、感想を聞いてみよう。
 もし射撃に自信があり、射撃場に行けるのであれば、拳銃を使って、この練習をやると良い。8メートルの距離に上半身の形をした標的を置き、1セット5発として必要なだけ弾薬を用意する。標的に向かい、拳銃を片手で保持して胸の高さから射撃する。射撃している間、その場で足踏みをし続けること。コア・エクササイズを挟んだやり方と命中率の計算方法は、小石を使ったドリルの場合と同じだ。ただし拳銃の場合、20パーセントの命中率下落は、かなり悪いと思うこと。

 この練習を試してみよう。自分を観察し、修正すること。どんな風に役に立ったか教えて欲しい。幸運を祈る!


著者紹介
コンスタンチン・コマロフ氏は、2012年8月に行われたシステマ・フルレンジ・キャンプで教えるためロシアからカナダを訪れたマスター・インストラクターの1人。ロシア特殊警察軍少佐であり、ロシア軍偵察部隊にも所属。戦闘心理学で博士号を持つ。また、モスクワではプロのボディーガードとして要人警護も行う。

元記事はトロント本部サイトの「Breathing Tips for Perfect Shooting」です。

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「特殊な状況」by コンスタンチン・コマロフ

「特殊な状況」
by コンスタンチン・コマロフ

 現代武術では、練習場や道場の外で起こることは全て特殊な状況と見なされる。しかし、私たちの取り上げる特殊な状況とは、私たちの通常の動きや知覚を制限する要因のことである。では、その中の2つの要因である暗闇と水について考えてみよう。
 暗闇は、周囲の状況に対する私たちの認識に非常に大きな影響を及ぼす。一方、水は私たちの動く能力を変化させる。私たちはこれらを練習で最大限に利用して、型にはまった画一的な考え方を取り除くのに役立てるべきである。それでは特殊な状況で役に立つ便利で簡単なエクササイズを2つ紹介しよう。

暗闇での練習に備える
 まだ明るいうちに、次の一連の動作を試してみよう。
 まず、公園か森の空き地に立つ。その場所に、石、棒あるいは帽子など物を置いて目印にする。次に自分から10~15歩離れたところにある木を選ぶ。それから目を閉じて、歩き出し、その木を見つけ、出発した場所に戻ってみよう。
 もしこれができたなら、最初の木から10~15歩離れたところにある別の木をもう1本選び、目を閉じて、出発点から最初の木に向かって歩く。次にそこから2番目の木に向かって歩き、最後に、目を開けずに出発した時と同じ場所に戻ってみよう。もし2、3回やってみて、このエクササイズが楽にできるようであれば、あなたの方向感覚は非常に優れている。つまり、暗闇は必ずあなたの味方になってくれるだろうということだ。

水とストライク
 このエクササイズはパートナーと組んで行う。まず、小石を10~15個くらい集め、首くらいまで水に入る。それから自分から50~80センチくらい離れた水面に向けて、パートナーに小石を1つずつ投げ込んでもらう。それを一動作で掴むのだ。手と腕は水から出してはいけない。このエクササイズをやれば、最短軌道、リラックスした肉体、筋肉の協調、そして素早い反応の意味をすぐに理解するようになるだろう。すべては、しっかりとしたストライクを打つ技術を養うために必要なものばかりだ。
 10回中7回まで小石を拾えるようになったら、誰もあなたのストライクを止めることはできないだろう。
 みなさんがトレーニングを上手に行い、大きな成果を得ることを願っている。それではまた、お会いしましょう。



著者紹介
コンスタンチン・コマロフ氏は、2012年8月に行われたシステマ・フルレンジ・キャンプで教えるためロシアからカナダを訪れたマスター・インストラクターの1人。ロシア特殊警察軍少佐であり、戦闘心理学で博士号を持つ。また、モスクワではプロのボディーガードとして要人警護も行う。


元記事はトロント本部サイトの「Special Conditions」です。

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「ショートワークとは何か?」by ヴラディミア&ミカエル

「ショートワークとは何か?」
by ミカエル・リャブコ&ヴラディミア・ヴァシリエフ

 対立において実戦的かつ現実的。ショートワークはシステマの技術の中でも特徴的かつチャレンジする価値のあるものです。近距離のワークと混同してはいけません、実際に距離とはほとんど関係がありません。このことを明らかにするために、私たちは最近、システマの創始者たちにショートワークについて尋ねました。彼らが語ったのは次のようなことです。

ミカエル・リャブコ
ショートワークには最小の動きと最高の精度、パワーの両方が含まれています。ショートワークは、波打ったり、長かったり、かさばったり、そわそわしたり、冗長だったりする運動の対極にあるものです。代わりに簡潔で静かな動きで、ピンポイントな精度と強大な威力を持ち、ターゲットとの接触は瞬間的なものです。
ショートワークはたいてい端からは微妙なものに見えますが、アタッカーにとっては全く予期できない攻撃となります。ショートワークにおける身体的な労力は最小限であるべきです。その技術レベルに達するためには多くの努力が必要です。

システマを学ぶ人は、自身の身体と精神の緊張、正しい姿勢、動的な呼吸のパターン、力に満ちた拳の開発、自由な動き、戦術的な多様性、またはシステマが提供する他の鍵を学ぶことによって、このスキルを得ることができます。


ヴラディミア・ヴァシリエフ
 より詳しく言うなら、ショートワークとは相手の緊張とあなたのリラックスの結果です。対立において、攻撃してくる相手が緊張していれば、どこに緊張があるかを見つける必要があり、そうでなければ相手の必要な場所に緊張を作り出せばよいのです。このとき、自分のストライクや動きは相手の緊張に当たって跳ね返ります。これによって、1つの動きで複数のストライクを繰り出すことができるのです。たとえば、パンチを打ったときに腕が接触した場所で止まらなければ、自分に向かって戻らずそのまま動き続けて、さらに他のさまざまな方向にストライクを打つことができます。ショートワークを学ぶことによる大きな恩恵は、複数の敵に対する防御をあなたにもたらすことです。それは多機能的な動き-防御、攻撃、敵の方向転換や静止-を可能とするのです。

敵がより緊張していれば、あなたのショートワークは速度を増すでしょう。しかしそれはパンチが早く軽くなるという意味ではありません。ショートワークにおけるパンチは重く、強力なのです。適切なショートワークは、あらゆる角度において正確です。例えば体の他の部分の位置や緊張と無関係に、腕の一部だけを緊張させたり動かしたりすることができます。

ショートワークに対し、敵が防御するのは非常に困難です。それは緊張した身体に破壊的な影響をもたらします。ショートワークに対処する唯一の方法は、緊張をなくすことなのです。学ぶ上でとても興味深く、そしてあらゆる対立においてとても効果的であり、またショートワークは上達を示す確かなサインとなりえます。



それらについては、来るヴラディミア・ヴァシリエフのセミナーにおいて明確に説明され、デモンストレーションされ、素手や武器など様々なシチュエーションにおいて、学ぶことができます。ショートワークはあなたの身を守るのに欠かせない武器となることでしょう。



オリジナルの「What is Short Work」はこちらです。

ミカエルのステルスストライク


ヴラディミアの「弾むストライク」

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「マスターズ・プッシュアップ」
by ヴァレンティン・タラノフ


2012年のシステマキャンプにて、ヴァレンティン・タラノフは次のストーリーからその一週間をスタートさせた。


「この出来事によって、私のシステマやトレーニングに対してのアプローチが全面的に変わりました。それは1980年代の、ミカエル・リャブコの家でのことです。

ロシアではよくある事として、私たちのインストラクターのアパートを訪ねました。その日、私たち3人のシステマの生徒は、ミカエルと話をしに行ったのです。あらゆる他の武道の経験があっても、この新たなトレーニングに慣れることができず、システマを学ぶ事に疑いを感じてました。私たちはどうしても理解できないので、もうこれ以上システマを学ばないという事を、ミカエルに率直に伝えたのです。

ミカエルは静かにかつ前向きにその報告を受け止め、こう言いました。

「疑いは、理解を妨げます」

そして彼は私たちにいくつかのシンプルなエクササイズをするようにと言いました。

ます、プッシュアップの姿勢から両手でジャンプし、胸の前で手を叩いて、再び両手で着地しなさい。

私たちはそれを簡単にこなしました。

次に同じ姿勢から同じように手でジャンプし、頭上と胸の前で手を叩いて、再び両手で着地するよう、ミカエルは告げました。

何度か試行錯誤したのち、私たちはそれができました。

最後に同じくプッシュアップの姿勢から身体をはね上げ、胸の前、頭上、そして背後で手を叩いた上で、手のひらで着地するようにとミカエルは言います。

ミカエルはそれが出来るまで私たちを帰さないと言います。私たちはそんなエクササイズが出来るわけないと冗談を言い、笑ってました。しかしミカエルは告げます。それが達成可能であり、疑っている限り達成できることはないのだと。私たちはおよそ40分ほどその状況をふざけ続けました。ですが、いよいよ挑戦を始めようという心の準備ができたのです…。

私たちは、そのタスクを達成できると確信し、可能性を信じ、最後には3人全員が成功したのです。私はとても高く自分を押し上げ、手が床にあたるほんの一瞬前に、3度目の拍手を終えたのを思い出します。

これは、偉大な体験でした。信じることが成功を導き、成功によって理解が始まり、理解が自信を与えるのです。さらに私は自分がシステマを愛している事を自覚し、定期的に懸命な練習を積むようになりました。今や25年前の話ですが、私はミカエルのユニークな教授方法とシステマのギフトにに感謝しています。これが本当に私のトレーニングを変え、私の人生を豊かにしてくれました。

このような素晴らしいキャンプを運営し、私がギフトを多くの人にシェアする機会を与えてくれたヴラディミアとヴァレリー・ヴァシリエフ、そしてシステマトロント本部に感謝します。」


著者について:ヴァレンティン・タラノフ
1982年よりミカエル・リャブコに学ぶ。トップクラスのスペシャリストにしてシステマインストラクター、トレーナー。路上やトーナメントでの戦歴あり。世界クラスのアスリートの健康や体調管理のトレーナーにして、ボクシングのKSマスター。ヴァレンティンの素晴らしいパワーと技術はDVD「Breathwork and Combat」に収められている。


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「システママスターズの言葉」 by アレクサンダー・ショストコ

「システママスターズの言葉」 
by アレクサンダー・ショストコ

以下の言葉は、過去2年間のシステマキャンプやセミナーでの私のノートからの抜粋です。翻訳の過程でおそらくいくらかのことが失われていますが、システマの愛好家に活用されることを望みます。


ミカエル・リャブコ
・もし誰かがあなたもしくはあなたの家族を攻撃し、あなたが自分が戦わなくてはいけないことを知っている時、神経質にならず、感情的にもならず、ただすべきことをやりましょう。
・人を壊さないように。あなたへの攻撃心を折るのです。
・相手にはまだ自分がコントロールできているような錯覚を与えなさい、しかし実際にはそうさせないのです。
・自分がとても強いと思っている人が、戦いでは最初に死にます。
・あなたと練習する人はみな、あなたの教師です。そしてあなたを打とうとする人は、最高の教師です。 


ヴラディミア・ヴァシリエフ
・戦いを察知した時、まずリラックスし始めてください。戦おうとせず、ただ為すべきことを為すのです。
・あなたがどのようにコントロールしているのか、誰にも悟らせないようなやり方で、状況をコントロールしてください。
・攻撃のラインを避けるだけでなく、相手の注意のライン上から自分自身を消すのです。
・もしあなたが動きながら反撃したならば、そのストライクはどこからともなく現れたかのように見えるだろう。
・誰かを打った時…人間であり続けなさい
 ・人は致命的でない傷で死ぬこともあれば、致命傷を受けても死なないこともある。全てはあなたの心がギブアップするかどうかにかかっている。


コンスタンチン・コマロフ
・耐久力とは、精神的な事柄です。
・あなたの感情的な土台が状況をコントロールするのです。
・自分のことを知れば知るほど、自分の中により多くの緊張が見つかるでしょう。
・ストレスを解消する方法はいくつもありますが、もっとも重要なことは、呼吸と動きです。
・強く捕まれたときほど、よりリラックスしなければなりません。
・人が傷や衝撃のために死ぬことはありません。衝撃による精神的な影響を処理できないために死ぬのです。


著者について

アレクサンダー・ショストコ
ヴラディミア・ヴァシリエフによる認定インストラクター。アメリカの「RMA Northern Virginia,」にてシステマを指導。彼はロシアでのスポーツの達人で、20年以上に及ぶ武道歴を持つ。連絡先は「systemanova@yahoo.com」

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システマ ライジス イン ジャパン始動
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プロフィール

TKHDKTGW

Author:TKHDKTGW
北川貴英:08年、モスクワにて創始者ミカエル・リャブコより日本人2人目の公式システマインストラクターとして認可。16年コンディショニングに特化した「INSTRUCTOR OF APPLIED SYSTEMA」の認可も取得。システマ東京クラスや各地のカルチャーセンターなど年間400コマ以上を担当。システマ関連書籍を多数執筆。幅広い層にシステマを役立ててもらうべく、教育機関、養護施設、医療系研修、学術学会、雑誌、テレビ、ラジオなどでセミナーや講演会を実施している。毎年欠かさず複数回、海外研修に赴きスキルのブラッシュアップを継続している。システマ東京のスケジュールはコチラをご参照下さい。
著書、監修一覧
「システマ入門(BABジャパン)」
「最強の呼吸法(マガジンハウス)」
「最強のリラックス(マガジンハウス)」
「逆境に強い心のつくり方ーシステマ超入門ー(PHP文庫)」
「人はなぜ突然怒りだすのか?(イースト新書)」
「システマ・ストライク(日貿出版社)」
「Dr.クロワッサン 呼吸を変えるとカラダの不調が治る(マガジンハウス)」
「システマ・ボディワーク(BABジャパン)」
「ストレスに負けない最高の呼吸術(MOE)」
「システマ・フットワーク(日貿出版社)」
「人生は楽しいかい?(夜間飛行)」
DVD
「システマ入門Vol.1,2(BABジャパン)」
「システマブリージング超入門(BABジャパン)」

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